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カテゴリー「074 地名語尾」の130件の記事

2017年7月 1日 (土)

ドイツ系アメリカ人

昨日、キッシンジャー元国務長官がドイツの出身だと書いたばかりだが、ドイツからの移民を先祖に持つアメリカ人のこと。これがちっとも舐めたモンではなくて、場合によっては米国民の20%と見積もる人もいる。ペンシルバニア州や五大湖沿岸を中心に北東部に多く住んでいる。

独立戦争の際、英国軍にはヘッセンの出身者が多かった話を思い出した。19世紀までに10万人がアメリカに渡ったとされている。アイゼンハワー大統領の名前も何やらドイツっぽい。

メジャーリーグやフットボールの中継を観ていてもドイツっぽいと感じる名前が出てくる。たとえばニューヨークヤンキースの永久欠番3番と4番だ。3番ベーブルースの本名はGeorge Herman Ruth だ。ドイツ風に読むと「ゲオルグ・ヘルマン・ルート」で、最後の「Ruth」は、開墾地を表す「Reuth」や「Roth」との関係を伺わせる。4番はルーゲーリッグだ。Gehrigという綴りがいかにもな感じである。

かの地では「ドイツ訛りの英語」あるいは「英語訛りのドイツ語」が話されている。ドイツ語の一方言として捉える研究者もいるらしい。

2017年6月30日 (金)

キッシンジャー

ヘンリー・キッシンジャーはアメリカの政治家で、ニクソン、フォードの両大統領の時代に国務長官を務めた。1923年5月27日ドイツ・バイエルン州フュルトの生まれだ。

そのバイエルン州の北部にバートキッシンゲンという、古くからの温泉保養地がある。原文では「Bad Kissingen」とつづる。地名語尾「ingen」だ。これに産地語尾「er」をつける場合、お約束で末尾の「en」を取り除いてから「er」をつける。つまり「Kissinger」だ。

まさにキッシンジャー元国務長官と同じつづりになる。彼が生まれたフュルトは、地名語尾「ingen」と「ing」のすみわけで申せば、「ing」地区になる。おそらく祖先の誰かが「キッシンゲン」に関係があるかもしれない。

2017年6月29日 (木)

産地語尾

ニュルンベルク特産のこぶりのソーセージは「ニュルンベルガー」と呼ばれている。ウィーン名物のホイップを浮かせたコーヒーは「ウインナコーヒー」だ。ファストフードの王者はハンバーガーで、元々は「ハンブルガー」だ。

つまりこうだ。

地名の後ろに「er」を添えることで、地名が形容詞化するのだ。だから「er」を産地語尾と呼ぶことにしている。

名高いオケ、ベルリンフィルは本来「ベルリナーフィルハーモニカー」だし、ウィーン名物のワルツは「ウインナワルツ」である。意外と頻繁に使われているものだ。ミュンヘン北郊の名高い小麦ビール産地はエルディングだから、そのビールは「エルディンガー」となるなどビールのブランド名はほぼこのパターンである。

ところが、大きな例外がある。

ゲッティンゲンに産地語尾「er」をつける場合には語尾の「ingen」の末尾「en」を取り除いてから「er」をつける。「ゲッティンゲナー」とならずに「ゲッティンガー」となる。これは地名語尾「インゲン」をともなう地名に共通する特徴だ。不思議なことに語尾に「en」を伴う「ドレスデン」は、「ドレスデナー」だ。語尾の「en」が必ず脱落するわけでもないところが悩ましい。

産地語尾[er」を付与する場合、地名語尾「イングとインゲン」では、出来上がりに差がないということだ。

2017年6月24日 (土)

線の一致

地名語尾の分布図を何枚か引用した。

地名の出現それ自体は点である。地名語尾の出現に濃淡の偏りがあることを直感として気づいていたが、これを客観的に捉えたくて、道路地図の巻末索引を頼りに図上にプロットした結果、分布が目に見えるようになった。

分布図には点の集合の結果、いくつかの線が確認できた。そうした線のいくつかが、方言分布地図に現れる境界線と一致する。

地名と方言に深い関係がある証拠である。地名は命名当時の現地方言を色濃く反映する。

2017年6月23日 (金)

イングとインゲン

道路地図の巻末索引を頼りに、地図上にプロットする作業は本当に楽しい。かれこれ80種の地名語尾についてやってみた。地名の数が少ないと散漫な結果になるにはなるのだが楽しさは無限だ。

地名語尾として「~のところ」を意味する「イング」と「インゲン」にも鮮やかなすみわけがある。ブラームスとの交流で名高い「マイニンゲン」も、アガーテと出会った「ゲッティンッゲン」もドナウ川の水源として名高い「ドナウエッシンゲン」も「インゲン」の仲間だ。

まずはそのインゲンの分布から。

20170609_104434
これは、先に話題にした「ザーレの東」には分布しないというパターンだ。ラインの西、ドナウの南と断言できないところもいわくありげで楽しい。まずこれをご記憶いただいたうえで「イング」の分布を示す。

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ミュンヘン近郊に分布する。バイエルン方言の分布と鮮やかにシンクロする。小麦ビールで名高い「エルディング」が思い浮かぶ。

2017年6月21日 (水)

大胆過ぎる仮説

グリム兄弟が編んだ「ドイツ伝説集」下巻に登場する話の舞台が、ドイツの南部か西部に偏っている話は既にしておいた。その領域がカール大帝の勢力圏と一致する可能性については、グリム兄弟自身が序文で言及している。いやはや、この序文は面白い。本文に負けないくらい貴重な情報が埋もれている。

既に私は地名語尾「heim」の分布が、カール大帝に何らかの関係があるのではないかと述べた。本日はそこから話を一歩進める。

「ドイツ伝説集」下巻収載のエピソードの分布域と、地名語尾「heim」の分布域が似ているのだ。どちらも南あるいは西に手厚い。ドナウ・ライン両大河の流域に分布する。

2017年6月20日 (火)

ハイムとハウゼン

「Heim」「Hausen」どちらも「家」を意味する。ドイツ語のネイティブな使い手でもない限り、これらの区別は難しい。これらが地名末尾に据えられるケースがある。「インゲルハイム」「ザンクトゴアハウゼン」などだ。

例によって毎度毎度の道路地図の巻末索引を頼りに分布図を作成した。まずは地名語尾「heim」から掲示する。

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見ての通りだ。南部とりわけライン川流域、ワインの産地で言うラインヘッセンに特異的に分布する。カール大帝の御所があったインゲルハイム近郊にと申したらお叱りを頂戴するだろうか。

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次いで地名語尾「hausen」の分布。「heim」とのすみわけが美しい。地名語尾「ハイム」の密集域(赤囲み)が見事に空白になっている。

「蝸牛考」に従うなら、インゲルハイム近郊が「京都」だ。あとから起こったハイムに、旧来のハウゼンが駆逐され、僻遠の地に残るという図式が容易に思い起こされる。

こうした地名の分布が何らかの歴史的事実や方言分布の反映でないとしたら恐ろしい。

2017年6月19日 (月)

地名語尾bachの分布

惚れ惚れとはこのことだ。ドイツFALK社製20万分の1ドイツ道路地図の索引中にある地名語尾「bach」の所在を調べた。684箇所5,53%が地名語尾「bach」を伴っている。この数と比率は「dorf」に次ぐ二番手である。そして驚くべきはその分布だ。地名語尾「bach」は先に紹介した「ベンラート線」以南に集中する。例外は無い。ベンラート線以北では地名語尾「beck」に取って代わる。さらにシュレスヴィヒホルシュタイン州に限っては「bek」に差し代えられる。鮮やかなものだ。

20170609_090311

一人称主格を「ich」という地区と「ik」という地区の境界がベンラート線だったことと鮮やかに呼応する。同時に「bach」の「b」を他の子音に差し替えてもベンラート線以北には出現しない。

バッハの故郷Eisenachはベンラート線の南である。

2017年6月 9日 (金)

早生まれ

1月から3月までに生まれた子供は、前年に生まれた子供たちと一緒に、一足早く小学校に入る。その子供たちのことを「早生まれ」と呼んでいる。私も早生まれだ。

ハンブルクの北北西約20kmの位置に「Quickborn」という地名がある。英語に慣れきった脳味噌には「早生まれ」あるいは「速生まれ」に読める。ハンブルクのような北ドイツには、英語からの影響も少なくないから余計怪しい。

案の定とんだ早合点で、ドイツ語で「こんこんと湧く泉」の意味だ。「born」は泉なのだ。「quick」は豊かな水量の暗示である。

先日から方言詩人クラウス・グロートについて調べていたら思わぬお宝情報にめぐり合った。グロートは多数の著作を遺した。語学文学関係だが、得意は方言だった。低地ドイツの抒情詩の研究書がその代表作なのだが、そのタイトルを見て驚いた。何と「Quickborn」だった。先の地名の所在地は低地ドイツの真っ只中な上に、彼の故郷にも近い。私がまだ知らない必然がもう1つや2つ横たわっていそうである。

2017年6月 2日 (金)

地名と方言

記事「民謡と方言」および「民話と方言」で、民謡や民話と方言の関係を話題にした。

民謡や民話は伝承の段階ではほぼ100%方言が用いられているのと同様、地名も命名した人々が共通に理解する言語の範囲内で言葉が選ばれているに決まっている。命名の場所と時期がとても重要だ。

「民話」「民謡」「地名」これらの全てが「方言」と密接なかかわりを持っている。

明日以降実例をあげてこの点を掘り下げる。

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