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    2012年3月28日から4月4日まで、次女の高校オケのドイツ公演を長男と追いかけた珍道中の記録。厳選写真で振り返る。

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    自分で買い求めて賞味したビールの写真。ドイツとオーストリアの製品だけを厳選して掲載する。

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カテゴリー「084 お盆」の28件の記事

2016年7月15日 (金)

お盆のファンタジー25

ブラームスさんとマーラーさんは子供たちが手に持っていた小箱が気になると口をそろえている。「あれは何が入っていたんだ?」と。

「あ~はいはい」と私が娘たちに合図した。次女がキッチンにお土産袋を取りにもどった。私が「スペシャルコンサートに臨む子供たちに保護者たちが用意した差し入れだと説明した。

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ドイツ公演を経験した子供たちは、旅行中何回かプレッツェルを食べた。そのことを演奏会前に思い出してもらうためのサプライズだと説明した。キイチゴのジャムパンとプレッツェルの組み合わせで、恐らく東京一のプレッツェルだと付け加えた。

ブラームスさんとマーラーさん用に一箱ずつ用意しておいた。箱もロゴもおしゃれな上に、味も最高だから道中腹の足しにするよう持たせた。たった今帰って行った。

2016年7月14日 (木)

お盆のファンタジー24

勢いに任せてさんざん盛り上がっているうちに、どうやらマーラーさんもブラームスさんも5月のスペコンにも来ていたことがわかってきた。何故わかったかというとブラームスさんがこう切り出したことがきっかけだった。

「あの日ヴィオラのトップを務めた生徒さんは、アダージェットの後、おかしな動きをしていたね」。マーラーさんは「そうそう、バッハ、アダージェットと演奏し終えたあの時、未完成にむけてメンバーが配置換えをしたときだ」「ヴィオラのトップの少女は配置換えの必要もないのに立ち上がって後方に歩いて行った」と、やけに確信に満ちた口調で私に念を押してきた。

なんということだ。

二人とも知っていたのか。

「たしかに」と私。長女が私にハンカチを差し出す。

5月スペコンの冒頭2曲。ヴィオラのトップ奏者は自分の楽器をスペアの位置において、私が貸していた楽器を弾いた。「主よ人の望みのよろこびよ」と「アダージェット」だが、本当は「アダージェット」を私の楽器で弾くためだったと、事の次第を説明した。

「そりゃあいい話だ」とブラームスさんとマーラーさんが同時に叫ぶ。「だってトップのその生徒さんだって大切なマイ楽器なのだろ。大切な引退公演の冒頭、マイ楽器を持たずにあんたのヴィオラを手に入場したってことだろ」とブラームス。「我々ピアニストはホール備えつけの楽器を弾かねばならない宿命だが、オケのメンバーはみな、マイ楽器をそれはそれは大切にしている」と。

「そりゃあ、あんたに対する最上の敬意と感謝の表れに違いない」とはマーラーさんだ。「誰の発案か知らないが、どんなパートだろうと、トップが本番でアクシデントもないのにスペア楽器を弾くなんて、本人以前に、他のメンバーや指揮者が許さんだろ」「つまり他のメンバーも趣旨に賛同していたってことだよ」

「どおりで、すごいアダージェットなわけだ」「ただの厳しい練習だけでは絶対にたどりつけない音楽だった」「何かを背負っていなければ絶対に届かない世界」「出番のない管楽器奏者たちもみなヴィオラトップ奏者の意思を認めていた証拠だ」とまくしたてるブラームスさんの横で、固まっているマーラーさんを見ていたら、マーラーさんは慌てて奥様にラインで話を知らせたと言ってスマホを見せてくれた。

ブラームスさんはそれを聞いて「わしもクララに知らせよう」と言ってスマホを取り出した。

2016年7月13日 (水)

お盆のファンタジー23

「ところで」とブラームスが話題を変えてきた。

「ニュルンベルク公演の時、ロビーでCDが売られていたね?」と。

私が「はい」と答えると「2枚組3種類全部買ったよ」と言って見せてくれた。2010年、2012年、2014年のニュルンベルク公演のライブだ。

「お買い上げありがとうございます」と私が言うと、次女が「2012年は私がセカンドで参加していました」と名乗り出た。「スプリンクラーの暴発の年です」と付け加えることも忘れない。

「思いだしたぞ」とブラームス。「オルガンの独奏もだが、ショスタコ某の交響曲がすごかったな」。学校のオケということで毎回必ずメンバーが完全に入れ替わってしまうのに、醸し出されるトーンがいつも同じなのは「伝統の力」としか説明がつかんな」と独り言が止まらぬブラームスさん。

「ということは」と唐突にマーラーさんが割り込む。

「つまり2018年には今回のアダージェットのCDが販売されるということだな?」

「おお、鋭い」とブラームスさんが機敏なリアクションをかます。

「先行予約には何か特典がないのか?」とか「せめてコンミスの生サインがほしい」とか、単なるミーハーが止まらぬ感じになってきた。

「妻の誕生日プレゼントにしたいので、くれぐれも内密に」と言いながらマーラーさんが私に20ユーロを差し出した。

2016年7月12日 (火)

お盆のファンタジー22

「それにしてもあのイタリア奇想曲はやばいな」とはブラームスの独り言だ。「あのあとチャイコフスキーさんから「昨年の白鳥湖に続いてまたやってくれたな」とラインが入ってきたらしい。「第一部のラストでしかないというのに、あれよあれよと人々が立ち上がったのは前代未聞だ」とマーラーさんもうなずく。「妻も椅子を蹴って立ち上がっていた」と付け加えるマーラーさんを遮るように「もしテロでキャンセルになっていたら市民の暴動がおきていたかも知れんな」と真顔のブラームスさんだ。

市民全員でサプライズを仕掛けた感じがしたとマーラーさんがしみじみと一杯目を飲み干しながらつぶやく。「はい」「乙女たちはあれで涙腺が完全に決壊でした」と私も飲み干す。「あなたは乙女たちにヴィオラを貸していたのか?」と訳を知しったふうなブラームスさんがドヤ顔で尋ねてきた。

「古い話で恐縮だが」と私が切り返す。

「大学4年の最後の演奏会に備えて私は楽器を買った」「そこで演奏したのがマーラーさんの第五交響曲だったんですよ」「千葉県初演ですわ」「私はヴィオラ、亡き妻はセカンドヴァイオリンで、最初で最後の共演でした」「アンコールは第四楽章つまりアダージェットだよ」「そりゃあすごい演奏だったから、やがてうまれた最初の女の子にあなたの奥様の名前をいただいた」

「今では弾くことのないその楽器を乙女たちのオケに貸していたおかげで、あのニュルンベルクのステージにスペア楽器として置かれていたんだ」

マーラーさんは長女からビール瓶を受け取ると私に酌をしてくれた。

「あのステージに連れて行ってくれたこともだが、あんたの楽器が一年間どんだけ大切にされていたかわかるな」とマーラーさんが私に一気飲みを促す。

2016年7月11日 (月)

お盆のファンタジー21

ブラームスが連れてきたのはまたまた紳士だった。「フランスに勝っていたら決勝戦を観に行く予定だったのだが」と憮然とした表情のブラームスの後から、静かに入って来たのはグスタフ・マーラーだった。私のメガネを見て同じだといってブラームスが笑っている。

娘たちは今年も「だあれこの人」というリアクションだ。長女を紹介するとマーラーさんの目がひときわ輝いた。「妻と同じ名前なのか?」と訊いてきた。長女はこっくりとうなずく。「幼いころはなじめなかったけど、今はとても気にいっています。自己紹介すると一度で覚えてもらえます。就活の面接者に音楽愛好家がいて、貴殿の妻の名前だと悟られたことから話が30分続いたこともありました。小さいころから父に由来を聞かされてきたので、スラスラと答えることが出来ました」と嬉しそう。

オケをやっていた次女は、「指揮もなさるのですか?」などと怖いもの知らずの質問をしている。マーラーさんは余裕をかましながらニコニコとうなずいている。「3月には、あなたの後輩たちがニュルンベルクに来てくれたね」と早々と核心話を切り出した。次女は「今年はテロもあって心配しましたが、何とか開催できました」といつになく控えめ。マーラーさんは「ブラームスから絶対に聴きに来い」としつこくさそわれていたらしい。「遠い日本から高校生が来る。しかも女子ばかりということで妻も誘って出かけたよ」とマーラーさんは遠くを見つめるような目でつぶやく。「会場入りする人波を見て、半信半疑だった妻の顔つきがかわった」「堅実でクレバーな演目の中にアダージェットが無理なくおかれているのを見てうれしかった」などと話があふれ出す。「バッハからアダージェットを経て未完成に至る流れは実に端正だ」とブラームスが割り込んできた。

長女がビールを取りにキッチンに走る。

「すごいアダージェットだった」「これが10代半ばの乙女たちなのか」ビールも入っていないのにマーラーさんは矢継ぎ早だ。「見ての通り、高い音をはずしませんねとか、指が回りますねとか、重音がはまりますねとかいう切り口の曲ではないからな」と口を挟まずにはいられないブラームスさんだ。「出番がない管楽器奏者たちが定位置に座ったままという緊張感も音楽のうちだった」「自信に満ちたというにはあまりにエレガントなアダージェットだった」というブラームスの言葉にマーラーさんはすでに涙目だ。

「おまちどうさま」と長女がビールを持ってきた。次女がブラームスに長女がマーラーさんに酌をしている。注ぎ終わるかどうかというところでブラームスさんが「乙女たちのアダージェットに乾杯」と宣言した。

2015年7月16日 (木)

お盆ネタ20本

ブラームスが知人を連れてお盆に我が家にやってくるというコンセプトの記事が昨日で20本に達した。

  1. 2007年 バッハ
  2. 2008年 シューマン夫妻
  3. 2009年 ヨアヒム
  4. 2010年 ドヴォルザーク
  5. 2010年 ドヴォルザーク。ブラームスの携帯電話ネタ。
  6. 2011年 ジムロック 地震お見舞いネタ。
  7. 2011年 ジムロック 「ブラームスの辞書」版権譲渡ネタ前編。
  8. 2011年 ジムロック 「ブラームスの辞書」版権譲渡ネタ後編。
  9. 2012年 ビューロー 「ニュルンベルクコンサート」ネタ
  10. 2012年 ビューロー 「ふるさと」ネタ。
  11. 2012年 ビューロー 
  12. 2012年 ビューロー
  13. 2012年 ビューロー
  14. 2012年 ビューロー
  15. 2013年 ブラームス単独 真冬の来訪。ふくだもなネタ。
  16. 2013年 ボロディン 36代をねぎらう。
  17. 2014年 ドヴォルザーク ドヴォ8、謝肉祭
  18. 2014年 ドヴォルザーク 
  19. 2014年 ドヴォルザーク
  20. 2015年 チャイコフスキー

その間我が家を訪れたのは9名だ。申し上げるまでもないが全部私の創作である。詳細はこちら

ブログ「ブラームスの辞書」の当面のゴール2033年5月7日までおよそ20年。2010年から年に2本以上が続いている。この調子で行くとかなりな本数を稼げる予感。

同時に本日はブログ開設以来ちょうど3700日の節目にあたる。

2015年7月15日 (水)

お盆のファンタジー20

ブラームスと一緒にやってきたのはチャイコフスキーだった。道中会話が弾んでいたらしく、ノリが共有できている感じだ。挨拶もそこそこにブラームスがチャイコフスキーを紹介してくれた。

チャイコフスキーは右手を差し出しながら「すごい白鳥だちですね」とウィンクをかましてきた。次女の後輩たちのスペコンのことを言っているようだ。強く右手を握り返しながら、「おいでいただいたのですか?」と私が聞き返す。チャイコフスキーの返事を遮るようにブラームスが割って入る。「フルオケでバレエ付のスワンレイクだろ」「オレだけで聴くのはもったいないから誘ったんだ」と。チャイコフスキーは笑いながら「演奏会にご一緒するのは、たしか1889年3月12日ハンブルク以来でしたね」とブラームスに同意を促す。「そうそう、たしか第五交響曲のハンフルク初演の夜だ」とブラームス。

「それにしても」応接に通してビールを促すと、一口で飲み干したチャイコフスキーが切り出す。「すごい熱気だったな」と続ける。私はわざと「何のことですか?」と切り返す。「乙女たちのスワンレイクに乾杯」とブラームスが奇声をあげる。

「高校生のクラブとしては、すごいでしょ」と私。バレリーナも彼女らの先輩だし、同日のソリスト2人も先輩だと付け加えた。「ああ、並みのオケならあのスワンレイクでエンディングだろ」とブラームス。「分厚いブラボーがかかって、そこそこのアンコールが続けば、チケット代2マルクの元はとれるぞ」「俺なら5マルクいや10マルクでもOKだ」と。「無料で聴いたくせによくいうよ」とチャイコフスキーが突っ込む。「乙女たちがすごいのは、あのスワンレイクの後、尻上がりに熱気を増すことだよ。3時間強の盛りだくさんの演奏会をケロリとこなすパワーが素晴らしい」とチャイコフスキーが付け加える。

「乙女たちの青色のベストから見える白いブラウスの袖があるだろ」「弦楽器の子たちがトレモロを刻むとき、白鳥のはばたきに見えるな」とチャイコフスキーが感心したようにつぶやく。「ああ、それに青い制服が湖のようだ」と続ける。

「5月6日がゲネプロだったろ?」とチャイコフスキーが聞いてきた。「その通り」と私が答えると「乙女たちからお誕生日おめでとうの念がたくさん飛んできた」とチャイコフスキーがホクホク顔で続けた。「翌日7日は私ら2人の誕生日だからな」とブラームス。「誕生日イブにお祝いの念を送れば、本番でご加護があると本気で考える子たちなんです」と私。ブラームスはわざと難しい顔をして「あの子らにご加護なんぞ要らんだろ」としたり顔だ。

「それにしてもエンディング前のカバレリは伝統なのか?」とブラームス。「あの手の曲で人を唸らすのは、プロ並みの心構えだろ」とあきれ顔だ。「代が変わりメンバーが入れ替わっても変わらずにプログラムに採用される曲です」と私が説明する。

「ああそれにしてもレプレ」「もう弾く方も聞く方も泣いていたな」「凄いステージだ」などと議論は深夜に及んだ。

昨日帰り際に「DVDができたら10枚送ってくれと私に耳打ちするブラームスだった。

2014年7月15日 (火)

お盆のファンタジー19

「MVPはノイアーだろ」と怒りが収まらないブラームスさんをなだめるように、ドヴォルザークさんが話題を変えてきた。

「俺も鉄道が好きだ」と不意に切り出した。ブログ「ブラームスの辞書」の鉄道特集を知っている口ぶりだ。

「知っていますよ」とわざと平然と私が応じる。「だから、あなたのためにプレゼントを用意した」と言いながら包みを渡した。

いそいそと包みを解いたドヴォルザークの表情がみるみる驚きに変わる。用意したのはメルクリン社の鉄道模型カタログの2014年版英語版だ。たっぷりと機関車が載っているのだが、ドヴォルザークはそれらを全部知っている感じだ。予想通り英語版が苦になっている様子はない。

「本物じゃなくてゴメン」と詫びたのだが耳に入っていない。「俺はサッカーより機関車だな」「今度来たときはショップを案内してくれ」などと言っている。「9月には鉄道特集であなたを取り上げる」と伝えておいた。

ブラームスは「さあ帰るぞ」と言ってドヴォルザークを引っ張って席をたった。これから天国でも祝勝会だそうだ。来年は誰を連れてくるのだろう。一生忘れないお盆になった。

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2014年7月14日 (月)

お盆のファンタジー18

ブラームスも私もサッカーの決勝戦に夢中になっている。ハーフタイムになってドヴォルザークが、ふと思い出したように切り出した。「今日は、あなたのブログの記念日か?」と。話が突然変わって面食らったが、確かに本日のこの記事をアップしたことにより、2005年5月30日のブログ「ブラームスの辞書」の創立から3333日連続の記事更新になる。ワールドカップの決勝戦の日になるとは、たいした奇遇だ。

「確かに今日で3333日になるが、何故知っているんだ?」と私。「そりゃあまあな」とブラームスがドヤ顔で切り返す。「3333日がお盆期間になることは前からわかっていたから、それに合わせて来たが、まさかファイナルと重なるとは」などど得意な口ぶりで、ドヴォルザークに向かって目配せをした。ドヴォルザークは大きなスーツケースから何かごそごそと取り出して私に手渡した。

おおお。ビールだ。驚いた私にブラームスは「あんたビールも好きだろ」と畳み掛ける。ドヴォルザークが言うには、プラハ最高のビールだということだ。今から急いで冷やすから後で飲もうということになった。

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2014年7月13日 (日)

お盆のファンタジー17

案の定ブラームスを追い越さんばかりの勢いでドカドカと上り込んできたのは、ドヴォルザークだった。「いやはや何とも」とつぶやいたっきり絶句している。ブラームスが見かねて「スペシャルコンサート凄い演奏だったな」と切り出す。

今回ばかりは私が切り出すべきだった。とっておきのビールを開けながら「完璧な天気をありがとう」と言うと、2人ともとんでもないというばかりに手を振りながら「お安い御用だ」と口をそろえる。「神様お天気手配センターに、ねじこんだからな」とブラームスがドヤ顔だ。

「演奏会場に集まる生徒たちを出迎えようというアイデアは素晴らしいな」と乾杯もそこそこにブラームス。「いやいや、サッカーというスポーツでは、大事な試合の当日、サポーターが選手たちを競技場の入り口で出迎える場合がある」と私がドヤ顔の番。

「おかげで演奏会までの準備を見させてもらった」とドヴォルザーク。まるでオペラにでもしたいような濃い一日だったよとブラームスが賛同する。

実際ブラームスとドヴォルザークは、プログラムにパンフをはさむ単純作業をOGや生徒たちに交じって手伝ってくれた。「ステリハを聴きに行かないのか」と水を向けると、「いやいや本番を楽しみにしているよ」と言って耳を貸そうとしない。「日本にはこんなに学生のオーケストラがあるのか」と驚いていた。「演奏会の開催日順に挟み込むとは、凄い配慮だな」とあきれ返るドヴォルザークだった。

「けれども1475人収容のホールを満員にするというのは、誰にでもできることではない」と私が切り返したのだが、開演を前にした聴衆の行列を見るまでは信じてもらえなかった。

やがて開場すると、ブラームスもドヴォルザークも今度はチケットもぎりを手伝ってくれた。開場からおよそ30分の間、絶えることのなかった入場者の列を見かねての好意だった。

改めて当日の手伝いに感謝すると、「いやいや、子供たちの演奏が素晴らしくて、お釣りをもらい過ぎた感じだよ」とブラームス。自作を2曲も演奏されたドヴォルザークは、いまだに放心状態だ。「たいていはプログラムの末尾におかれることの多い交響曲が、2曲目だったので、「おや」っと思っていたが、冒頭のトロけるようなチェロを聴いて納得させられた」とやっと口を開くドヴォルザークだった。「緩徐楽章を響きの頂点ととらえる解釈は、昨年のボロディンと同じだな」と眉間にしわを寄せたブラームスが割りこむ。「そうそう」とドヴォルザークが続ける。「そうした指揮者の解釈が、乙女たちに行き届いているのが素晴らしい」

「あの日の第二楽章は、本当に素晴らしかった」「テクニック上の難所を力任せに強行突破する若者も見かけるが、その対極にある丁寧な演奏だった」「クラリネット2本の繊細なソロには涙が出た」「第3楽章の再現部の入りには舌を巻いた」「生徒たちと指揮者の、太いきずなを感じた」「第3楽章の最後の弦楽器のエコーがかわいらしくて涙が出た」もう2人のやりとりが激しくて私が口をはさむ暇がない。

「第8交響曲で要所を締めたチェロには、3年生に経験者がいなかったのは知ってるか」とやっと私が割り込む。2人も同時に「経験者?」という反応。「3年生には高校に入ってからチェロを始めた子たちしかいないんだ」「チェロばかりではないけど、それを言い訳に使う子供たちじゃないから、こんなことを言ったのがバレたら叱られてしまうよ」と私。ブラームスもドヴォルザークも事態が全く呑み込めていない。

「そして謝肉祭だ」とブラームスがいうのだが、ドヴォルザークは「その前にカヴァレリアの間奏曲でしょ」と水を差す。「聴衆も奏者もこの時点で泣いていたね」「開演から3時間経過しているのに、まだ言い残しがある感じ」

「1年間の思いが詰まった謝肉祭ですよ」とやっと私が口をはさむ。「いやいや」とまたブラームスが遮る。「曲間に行われる管楽器奏者たちの座席移動が鮮やかだな」「あの整然とした動きは、もはや音楽の一部でしょ」

「それを言うならインタビューだ。その間、灯りの落ちたステージで何が起きていたか覚えているか」と興奮気味にドヴォルザークが話を逸らす。「結構な規模で椅子の並び替えが行われているのに、音もしないから、次にライトが点灯したときにびっくりしたよ」

「高校生活最後の演奏の意味を理解してくれてありがとう」と私。「この一年とりわけ「謝肉祭」はあの子たちの生活のすべてだった」と続ける。「子供たちの一年間の傾注に答えて余りある謝肉祭という作品の奥深さを感じた」と言いながらドヴォルザークに酌をすると、隣でブラームスからオーケーのサインが出た。

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ブラームスの辞書写真集

  • Img_0012
    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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