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カテゴリー「079 人名辞典」の43件の記事

2017年7月 2日 (日)

ヴァイオリニストの系譜

古今の大ヴァイオリニストを列挙論評する記事ではないことを予めお断りする次第である。

ドイツ語でヴァイオリニストは「ガイガー」(Geiger)なのだが、実はもう一つ「Fiedler」と引いてもヴァイオリニストと出てくる。「Fiedler」は「Fidel」を弾く人の意味。「Fidel」は中世に存在した弦楽器でヴァイオリンの祖先にあたるという。その名残で「Fiedler」がヴァイオリニストの意味になっている。

「Geiger」と「Fiedler」どちらもドイツ人の苗字になっている。数の上では「Fiedler」が優勢で0.08%を占め、苗字ランキングの140位。「Geiger」は同ランキング180位で、0.06%を占める。

興味深いことに、この両者は地域で棲み分けられている。ドイツ南部は「Geiger」で北部が「Fiedler」だった。ルクセンブルクとの国境に近いトーリアから、チェコのプラハに向かって東西の直線を引く。その線がチェコとの国境に到達したら、真南に折る。この線以南と以西で「Geiger」が優勢となる。

ちなみにオーストリアでもウィーンを含む東部は「Fiedler」で、ザルツブルク以西は、スイスまで含めて「Geiger」だ。

語尾に「er」を伴っているが、これは産地語尾ではない。英語とも共通する「~する人語尾」だ。

2017年6月30日 (金)

キッシンジャー

ヘンリー・キッシンジャーはアメリカの政治家で、ニクソン、フォードの両大統領の時代に国務長官を務めた。1923年5月27日ドイツ・バイエルン州フュルトの生まれだ。

そのバイエルン州の北部にバートキッシンゲンという、古くからの温泉保養地がある。原文では「Bad Kissingen」とつづる。地名語尾「ingen」だ。これに産地語尾「er」をつける場合、お約束で末尾の「en」を取り除いてから「er」をつける。つまり「Kissinger」だ。

まさにキッシンジャー元国務長官と同じつづりになる。彼が生まれたフュルトは、地名語尾「ingen」と「ing」のすみわけで申せば、「ing」地区になる。おそらく祖先の誰かが「キッシンゲン」に関係があるかもしれない。

2016年9月24日 (土)

皇帝列伝

ブラームスがシチリアを旅行した際、パレルモでホーエンシュタウフェン朝の廟所を訪ねたと書いた。おそらくそのときブラームスの脳裏には神聖ローマ帝国が去来していたに違いない。

  • 01 オットー1世
  • 02 オットー2世
  • 03 オットー3世
  • 04 ハインリヒ2世
  • 05 コンラート2世
  • 06 ハインリヒ3世
  • 07 ハインリヒ4世
  • 08 ハインリヒ5世
  • 09 ロタール3世
  • 10 コンラート3世
  • 11 フリードリヒ1世(赤髭王)
  • 12 ハインリヒ6世
  • 13 フィリップ
  • 14 オットー4世
  • 15 フリードリヒ2世
  • 16 コンラート4世

<大空位時代>

  • 17 ルドルフ1世
  • 18 アドルフ
  • 19 アルブレヒト1世
  • 20 ハインリヒ7世
  • 21 ルートヴィヒ4世
  • 22 カール4世
  • 23 ヴェンツェル
  • 24 ループレヒト
  • 25 ジキスムント
  • 26 アルプレヒト5世
  • 27 フリードリヒ3世
  • 28 マクシミリアン1世
  • 29 カール5世
  • 30 フェルディナンド1世
  • 31 マクシミリアン2世
  • 32 ルドルフ2世
  • 33 マティアス
  • 34 フェルディナンド2世
  • 35 フェルディナンド3世
  • 36 レオポルド1世
  • 37 ヨーゼフ1世
  • 38 カール6世
  • 39 カール7世
  • 40 フランツ1世 マリアテレジアの夫
  • 41 ヨーゼフ2世
  • 42 レオポルド1世
  • 43 フランツ2世 ナポレオンの皇帝就任で神聖ローマ帝国の終焉。

上記が神聖ローマ帝国の皇帝のリスト。ブラームスが思いを馳せたホーエンシュタウフェン朝は赤文字で示した7名。そしてそれに続く大空位時代の後、ルドルフ1世がハプスブルク家最初の皇帝。青文字がハプスブルク家出身の皇帝。紫文字はハプスブルクロートリンゲン朝だ。ブラームスの脳味噌にはこのくらいの情報はきっちりと刷り込まれていたと思われる。

2016年9月17日 (土)

ゲルマニクス

ローマ帝国皇帝の名前はやたらと長い。本名に加えて家名や様々な称号が連結されているからだ。たとえば、トラヤヌスは以下の通りだ。

  1. インペトラル 大将軍、最高司令官の意味
  2. カエサル 本来カエサルはユリウス・カエサルの家族名だが、皇帝たちによって世襲
  3. ティウイ 「ティウィ・ネルヴァエ・フィリウス」で「神格化されたネルヴァの息子」の意。
  4. ネルヴァエ
  5. フィリウス
  6. ネルヴァ 「ネルヴァ・トラヤヌス」で本名。
  7. トラヤヌス
  8. オプティムス 「最上」を表す特別の敬称。
  9. アウグストゥス 「尊厳なるもの」の意味。個人名のすぐ後に来る。事実上の「皇帝」の称号。
  10. ゲルマニクス 目覚しい戦勝を記念して称号化される。対ゲルマン戦の勝利。
  11. ダキウス 同上。対ダキア戦の勝利。
  12. パルティクス 同上。対パルティア戦の勝利。
  13. ポンティフェクス 「ポンティフェクス・マクシムス」で「大神祇官」
  14. マクシムス
  15. トリプニキアエ 「トリピニキアエ・ポテスタティスⅩⅩⅠ」で「護民官21年」。即位と同時に護民官に就任し、毎年更新されるから、トラヤヌス帝の在位年数が21年と判る。
  16. ポテスタティスⅩⅩⅠ
  17. インペラトルⅩⅢ 戦勝に際する歓呼の声を受けた回数。この場合13回。
  18. コンスルⅥ 執政官。共和制時代の名残り。任期2年を6期務めた。
  19. パテル 「パテル・パトリアエ」で「国の父」。特別の功労があった皇帝に贈される。
  20. パトリアエ

このうちの10番目のゲルマニクスが気になる。長い称号の中にゲルマニクスが含まれる皇帝は大変多い。シーザーが属州化して以来平穏だったガリアでは、戦は起きなかったので、それを鎮圧することもなく「ガリウス」の称号は発生しない。ゲルマニクスの称号が多いということは、しばしばゲルマン人が反乱したからだ。

元々28あったローマ軍団は、トイトブルクの戦いでアルミニウスに惨敗して3軍団を失った。残った25軍団のうち、8軍団がライン河畔、7軍団がドナウ河畔に置かれた。対ゲルマンの国境警備がいかに重視されていたかがわかる。即位後の皇帝がハクをつけるためにゲルマニアに親征し、大勝を演じて大袈裟に凱旋することが、しばしばあった。

皇帝の名前にゲルマン由来の言葉が混入するのはこのためだ。

2016年9月13日 (火)

黄色

トイトブルクの大敗の後、ローマ人は対ゲルマン政策を改めた。ゲルマン人を武力で屈服させることを諦め、離間による安定を志向するようになる。ゲルマン人の中の「親ローマ派」を取り込んで、内部対立を煽ることで漁夫の利を得ようとするものだ。だからゲルマン人同士の戦いが増えてくる。

トイトブルクの戦いの後、ヴェーサー川ほとりでケルスキー族とローマが再びにらみ合った時、英雄アルミニウスの弟がローマ側についていた。小競り合いにとどまって合戦にまでは至らなかったとされているが身内の争いは少なくなかったのだ。

アルミニウスの弟の名がローマ側の記録に残っている。「Flavus」というのだ。語感からしてゲルマン風ではなくラテン語のノリが感じられる。「Flavus」とはラテン語で「黄色い」という意味だ。本名ではなく単なるニックネームかもしれない。

落花生に発生するカビにより猛毒アフラトキシンが生成される。このカビの学名が「Aspergilus Flavus」という。アルミニウスの弟と同じ名前だ。毒素アフラトキシンは、カビの学名「Aspergilus Flavus」の頭文字に、毒を表す「Toxin」をくっつけた合成語である。カビの学名になら「Flavus」も悪くないが、人の名前としてはややかわいそうな気がする。

2016年9月12日 (月)

アルミニウス

Arminius(BC16~AD21)は、ゲルマン民族の一派ケルスキー族の王。ケルスキー族の本拠地は現在のデトモルトのあたりとされている。ブラームスの最初の就職地だから、ケルスキー族の話くらいはきいたことがあるかもしれない。

アルミニウスの親の代以前にローマに屈服したこともあり、当時の習慣としてローマで教育を受けた。シリアでの勲功により騎士に列せられるとともにローマ市民権を獲得した。市民権の獲得には皇帝の同意が必要だから、アルミニウスの器量がうかがい知れる。当時の皇帝はアウグストゥスだ。

やがてゲルマーニアの司令官ヴァルスの信頼厚い部下となるが、ゲルマーニアの属州化の意図を知り謀反。ヴァルスの信頼を逆手にとって巧妙な罠を仕掛け3万のローマ軍を全滅させた。世に名高い「トイトブルクの戦い」だ。ローマ人からゲルマンの独立を守ったと評価され、ドイツにおいては英雄視されている。

アルミニウスという名前はいかにもラテン語風だ。彼の名は元々「ヘルマン(Hermann)」だったのを、ローマ人が勝手にラテン語風に言い換えていたとも伝えられる。宗教改革で名高いルーターは、アルミニウスに心酔し時代の辻褄を無視して、アルミニウスに「Hermann」という洗礼名を与えた。民衆への布教にアルミニウスのカリスマ性を利用しようとしたらしい。

さて1775年、ドイツ帝国成立の4年後、デトモルトにアルミニウスの像が建立された。トイトブルクの合戦の勝利を記念するものだ。当時はトイトブルクの正確な位置が解明されておらず、ケルスキー族の本拠と目されたデトモルトに建てられたという経緯がある。

デトモルトに着任したブラームスは当然この像を見ていたはずだ。

2016年8月11日 (木)

人名辞典総集編

人名辞典総集編をお届けする。

  1. 2016年06月21日 人名事典
  2. 2016年06月22日 人名事典【女性名】
  3. 2016年06月23日 人名事典【男性名】マ行ヤ行ラ行ワ行
  4. 2016年06月24日 人名事典【男性名】ハ行
  5. 2016年06月27日 人名事典【男性名】カ行サ行タ行ナ行
  6. 2016年06月28日 人名事典【男性名】ア行
  7. 2016年07月01日 ヨーロッパ人名語源辞典
  8. 2016年07月02日 カタカナとの落差
  9. 2016年07月03日 コミッショナーの名前
  10. 2016年07月05日 2つのカール
  11. 2016年07月07日 バラモン
  12. 2016年07月08日 カルロス・ブリトー
  13. 2016年07月09日 恋人の名前
  14. 2016年07月19日 ヨハンだらけ 
  15. 2016年07月20日 ヨハネスの由来
  16. 2016年07月21日 ロンメル将軍
  17. 2016年07月22日 ヨハネスコッホ
  18. 2016年07月23日 ヨハネス23世
  19. 2016年07月24日 教皇の名前
  20. 2016年07月25日 教皇の本名
  21. 2016年07月26日 本名ヨハネス
  22. 2016年07月28日 三大ヨハネス
  23. 2016年07月29日 欧州の君主たち
  24. 2016年07月30日 王のあだ名
  25. 2016年07月31日 電話帳から
  26. 2016年08月01日 電話帳の力
  27. 2016年08月03日 聖ゲオルギウス
  28. 2016年08月04日 ゲオルク2世
  29. 2016年08月07日 FAMILIENNAME
  30. 2016年08月08日 著名日本人
  31. 2016年08月09日 苗字辞典の隙間 
  32. 2016年08月11日 本日のこの記事

2016年8月 9日 (火)

苗字事典の隙間

先ごろ買い求めたDUDEN「FAMILIENNAME」は20000の苗字が960ページに収められた大著。音楽関係、歴史上の人物、サッカー選手など考え付く限りのドイツの苗字を引いて遊んでいる。大抵載っていてうれしいのだが、むしろ意外な人物が載っていないこともあり、載っていない側も大変に興味深い。

  1. Moltcke 帝国創設の功臣モルトケ元帥が掲載されていない。
  2. Herzogenberg リーズルの嫁ぎ先が載っていないとは。
  3. Hindenburg これもまた戦前の大物政治家。
  4. Hitler 最大の驚きはこれだ。何らかのバイアスを感じる。

2016年8月 8日 (月)

著名日本人

先ごろ入手したDUDEN社「FAMILIENNAME」の巻末には、グローバル化への対応と称して、主要な外国人の苗字も収載されている。その数およそ700だ。ここに3名の日本人名がある。

  1. 大江健三郎
  2. 小澤征爾
  3. 三島由紀夫

この3名を選ぶという選考基準が興味深い。文学音楽の分野での巨匠であることは間違いない。2005年の刊行なので「香川真司」や「沢穂希」は間に合っていないのだ。ましてやドイツでは「ICHIRO」は取り上げられにくかろう。

2016年8月 7日 (日)

FAMILIENNAME

「FAMILIENNAME」とはつまり「苗字」のことだ。ドイツDUDEN社刊行されている「FAMILIENNAME」という書物が今回の人名特集の参照資料の根幹だ。ドイツの苗字がおよそ20000も収録されている。

苗字の起源由来に加え、その苗字を背負った著名人への言及などきめ細かだ。難を申すと全てドイツ語だということだが、電子辞書片手にページをめくっているだけで飽きが来ない。今回の人名特集の基礎資料としても重宝していいる。

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