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2022年8月19日 (金)

Cuculus canorus

「カッコウ」の学名だ。学名そのものがオスの鳴き声に由来しているということだ。古来音楽作品上で描写の対象になってきた。学名の後段「canorus」は「響く」「音楽的」の意味だというのもうなずける。もしかして「カノン」と語源は同じかとも。

田園交響曲第二楽章が名高いほかバロックにも下記の実例がすぐに目に付く

  1. ヴィヴァルディ 夏の第一楽章
  2. ヴィヴァルディ   ヴァイオリン協奏曲イ長調RV335
  3. シュメルツァー 
  4. ビーバー Sonata representativa No3

日本ではさびれた様子の描写「閑古鳥」として定着しているから、どうにも音楽的とはみなされていない。

 

 

2022年8月18日 (木)

連休のCD

いやはや驚いた。連休中にはまったCDの話だ。「フィガロの結婚」の全曲版。エーリヒ・クライバー指揮のウィーン国立歌劇場。1950年代の録音でかろうじてステレオ。かの名高いカルロス・クライバーのご尊父の指揮ということで何気なく手に取ったが大当たり。フィッシャーディースカウとプライが丁丁発止でやりとりするベーム盤が長らく脳内定番だったが、それに匹敵。私の脳味噌にディースカウ補正がかかっていなければこちらに軍配かもしれぬ。慣れないと伯爵とフィガロが聞き分けられない点だけが課題だが、そりゃこちらの耳のせいだ。

ご子息カルロス・クライバーがこの作品の録音を残していないのは父を恐れてのことかもしれない。

おまけにだ。このほど部屋の整理をしていて「フィガロの結婚」のフルスコアが出てきた。黄ばみが激しいがこれで十分だ。

2022年8月17日 (水)

ソロの互換性

コンチェルトの独奏楽器は、作品のタイトルの中に痕跡を落とす。「ヴァイオリンのための協奏曲」という具合だ。縮めて「ヴァイオリン協奏曲」となる。「楽器名+協奏曲」で、その作品における独奏楽器を手短かに明示する便利な機能だ。

ところが、ヴィヴァルディには奇妙な実例が散見される。op7は「ヴァイオリンまたはオーボエのための協奏曲」である。op8の9番も12番も独奏楽器はヴァイオリンでもオーボエでもいいことになっている。まだある。op9-3「ラチェトラ」の3番はヴァイオリン協奏曲なのだがop11-6では同じ曲がオーボエ協奏曲となって出現する。

ヴァイオリン協奏曲に極端な高音域を求めていないことと、重音奏法が現れないこともあって、いつでもオーボエで代替可能なコンチェルトが少なくない。ダブルストップ、フラジオ、ピチカート、高速アルペジオ、スピッカートてんこ盛りとなるともはやオーボエでは無理なのだが、ヴァイオリン協奏曲とオーボエ協奏曲の間、相互乗り入れが実現している。

古典派以降のコンチェルトではあり得ぬ現象だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年8月16日 (火)

ある試み

ヴィヴァルディの全作品はRV番号の最大値から820であると推定できる。散逸、異稿、偽作いろいろな課題はあろうがひとまず820と納得することにして先に進む。このうち165作品が声楽作品なので、器楽作品は655曲という理解になる。

さて、我が家のCDコレクションでこのうちのいくつがカバーされているのか確かめた。結果は「290」だ。ヴィヴァルディの「四季」は複数枚所有しているものの「4」でしかない。カバー率は器楽作品655に対して44.3%で、全作品に対しては35.4%となる。

ヴィヴァルディで35.4%は実感よりは高い。かぞえてはいないがテレマンでは10%を切るだろう。そもそも分母が怪しい。

ブラームスでは、この値は100%になる。当然ながら感心した。

 

 

2022年8月15日 (月)

マリア被昇天の日

聖母マリア様が天に召されたとされる日。8月15日だから日本ではお盆の民族大移動と重なる。

聖母信仰の代表的な祝日だから、プロテスタントのバッハには縁遠い。カトリックの司祭だったヴィヴァルディには痕跡がある。

ヴァイオリン協奏曲ハ長調」RV581は、そのものズバリ「聖母マリア被昇天の祝日のために」と題されている。「四季」と大きく違うのはイメージだ。「四季」は曲を聴いて実際の季節のイメージとのシンクロを楽しめるが、「聖母マリアの被昇天」について具体的なイメージがないからシンクロが起きにくい。

教会での演奏に配慮して、2つの弦楽合奏による編成になっている。

 

 

2022年8月14日 (日)

カニーニ

ブルーノ・カニーニはイタリアのピアニスト。1935年12月30日ナポリのお生まれ。昨日の記事「アッカルドマジック」でヴィヴァルディのヴァイオリンソナタのCDを入手したとはしゃいだが、そのCDでチェンバロを担当しているのが、カニーニさんだ。アッカルドさんのヴァイオリンもろともすっかり気に入ってしまっている。

この人とアッカルドさんのコンビは、なんとブラームスに飛び火する。ヴァイオリンソナタ全3曲のCDがある。こちらは当然チェンバロではなくてピアノを聞かせてもらえる。どちらも達者ということだ。

さてさて話はさらにバッハに。ヴィクトリア・ムローヴァさんとのコンビでバッハのヴァイオリンソナタを録音している。残念ながら全6曲ではなくて1番ロ短調、2番イ長調、6番ト長調の3曲だけがチョイスされている。ムローヴァさんには、別のチェンバリストと組んだ全曲アルバムも出ているがカニーニ版は本当に素晴らしい。チェンバロも達者なカニーニさんがなぜあえてピアノを選んだのかわかる気がする演奏だ。

 

 

 

 

2022年8月13日 (土)

アッカルドマジック

某中古CDショップで強烈な堀出し物に出会った。

ヴィヴァルディの「2つのヴァイオリンのためのソナタop1」と「ヴァイオリンソナタop2」のCDだ。ヴァイオリンを弾いているのはアッカルドだ。op1で第二ヴァイオリンを弾いているのはフランコ・グッリという名手。

 

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たまらん。新入荷の棚にあるのを手に取った。両方で4000円少々。即買い。帰宅後着替えももどかしく再生。唖然とする美しさ。凛とした音。ディスイズイタリア。

こうなるとだ。op5の6つのヴァイオリンソナタもほしくなる。

 

 

 

 

2022年8月12日 (金)

プレ調和の霊感

どのようなヴィヴァルディ関連本を読んでも、「調和の霊感」は、ヴィヴァルディの出世作と位置付けられている。1711年アムステルダムルセール社から刊行された。ヴィヴァルディ33歳だ。これによりヴィヴァルディの名が欧州中にとどろいたとされている。ブラームスで申せば「ハンガリー舞曲」だ。最初の出版作品が必ずしもブレークのキッカケにならないということだ。ドヴォルザークの「スラブ舞曲」は例外と見ていい。

出世作「調和の霊感」は、op3を背負っている。ということはつまりop1とop2が出世作に先行するということだ。

op1は「2つのヴァイオリンのためのソナタ」でop2が「ヴァイオリンソナタ」でどちらも12曲で構成される。

ちなみに名高い「四季」はop8に含まれる。ことほどさようにop3以降は、ブレークの恩恵を受けて、そこそこCDも見つかるのだがop1とop2は、相対的にCDが少ない。イムジチのボックスにも収録がない。

 

 

 

 

2022年8月11日 (木)

イ短調op3-6

我が家の次女も長女も弾いた。ヴィヴァルディの「調和の霊感」op3の6番目。イ短調ヴァイオリン協奏曲だ。この第一楽章が古来ヴァイオリン習得の通過儀礼になっている。娘らに教える中で、私も弾いた。娘らは二人とも小学生だったが軽々暗譜した。

改めて聞くとよい曲だ。

我が家には下記の通りCDがある。

  1. 1962 I musici/Roberto MIcherucci(3:22)
  2. 1987 I solisti Veneti/Piero Toso(2:58)
  3. 1983 I musici/Pina Carmirelli(3:15)
  4. 1988 I solisti Italiano/Giovanni Guglielmo(3:13)
  5. 1997 Europa Galante/Fabio Biondi(2:26)
  6. 2004 Berliner Philharmoniker/Nigel Kennedy(2:36)
  7. 2014 L'arte dell'arco/Federico Guglielmo(2:40)

楽しい。古来ずっと1番目を聴いてきた。娘らにもずっと聴かせていた。5番目のビオンディは、爽快だ。イムジチ版より1分短い。

 

 

2022年8月10日 (水)

3曲1組

ヴィヴァルディの「調和の霊感」op3の話をする。全12曲を行きがかり上3曲ずつ4セットととらえる。

<1セット>

  • 1番 ニ長調 4つのヴァイオリンとチェロ
  • 2番 ト短調 2つのヴァイオリンとチェロ
  • 3番 ト長調 1つのヴァイオリン

<2セット>

  • 4番 ホ短調 4つのヴァイオリン
  • 5番 イ長調 2つのヴァイオリン
  • 6番 イ短調 1つのヴァイオリン

<3セット>

  • 7番 ヘ長調 4つのヴァイオリンとチェロ
  • 8番 イ短調 2つのヴァイオリン
  • 9番 ニ長調 1つのヴァイオリン

<4セット>

  • 10番 ロ短調 4つのヴァイオリン
  • 11番 二短調 2つのヴァイオリンとチェロ
  • 12番 ホ長調 1つのヴァイオリン

気が付くこと。

  1. 各セットの先頭は、必ず4本のヴァイオリン。全部違う調。
  2. 同じく2番目は2本のヴァイオリン。全部違う調。
  3. 3番目はヴァイオリン一本。全部違う調。
  4. 同一セット内で同じ調性はない。
  5. 同一セット内には長短が必ず含まれる。
  6. 合計すると長短6曲ずつ。
  7. 4セットすべて独奏楽器の組み合わせが違う。

とても偶然とは思えない。

 

 

 

 

2022年8月 9日 (火)

レストロアルモニコ

「L'estro armonico」とつづられるイタリア語で、しばしば「調和の霊感」と訳される。「op3」を背負うヴィヴァルディの出世作。1711年アムステルダムのロジェ社からの出版で様々な独奏楽器による12の協奏曲だ。バッハはこのうちの下記を編曲している。

  • 3番ト長調→チェンバロ独奏BWV978
  • 8番イ短調→オルガン独奏BWV593
  • 9番ニ長調→チェンバロ独奏BWV972
  • 10番ロ短調→4台のチェンバロのための協奏曲BWV1065
  • 11番ニ短調→オルガン独奏BWV596
  • 12番ホ長調→チェンバロ独奏BWV976

かなりな入れ込みようだ。それもそのはずで、この曲集でヴィヴァディの名声は欧州中に広まっていた。当時最先端のイタリア音楽のそのまた最高峰という位置づけは大げさではなかった。現代日本における「四季」の人気もかすむというものだ。

CDで比較するにも楽譜があると便利なのでひとまず入手した。毎度毎度のドーヴァーで4020円はまずます。楽譜を見ながら聴くと、プレイヤーごとのアドリブもわかって参考になる。

2022年8月 8日 (月)

コレルリヴァリエーション

ラフマニノフが1931年に作曲した「コレルリの主題による変奏曲」op42だ。主題はコレルリの「ヴァイオリンソナタ」op5-12というより「ラフォリア」ニ短調だ。古来有名な旋律で、コレルリの作ではないが、最も有名な「ラフォリア」に敬意を表したということなのだろう。

ピアノの名人芸を堪能する作品になっている。

 

 

 

 

2022年8月 7日 (日)

ラフォリアの流行

イベリア半島起源の舞曲「フォリア」が17世紀のイタリアで大流行した痕跡が我が家所有のCDにどれほど残っているのか検証してみた。

  1. 1490 作者不詳の「Folia」
  2. 1520  Juan Di Enzina
  3. 1553 Diego Rodrigez
  4. 1553  Diego Ortiz
  5. 1557  Antonio de Cabezon
  6. 1650  Andrea Falconiero
  7. 1659  Maurizio Cazzati
  8. 1664  Berardo Storace
  9. 1669  Giovanni Antonio Pandorfi
  10. 1671  Francesco Corbetta
  11. 1685  Arcangero Correlli op2
  12. 1700  Arcangero Correlli  op5-12
  13. 1701  Marin Marais
  14. 1705  Antonio Vivaldi op1-12
  15. 1709  Antonio Martin Y Coll

「おお」ってなもんだ。ドイツの作曲家がいない。ヴィヴァルディより200年少々さかのぼるとはイタリアおそるべし。

 

 

2022年8月 6日 (土)

ラフォリア

「ラ」は冠詞だから実態は「フォリア」で「Folia」と綴る。イベリア半島起源の舞曲だ。メヌエットやサラバンドと同じ舞曲の名前なのだが、長い間に短調主体の低音部の定型までも含んで定義されるようになった。「ラフォリアバス」という。

イ短調を例にとると「A→E→A→G→C→G→C→E」だ。

「ラフォリア」と明記されていなくても、ベースラインの進行がこの流れであるなら、聞き手はラフォリアを想起する。ましてや、シャコンヌやパッサカリアの低音進行がラフォリアバスだった場合は実質ラフォリアということになる。短調のシャコンヌやパッサカリアはひとまず疑ってかかるほうがいい。

17世紀イタリアで大流行し、たくさんの作曲家が作品を残している中、コレルリのop5-12がとりわけ名高い。

 

 

2022年8月 5日 (金)

芋づる式

一つのことをキッカケに、関連する事項が次々と明らかになることくらいの意味だ。

ヴィヴァルディと言えば我が国ではバロック音楽を代表する不動の位置づけにある。ところが、バッハ同様長らく忘れられていた作曲家でもある。19世紀後半に訪れたバッハ再興の動きは、バッハ作品の研究面で飛躍的な発展を見せた。バッハは研究熱心で、他の作曲家の作品を編曲することが多かった。そのターゲットの中にヴィヴァルディがいたのだ。バッハルネサンスの展開の中から芋づる式に復活したのがヴィヴァルディという訳だ。「あのバッハがこれほど熱心に編曲しているのだから、さぞ立派な作曲家だったのだろう」というノリかもしれない。

遠い将来。

ブラームス研究を志す人が、ブラームスについて知見を深める活動の中から私の本やブログが芋づる式につり上げられることがあるかもしれない。

いつ釣り上げられても恥ずかしくないように、ピチピチと元気なブラームスネタを発信し続けたい。

2022年8月 4日 (木)

op-RV対照表

ヴィヴァルディの作品整理のために考案されたリオム番号「RV」という体系は、それなりの根拠をもった整合性に貫かれているのだが、慣れるまでが大変だ。ブラームスの作品番号はすべてそらんじている上に、器楽曲に限れば番号を言われれば冒頭旋律を歌うくらいは朝飯前なのに比べて心細い。

 

嘆いてばかりもいられないので、とりあえず「op」と略記される作品番号と、「RV」と略記されるリオム番号の対照表を作ってみた。

 

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最大の収穫は作るのが楽しかったことだ。御覧の通りだ。例えば「調和の霊感」op3-9ニ長調は「RV番号なら「230」だと一目でわかる。

 

栄えある「RV1」はop2-6のヴァイオリンと通奏低音のためのソナタだ。編成の薄い順になっているリオム番号の体系では、ヴァイオリンと通奏低音の二重奏が先頭に来る。そして調性順はハ長調からなのでハ長調ソナタop2-6が「RV1」となる。

2022年8月 3日 (水)

リオムさんのご事情

ヴィヴァルディの作品目録番号「RV」は今や、完全に定着している。編成の薄いジャンルから厚いジャンルに分け、さらそれが調性をキーに並べてある。完全に機械的だから、「もれなく」という網羅性が売りである。慣れるしかないと修行中である。

 

慣れるにしてもとっかかりがほしいところで、ある疑問がわいた。

 

たとえばニ長調のヴァイオリン協奏曲を例にとる。RV203からRV242までがこれ該当する。「1本のヴァイオリンを独奏楽器とし、第一楽章がニ長調の協奏曲」が、未完も含むとはいえ、32曲あるということだ。

 

ブラームス唯一のヴァイオリン協奏曲はニ長調。ベートーヴェンもチャイコフスキーも同様だ。なのにヴィヴァルディにはニ長調のヴァイオリン協奏曲が32曲あることに眩暈を覚えるのだが、これこそがバロックだとわかりかけてもいる。

 

大好きのな「調和の霊感」op3-9はニ長調だ。これはRV230だ。ニ長調ヴァイオリン協奏曲の28番目にあたる。

 

疑問とはここだ。同じニ長調ヴァイオリン協奏曲32曲の中の順序はどのように決めたのだろう。出版順ないし作曲順とは考えにくい。

2022年8月 2日 (火)

リオム番号

ヴィヴァルディ作品の末尾の付記されることが多い整理番号で、「RV」と略記される。

中学校で習った「四季」はop8だった。「調和の霊感」はop3だった。ブラームスやベートーヴェンに親しんでいると「op」になじみが深いが、これは作品が生前に出版されていないとたちまち行き詰まる。ヴィヴァルディのop番号の最大値は「14」なのだが、未出版や未発見の作品が大量に存在する作曲家や、個々の作品の作曲時期不明が多い場合には機能しない。

バッハも事情は似ていてだからBWV番号は作曲や出版の順序とは関係がない。ヴィヴァルディのリオム番号も同様の事情を抱えている。リオム番号の発番はヴィヴァルディ全作品をジャンルを第一キーとし、第二キーに調性を用いて機械的に割り振った代物だ。後からの発見作品にはRV743以降の番号が当てられている。

リオム番号は網羅性が売りで、現在では広く受け入れられているのだが、私のような素人には慣れも必要だ。協奏曲集「四季」がop8-1から4という明確さは犠牲になる。どれもヴァイオリン協奏曲の扱いなのだが、調性でソートした結果こうなる。連番にならない。

ニ長調のヴァイオリン協奏曲だけで10曲以上あるから、ジャンル名と調性だけで不自由なく個体識別が出来てしまうブラームスとは大きく事情が異なる。

愛好家として悩ましいのは、高い頻度で素晴らしい作品があることだ。

 

 

 

 

 

 

2022年8月 1日 (月)

出版の意味

ブラームスの作品出版は、本人が関与していた。ブラームスが出版用の原稿を出版社に渡す順番に番号が付与され、それをブラームス本人が管理していたと目される。原稿を渡したのちに何らかの事情で、順序の逆転がおきることがまれに発生したが、網羅性という観点からは問題はない。作品番号順がほぼ出版順になっていると考えていい。

ところがバロック時代はとなると状況が一変する。

「出版」は作曲家が自作を世に問うための一手段に過ぎない。当時の作品演奏の場は、王侯貴族の館、オペラハウス、教会、コレギウムムジクムとに大別できる。演奏に際しては出版譜ではなく手書きの筆者譜で事足りる。ブラームスの時代は音楽の受け手が担い手が市民になったから出版こそがポイントになるのだが、バロック時代は違った。

ヴィヴァルディの作品は、未発見のものもあると見込んで800とも1000とも言われているが、作品番号を持っているのはそのうちの114作に過ぎないし、声楽作品は全滅だ。

ヴィヴァルディ作品の出版は下記の通りだ。

  • op1 1705年
  • op2 1709年
  • op3 1712年
  • op4 1712年
  • op5 1716年
  • op6 1716年
  • op7 1716年
  • op8 1725年
  • op9 1727年
  • op10 1729年
  • op11 1729年
  • op12 1729年
  • op13 1737年
  • op14 1740年

ヴィヴァルディの生年は1678年、没年は1741年ということを頭に入れて上記のリストを見る。op1は27歳、op14は62歳だ。35年にわたる出版生活だが、網羅性という意味でははなはだ心細い。そのうえop13とop14は本人が出版に関与していない疑いまであるらしい。

それなりに様式の変遷は見てとれるから、定点観測のツール程度には役立つが、作品番号付きの作品だけを分析したところで大した結論にはならない。

2022年7月31日 (日)

3大ラルゴ

ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲のお話。それも作品番号付きの範囲で。ヴィヴァルディのコンチェルトは「急緩急」の3楽章制が基本だと繰り返し説明されている。中間2楽章が緩徐楽章となることが漢字3文字で言い表されている。

ブラームスに慣れた耳には新しいのだが、その緩徐楽章には「Largo」が頻繁に現れる。ブラームスはアンダンテやアダージョが優勢なのでいやでも目に付く。

本日は、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲の「3大ラルゴ」を私的に選定する。

  1. 第1位 「調和の霊感」op3-12ホ長調 
  2. 第2位 「四季」op8-4ヘ短調「冬」
  3. 第3位 「ラチェトラ」op9-4ホ長調

結果だけをお示しすると素っ気ない。1位はかなり鉄板だった。今までに何度も言及してきた。第2位は、いわゆる「冬」の二楽章だ。大好きな「調和の霊感」op3-9ニ長調の第二楽章は「Larghetto」なので門前払いになった結果、3位は激戦だった。同じくop9「ラチェトラ」の7番変ロ長調の第二楽章と迷った。皇帝カール6世に献呈されているだけのことはある「ラチェトラ」だ。

2022年7月30日 (土)

これもありか

調和の霊感の12番、ホ長調ヴァイオリン協奏曲のラルゴのこと。

バッハがハ長調に移してBWV976としてクラヴィーア版を編曲している。

これを編曲の対象に選んだバッハに感謝したいとずっと申し上げてきている。我が家所有のCDではピアノで演奏しているのはカツァリスただ一人だ。

いやいやどうして、バロックに慣れた耳には斬新。

 

 

2022年7月29日 (金)

かすかなつながり

記事「研究対象 」で、バッハによるヴィヴァルディ作品の編曲ぶりを列挙した。本日はそこからかすかな細い糸がブラームスにつながる話をする。

リストにあったBWV593の話だ。原曲はヴィヴァルディの「調和の霊感」op3-8で2つのヴァイオリンのための協奏曲イ短調。これをバッハがオルガン独奏用に編曲したもの。この第三楽章142小節目に、作曲上の禁則「平行8度」あるいは「平行5度」があると、ブラームスが指摘している。

ブラームスは同時期や過去の著名な作曲家たちの作品中に現れるこの手の作曲上の禁則違反をことこまかにリストアップしていた。作曲家32名による禁則違反128か所が延々10ページにわたって列挙される中、ヴィヴァルディ作品はここ一か所。ただし、ヴィヴァルディの原曲はリストに入っていないから、バッハが編曲にあたっておかした違反と考えられる。ヴィヴァルディの原曲にこの違反が存在したら、ヴィヴァルディとしてカウントされていたことだろう。

リスト作成中のブラームスは、原曲をあたって裏付けをとったに決まっている。

2022年7月28日 (木)

ウィーン工科大学

ヴィヴァルディの命日がバッハと同じ7月28日だとはしゃいだばかりだ。ヴィヴァルディは1741年7月28日に旅先のウィーンで急死し、同地で一般人扱いで埋葬された。その墓地は既に取り壊されているので墓碑も残っていない。

墓地を取り壊した跡地にたてられたのがウィーン工科大学だ。住所はカールスプラッツ13番地。カール教会至近の位置。ブラームス愛好家にはなじみの地域だ。ブラームスのウィーンの住まいはカールスガッセ4番地で、カール教会とは指呼の間だ。カール教会から工科大学の路地を入ったところにあった。

ブラームス生涯最後の数年の住まいは、ヴィヴァルディの墓地に近いということだ。無理やり見つけたネタ。

 

 

2022年7月27日 (水)

ピアノ三重奏曲第2番寿

本日は母の87回目の誕生日。24日に長女宅でケーキを食べてお祝いした。

20日には新型コロナウイルスの4日目のワクチン接種を終えている。ファイザー、ファイザー、モデルナときて今回はファイザーだった。副作用はほぼ無し。腕が少々重いという状態が翌日あったくらい。

2022年7月26日 (火)

初訪問

一昨日、結婚により巣立った長女の新居を訪問した。母と次女を連れて初めての訪問だ。車でおよそ50分。近からず遠からずの距離。駅近の新興住宅地といった趣きの街。こぎれいな賃貸住宅の2階の一室。

二人で精一杯の歓待を受けた。

幸せそうで何より。

 

2022年7月25日 (月)

まさに醍醐味

店頭で手に取ったのは、単なる偶然だった。ストラディヴァリウスというイタリアのレーベルが珍しくて何の気なしだった。内容はヴィヴァルディのオルガン協奏曲だった。収録曲目を見て血の気が引いた。イタリア語はわからぬものの「RV265」と「BWV976」という記載が確認できた。

 

ヴィヴァルディの「調和の霊感」から12番ホ長調op3-12RV265を、バッハがチェンバロ独奏に編曲したものがBWV976である。ヴィヴァルディのオルガン協奏曲を集めたCDの余白に収録されている以上、チェンバロ独奏用の作品がオルガンで演奏されている可能性が高いとにらんで購入。

 

帰宅して再生するとあたりだった。まさにBWV976のオルガン盤である。第二楽章ラルゴをオルガンで聴けた。

 

そりゃあもう絶句。「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」をシュプラーコラールBWV645で初めてオルガン曲として聴かされて以来の衝撃と申すべきか。いやはや敬虔。ヴィヴァルディにも編曲したバッハにも宗教的な意図なんざあったはずはないのだが、賛美歌風だ。これを教会で聴かされたら神様を信じてしまう。

2022年7月24日 (日)

移調の理由

バッハは、自作であれ他の作曲家の作品であれ、編曲に際してオリジナルではない調に移調することがある。基準は不明だ。チェンバロ奏法に精通したバッハが演奏上の配慮をしたものと受け止められている。

ヴィヴァルディの「調和の霊感」の中、ホ長調協奏曲op3-12を無伴奏チェンバロ協奏曲に編曲する際にも移調を試みている。オリジナルのホ長調がハ長調に移されてBWV976となった。私のようなヘボな弦楽器奏者にとってはありがたい移調だ。ホ長調と言えばシャープ4個が奉られた長調であるのに対し、移調先のハ長調は調号なしだから、演奏が容易になる。

編曲の依頼主であるワイマール公の腕前に配慮した可能性はあるのだろう。高度な芸術的判断とも思えない。

まさかと思うことがある。

同コンチェルトBWV976の次、BWV977ハ長調は原曲不明の作品だが以下のように立ち上がる。

 

20170413_084951
レ抜き音階がひとつ前のBWV976と共通する。

 

20170413_130503
どちらもハ長調だから「ドミファソ」という「レ抜き」っぷりが鮮明に浮き上がる。「移動ド」などという操作をしなくてもいいからだ。

この両作品に共通する「レ抜き」の配置をより鮮明にするためにオリジナルのホ長調をハ長調にしたなどということはあるまいな。

 

 

2022年7月23日 (土)

レ抜きの連鎖

ヴィヴァルディ作曲「調和の霊感」の中12番ホ長調の第1楽章と第2楽章冒頭で「レ抜き」音階が現れると指摘した。とりわけ第2楽章7小節目「cantabile」にもまた「レ抜き音階」が現れると結んだ。

バッハはこれを無伴奏チェンバロ協奏曲に編曲した。BWV976があてがわれている。ワイマールの雇い主の求めに応じて編曲した15曲の一角を構成する。

BWV番号でいうその次BWV977もまたバッハによる編曲なのだが、オリジナルはヴィヴァルディではなく今では知られていない誰かのヴァイオリン協奏曲だ。第一楽章冒頭部分を以下に示す。

 

20170413_084958
赤枠で囲んだ部分を見てほしい。ここにも「ドミファソ」つまり「レ抜き音階」がある。BWV番号は後世の研究者によって付与されたものだが、この並びそのものはバッハのオリジナルだ。「レ抜き音階」をもった作品が連続させたのはバッハの判断だと思われる。

この手のネタを偶然として放置しないのがブログ「ブラームスの辞書」のお約束である。

 

 

2022年7月22日 (金)

カンタービレ削除

ヴィヴァルディのコンチェルトホ長調op3-12の第二楽章。トゥッティがソロに転じる7小節目に「cantabile」と書かれている。ここで鳴る音楽の素晴らしさと合わせて深々と言及しておいた。

さて、同コンチェルトはバッハによって無伴奏チェンバロ協奏曲に編曲さている。その編曲にあたってバッハは、7小節目の「cantabile」をどう取り扱ったのかというのが本日の話題。

 

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譜例は、バッハによって編曲された同楽章の7小節目。つまり「cantabile」はあえなくカットされている。「調和の霊感」全12曲に現れる「cantabile」は6箇所だが、バッハの編曲の対象になったのはこの12番ホ長調だけだから、類例を確認できないのが残念だ。「Largo」などの発想記号や「f」「p」に代表されるダイナミクス用語、あるいは、「Tutti」「solo」などはオリジナルの通り保存されているから「cantabile」の脱落には何らかの意味があると思われる。

「cantabile」があえなくカットになった理由は不明だ。バッハが参照していた楽譜に元々なかった可能性もある。一方で上記譜例の赤矢印をつけておいた「プラルトリラー」はヴィヴァルディのオリジナルには存在しない。バッハが編曲にあたって付加したものと推定できるが、これとてバッハが参照した楽譜には記載されていた可能性も否定できまい。いろいろと悩ましい。

 

 

2022年7月21日 (木)

導音に至る6度下降

民謡学者エルクは、ライフワークとなった民謡収集活動を通じてドイツ民謡の始源の姿を突き止めようとした。近代に作曲された民謡風歌曲と本来の民謡の峻別を試みた。現代の研究成果から申せば、それらの区別にはほぼ意味がないと結論付けられてはいるのだが、当時は大まじめだった。

エルクは、旋律の形質をキーに、いくつかの基準を示した。そのうちの一つが本日のお題「導音に至る6度の下降」だ。こうした旋律が現れたらそれは古来の民謡ではなく、近代以降に作曲された「民謡風歌曲」だということだ。

言われてみればブラームスの歌曲にも「導音に至る6度下降」は、いくつか例が見つかる。

先日来話題にしているヴィヴァルディの「調和の霊感」からホ長調協奏曲op3-12の第2楽章7小節目の「cantabile」に触発されて楽譜を眺めていたら、なんとなんと「導音に至る6度下降」があるではないか。

 

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同コンチェルトの魂ともいうべき「レ抜き音階」の到達点「ロ音」から「嬰ニ音」へ6度の下降だ。「嬰ニ音」は半音せりあがって「ホ音」に進む。「嬰ニ音」は、到達点の「ホ音」に対する導音だから、全体として「6度下降→半音上昇」ということになる。つまり「6度下降して導音に至っている」ということだ。

ドイツ民謡学の泰斗が、旋律の「近代性」と判断する目安とした「導音に至る6度下降」の実例がヴィヴァルディに現れていた。

«やっぱりレ抜き

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