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    2012年3月28日から4月4日まで、次女の高校オケのドイツ公演を長男と追いかけた珍道中の記録。厳選写真で振り返る。

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    自分で買い求めて賞味したビールの写真。ドイツとオーストリアの製品だけを厳選して掲載する。

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カテゴリー「084 お盆」の40件の記事

2019年7月16日 (火)

お盆のファンタジー37

凄い演奏だった。「墓参御礼のカノン」のことだ。あれから次女を交えてビールそっちのけで夜半まで弾きっぱなしだった。バッハさんと次女はときどきパートをチェンジしている。「実はサードも面白いからな」と訳知り顔のバッハさんだ。通奏低音のパッヘルベルさんは、楽譜を見ていない。そりゃまあ本人だし。繰り返すたびに毎回違うけど大した説得力だ。パッヘルベルさんがトイレにたった隙に、ブラームスさんがチェンバロを弾いてくれた。ブラームスさんリアライゼーションのカノンだ。パッヘルベルさんと細かいところが違うけれど、思った以上に普通だった。「本人前にしとるからのお」としおらしいブラームスさんを、バッハさんが「よかよか」とほめていた。次女いつの間にかファースト弾いてた。

こちらから、5人にお礼を用意していた。「オルガン自由曲頭出し」CD集だ。全17枚組を5名に進呈する。

  • ブクステフーデ 4枚組
  • パッヘルベル 6枚組
  • テレマン 1枚組
  • バッハ 6枚組

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先輩4名を差し置いて「やべえ」としきりに驚いているのはブラームスさんだ。次女が「ブラームスさんのオルガン作品が入ってなくてすみません」と謝ると「ワシのガラクタなんぞに用はない」といつもの謙遜ぶりだ。「現代日本でCDの音源があるものとならざるを得ずテレマンさんが少なくてすみません」と私が説明した。「未発見作品が全て見つかったらテレマンさんが最多になるはず。今度ワシの手持ちを送るから」「シュピッタの所にはブクステフーデさんのがもっとあるはず」とブラームスさんが真顔でつぶやく。「CDあるんか」と突っ込むのはやめておいた。当のテレマンさんは「なあにお三方は教会オルガニストだから」と冷静に応じている。

「道中聞きながら」と大切そうに抱えて、さっき帰っていった。

2019年7月15日 (月)

お盆のファンタジー36

令和改元の話が一段落すると、ブクステフーデさんが「ところで墓参のときについてきたネコはいったい何者だ?」と訊いてきた。セバスチャンのことだ。ペットボトルホルダーの意味を説明し、ツアーペットからブログペットに昇格したと説明した。次女が私の部屋から連れてきて差し出しながら「名前はセバスチャンです」と紹介すると、バッハさんが飲みかけのビールを吹いた。

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「一人旅の退屈を紛らせてくれたし、みなさんのお墓で写し込むことで、確かに私が現地を訪れた証拠になります」と私が付け加えた。「ケラーで支払いをするときセバスチャンを含めてツザーメンというと受けが取れました」「みなさんの墓参を1度の旅行で達成するために知恵を絞りました」「その一つがセバスチャンです」

「それではセバスチャン閣下に墓参のお礼をしよう」とテレマンさんが切り出した。バッハさんが「貴殿の家にはチェンバロがあったはずだ」と言っている。たしか前回、電子ピアノでチェンバロの音が出ると説明していた。「酔いが回る前にな」とテレマンさんが促すとおのおの何か取り出している。私の「カノンニ長調を5人で演奏する」とパッヘルベルさんが宣言した。「日本で超有名ときいたんでな」と。

何やらもじもじとブクステフーデさんが困った顔をしている。「わしはヴィオラダガンバで通奏低音を弾きたいのだが…」と小声だ。困惑の意味がわかった。彼がガンバを弾くとヴァイオリンが一人足りなくなるからだ。「道中ブラームスさんにヴァイオリンを弾くよう説得したのだが色よい返事がなくてな」とブクステフーデさんが訴える。ブラームスさんはにやりとしながら「いやいやここには可憐なヴァイオリニストがおるのでな」と次女を指さした。

チェンバロはパッヘルベルさん。ブクステフーデさんがガンバ。バッハさんとテレマンさんと次女がヴァイオリンだ。緊急会合の結果、テレマンさんが第一ヴァイオリンで、次女がやはりセカンド。バッハさんがサードを弾くときまった。気の早いパッヘルベルさんがAを鳴らしている。次女が急いで2階にヴァイオリンを取りに走った。

感動的。やけに早いテンポ。

「この日のために何回かトマス教会に集まって練習した」「練習中は私がセカンドを弾いたよ」とジョッキ片手のブラームスさん。「ご息女は飛び入りの割には溶けているな」「楽譜よりテレマンさんをガン見している」とほめてくれた。

2019年7月14日 (日)

お盆のファンタジー35

さすがのブラームスさんも今年ばかりはツアーコンダクターに徹したようだ。盆灯を待ちかねたように5名が立て続けに我が家にやってきた。ブラームスさんは手早く紹介してくれた。

ブラームス:「こちら最年長のブクステフーデさん」

ブクステフーデ:「ディートリヒと呼んでくれ」

ブラームス:「こちらはニュルンベルクのパッヘルベルさん」

パッヘルベル:「大ヨハンと呼んでくれ」

ブラームス:「こちら同郷のテレマンさん」

テレマン:「フィリップと呼んでくれ」

前に一度来たことがあるバッハさんはブラームスさんが紹介する前に「最年少のバッハです」と私に手差し出した。さすがのブラームスさんもこのメンバーの中では使い走り状態だったと見えてしきりに汗を拭いている。無理もない。

まずブクステフーデさんが「昨年は墓参ありがとう」と切り出した。昨年8月のドイツ旅行で、4名の墓参りをしたことに感謝してくれた。

玄関先の話し声を聞いて母が出てきた。「立ち話してないで中に入ってもらいなさい」といつもの仕切り癖が出ている。リフォームしたばかりのリビングに座ってもらうと、次女がビールを注いだ。乾杯の発声はブラームスさんに促されたパッヘルベルさんだ。

「プロジット」

一気飲みが終わったところでテレマンさんが私に「ところで今年、日本ではカイザーが交代したのか」と尋ねてきた。ドンピシャの時事問題である。「イエス」というと「カイザーではなくテンノーだと」とブラームスさんがしたり顔で割り込んできた。「日本は選挙で皇帝を決めたりせんようだ」と付け加える。選帝侯のことを言っているのだろう。「日本ではおよそ200年ぶりの生前退位です」「30年前の改元では、昭和天皇の崩御とセットだったから自粛ムードも目立ったけれど、今回はお祝い一色でした。慣れない10連休で大変でした」と、いつの間にか次女が説明している。前回の改元の時には生まれていなかった次女だが堂々たる講釈だ。「改元関連テレビ番組が盛んに放映される中、皇室の歴史を振り返る番組ではバッハさんの作品がBGMになっていました。」といちいち細かい。

 

2018年7月15日 (日)

お盆のファンタジー34

ブラームスさんお手製のCDをさっそく聴こうという話になったと思ったら、娘たちが部屋に入ってきた。何かと思えば手にワインを持っている。ブラームスさんが持参したワインを冷やしておいたとか。パパにばれないように野菜庫の奥に入れて大根でかくしておいたと娘が言っている。やけに早い登場はそういう工作のためだったそうだ。

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サプライズのつもりらしい。決勝戦を見ながらとも思ったが、特製CDを聴きながらも悪くあるまい」と自慢気に話すブラームスさんだ。

あんたの慰労だと薦めてくれた右側のアイスワインは絶品だった。

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ご覧の通りのゴージャスな色合い。

2018年7月14日 (土)

お盆のファンタジー33

「忘れていた」と言い訳しながら、CDを1枚出して「私からの贈り物だ」と付け加えた。ジャケットには手書きで「お疲れ様」と書いてある。収録は下記の通り。

  1. 2013年 マスカーニ 「カヴァレリアルスティカーナ」間奏曲
  2. 2011年 ラヴェル 「ラヴァルス」
  3. 2012年 ショスタコーヴィッチ 交響曲第5番第4楽章
  4. 2013年 ブラームス ピアノ五重奏曲 第3楽章
  5. 2014年 ドヴォルザーク 序曲「謝肉祭」
  6. 2015年 リスト 交響詩「レプレリュード」
  7. 2016年 マーラー 交響曲第5番よりアダージェット
  8. 2017年 サンサーンス 「バッカナール」
  9. 2018年 Rコルサコフ 「スペイン奇想曲」
  10. 2017年 シベリウス 「フィンランディア」合唱付き。
  11. 2013年 シェーンベルク レミゼラブルより「民衆の歌」

作曲家が重複しないように工夫したとどや顔。2013年はあなたの室内楽だがと水を向けると、もじもじと「気に入らんか?」と私の顔を覗き込んできた。「だから代わりにレミゼを最後に入れておいた」とは、空気の読める男だ。「ありがとう」と言って全力で手を握り返した。

まさに現代のピエタだとブラームスさんがため息をつく。このレベルがずっと維持されているとは驚きだとも付け加える。

全てお見通し、毎度のことながら目端の利くブラームスさんだ。

2018年7月13日 (金)

お盆のファンタジー32

六重奏の話は、自作だということもあって、それはそれは控えめな喜び方だった。話の一段落を待って、「ところで」と話を変える。「DUK77ってなんだ?」

は?

という私の顔つきをうかがって、さらにたたみかける。「羽田空港で写真撮影のときに見かけた」と言っている。

先般のドイツ公演の際に、裏方でがんばったOGチームの名前だと説明した。現役の生徒たちだけでは、公演の運営に手が回らず、国内での演奏会のようなクオリティにならないから、有志を募って現地裏方を募集したんだ。「フットボールのチームかと思った」と切り返すブラームスさんだが、総勢11名だったということもお見通しのようだ。「何人か青いネクタイの生徒がいただろ?」一部は演奏の手助けもしたと説明した。

「それにしても天国から直行の我々とちがってお金もかかるんだろ?」と心配顔のブラームスさん。「後輩の演奏会を助けたいというピュアでまっすぐな気持ちの現れです」と答えておいた。ついでにノイシュヴァンシュタイン城にも立ち寄る強行軍だったと付け加えたら、「ああ知っているよ」と言っている。なんでも「神様お天気センター」にお願いして現地に雪を降らせたとどや顔だ。

もはや「子供たち」「生徒」といういい方は似合わない立派なレディーたちだなと、意見が一致した。

2018年7月12日 (木)

お盆のファンタジー31

「それにしても」と、ブラームスさんは話を切りだした。

「ニュルンベルクでの六重奏は素晴らしかったな」

次女の後輩たちのドイツ公演に先立って、ニュルンベルク市庁舎を表敬訪問した際に、弦楽器のトップ奏者6人がブラームスさんの変ロ長調六重奏曲の第一楽章を披露したことを言っているのだ。

「お聴きいただけたのですね?」と言い終わる前に「ブッルルァーーヴォ」と、巻き舌をやけに強調して言い放った。あんたの娘さんたちの五重奏を思い出したよと言って乾杯のしぐさ。

出発前に私も聴かせてもらったと言うと、どうだった?と聞き返してきた。「あれは私があなたの大ファンだと知っての贈り物代わりの演奏だったんですよ」と私。

折り目正しいテンポ、制御されたフォルテ、端正なフレージング、乙女らしいみずみずしさ、どれをとっても極上じゃなとブラームスさんは満足気だ。コンミスの腕前はRコルサコフで実証済みだが、取り囲む5人の温かみのある音が印象的だった。立ち上がり、チェロとヴィオラの音色で引きこまれた。とくに第一チェロは、只者ではあるまい。6度連鎖の小結尾主題を余裕しゃくしゃくで弾かれて、はっとした。ヴィオラ2本で効かせる急ブレーキからヴァイオリンデュエットに至る流れは、心憎いばかりじゃ。再現部で、伴奏に回るコンミスの難儀なオクターブは、さすがじゃな。コーダのピチカートによるレントラーには「終わらないでくれ」と思ったなどと、もうとどまることを知らない。

時間をかけたらもっとよくなりますねと私が水を向けると、いずれは全曲が聴きたいと真顔で乗り出してきた。

「その時は一度練習を見てもらえませんか?」と頼んでみた。「何度でもオーケーだ」と言って勢いよくジョッキを空ける上機嫌のブラームスさんだった。

2018年7月11日 (水)

お盆のファンタジー30

やけに早い到着のブラームスさんだ。今年は連れがいないそうだ。

「そんなことより、今年の日本は地震やら水害やらで大変らしいな」と心配顔だ。「こっちはサッカーが決壊しているがね」と自虐ネタも忘れない。ドイツ代表の惨状と、ハンブルガーSVの初降格を肴に飲もうと思ってきたらしいが、水害が気の毒でと気乗りしない様子である。神妙な顔をしている。

以前にイタリアでひどい目にあったから他人ごとではないと言いながら、仲間から預かってきたという義援金を懐から取り出した。

こういうところは律儀である。

2017年7月16日 (日)

お盆のファンタジー29

そろそろお暇をと言いながらブラームスが話題を変えてきた。「今日は大切な日なんだろ?」と。ウインクをかましてきた。「へ?」という反応のシベリウスさんを横目にブラームスさんが続ける。「来年またニュルンベルクに来てくれるための大事なミーティングがあるはずだったな」と。「わしの作品はプログラムにないようだが」

これからみんなで出かけて資料のセットを手伝うと言い出した。5月の演奏会でもパンフはさみを手伝ったから手慣れたもんだよと。昼間の出発なので送り火はなしということで話しがついた。

2017年7月15日 (土)

お盆のファンタジー28

乾杯をきっかけに、話はバッカナールに切り替わった。

口火を切ったのはシベリウスさんだ。「あのバッカナールは、コンサートの締めくくりというほかにも特別の気迫を感じたが」と素直な問題提起だ。「あれはな」とすっかり身内スタンスでブラームスさんが、説明にとりかかる。「コンクール曲と言ってな、秋のコンクールの演目じゃ。生徒たちが1年間丹精をこめた曲ということになる。昨年は、イタリア奇想曲、その前はレプレリュード、その前が謝肉祭だったろ」と。

「うちの娘はその前でボロディンでした」と私が付け加えると、ブラームスさんは、「その前はショスタコ某だった。わしの作品はかすりもせんがな」と自嘲気味だ。「それは先生の作品だと出番のない生徒が出るからですよね」とひとまず慰めるシベリウスさんだが、乙女たちの気迫の理由はその歴史にある。伝統のコンクール曲だとみんなの意見が一致した。

指揮者の病気はオケの一大事で、一時はどうなるかと思ったら、「指揮なしバッカナール」で入学式を切り抜けるとは、発想が新しいなとブラームスのドヤ顔が止まらない。「ナマで聴きたかった」とシベリウスさんも興味津々だ。あの曲が指揮なしでも演奏できるほど、完成してるってことなんだが、あれを切り抜けて一段とアンサンブルの精度が高まったとブラームスさんは慎重に断言した。

清冽な弦のピチカート一閃から難儀なオーボエのドソロが始まって、険しい道を上り詰めたところ中間部の清らかな景色こそがバッカナールの白眉だ。そこを際立たせるために周囲の部分が逆算されているという構想が素晴らしいとシベリウスさんがブラームスさんに同意を求めた。テンポもダイナミクスも全て計算ずくで配置されているのだろうが、聴いている限りはとても自然じゃなとブラームスさん。最後にテンポを煽るところは、わかっていても感動させられます。術中にはまる感じ。3時間30分のコンサートの最後に、あの煽りについていく余力が素晴らしい。

二人ともすっかり盛り上がって私の出る幕はない感じ。

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