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カテゴリー「074 地名語尾」の127件の記事

2017年6月24日 (土)

線の一致

地名語尾の分布図を何枚か引用した。

地名の出現それ自体は点である。地名語尾の出現に濃淡の偏りがあることを直感として気づいていたが、これを客観的に捉えたくて、道路地図の巻末索引を頼りに図上にプロットした結果、分布が目に見えるようになった。

分布図には点の集合の結果、いくつかの線が確認できた。そうした線のいくつかが、方言分布地図に現れる境界線と一致する。

地名と方言に深い関係がある証拠である。地名は命名当時の現地方言を色濃く反映する。

2017年6月23日 (金)

イングとインゲン

道路地図の巻末索引を頼りに、地図上にプロットする作業は本当に楽しい。かれこれ80種の地名語尾についてやってみた。地名の数が少ないと散漫な結果になるにはなるのだが楽しさは無限だ。

地名語尾として「~のところ」を意味する「イング」と「インゲン」にも鮮やかなすみわけがある。ブラームスとの交流で名高い「マイニンゲン」も、アガーテと出会った「ゲッティンッゲン」もドナウ川の水源として名高い「ドナウエッシンゲン」も「インゲン」の仲間だ。

まずはそのインゲンの分布から。

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これは、先に話題にした「ザーレの東」には分布しないというパターンだ。ラインの西、ドナウの南と断言できないところもいわくありげで楽しい。まずこれをご記憶いただいたうえで「イング」の分布を示す。

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ミュンヘン近郊に分布する。バイエルン方言の分布と鮮やかにシンクロする。小麦ビールで名高い「エルディング」が思い浮かぶ。

2017年6月21日 (水)

大胆過ぎる仮説

グリム兄弟が編んだ「ドイツ伝説集」下巻に登場する話の舞台が、ドイツの南部か西部に偏っている話は既にしておいた。その領域がカール大帝の勢力圏と一致する可能性については、グリム兄弟自身が序文で言及している。いやはや、この序文は面白い。本文に負けないくらい貴重な情報が埋もれている。

既に私は地名語尾「heim」の分布が、カール大帝に何らかの関係があるのではないかと述べた。本日はそこから話を一歩進める。

「ドイツ伝説集」下巻収載のエピソードの分布域と、地名語尾「heim」の分布域が似ているのだ。どちらも南あるいは西に手厚い。ドナウ・ライン両大河の流域に分布する。

2017年6月20日 (火)

ハイムとハウゼン

「Heim」「Hausen」どちらも「家」を意味する。ドイツ語のネイティブな使い手でもない限り、これらの区別は難しい。これらが地名末尾に据えられるケースがある。「インゲルハイム」「ザンクトゴアハウゼン」などだ。

例によって毎度毎度の道路地図の巻末索引を頼りに分布図を作成した。まずは地名語尾「heim」から掲示する。

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見ての通りだ。南部とりわけライン川流域、ワインの産地で言うラインヘッセンに特異的に分布する。カール大帝の御所があったインゲルハイム近郊にと申したらお叱りを頂戴するだろうか。

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次いで地名語尾「hausen」の分布。「heim」とのすみわけが美しい。地名語尾「ハイム」の密集域(赤囲み)が見事に空白になっている。

「蝸牛考」に従うなら、インゲルハイム近郊が「京都」だ。あとから起こったハイムに、旧来のハウゼンが駆逐され、僻遠の地に残るという図式が容易に思い起こされる。

こうした地名の分布が何らかの歴史的事実や方言分布の反映でないとしたら恐ろしい。

2017年6月19日 (月)

地名語尾bachの分布

惚れ惚れとはこのことだ。ドイツFALK社製20万分の1ドイツ道路地図の索引中にある地名語尾「bach」の所在を調べた。684箇所5,53%が地名語尾「bach」を伴っている。この数と比率は「dorf」に次ぐ二番手である。そして驚くべきはその分布だ。地名語尾「bach」は先に紹介した「ベンラート線」以南に集中する。例外は無い。ベンラート線以北では地名語尾「beck」に取って代わる。さらにシュレスヴィヒホルシュタイン州に限っては「bek」に差し代えられる。鮮やかなものだ。

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一人称主格を「ich」という地区と「ik」という地区の境界がベンラート線だったことと鮮やかに呼応する。同時に「bach」の「b」を他の子音に差し替えてもベンラート線以北には出現しない。

バッハの故郷Eisenachはベンラート線の南である。

2017年6月 9日 (金)

早生まれ

1月から3月までに生まれた子供は、前年に生まれた子供たちと一緒に、一足早く小学校に入る。その子供たちのことを「早生まれ」と呼んでいる。私も早生まれだ。

ハンブルクの北北西約20kmの位置に「Quickborn」という地名がある。英語に慣れきった脳味噌には「早生まれ」あるいは「速生まれ」に読める。ハンブルクのような北ドイツには、英語からの影響も少なくないから余計怪しい。

案の定とんだ早合点で、ドイツ語で「こんこんと湧く泉」の意味だ。「born」は泉なのだ。「quick」は豊かな水量の暗示である。

先日から方言詩人クラウス・グロートについて調べていたら思わぬお宝情報にめぐり合った。グロートは多数の著作を遺した。語学文学関係だが、得意は方言だった。低地ドイツの抒情詩の研究書がその代表作なのだが、そのタイトルを見て驚いた。何と「Quickborn」だった。先の地名の所在地は低地ドイツの真っ只中な上に、彼の故郷にも近い。私がまだ知らない必然がもう1つや2つ横たわっていそうである。

2017年6月 2日 (金)

地名と方言

記事「民謡と方言」および「民話と方言」で、民謡や民話と方言の関係を話題にした。

民謡や民話は伝承の段階ではほぼ100%方言が用いられているのと同様、地名も命名した人々が共通に理解する言語の範囲内で言葉が選ばれているに決まっている。命名の場所と時期がとても重要だ。

「民話」「民謡」「地名」これらの全てが「方言」と密接なかかわりを持っている。

明日以降実例をあげてこの点を掘り下げる。

2016年9月14日 (水)

ライン初の架橋

ローマ対ゲルマンの国境線としてのライン川の位置付けの高さは既に何度も言及した。このライン川にはじめて橋を架けたのはカエサルだという。ローマの執政官でガリアを征服した男だ。優秀な政治家なのだが、かなり腕の立つ文筆家でもあった。彼が征服の苦労を「ガリア戦記」に残したおかげで今から2000年以上前のフランスやドイツを一部含むガリアの様子が判る。

紀元前52年頃、カエサルはライン川に橋を架けた。川底に木製の杭を打った木造橋だが、わずか10日で完成したらしい。ゲルマン人に対する示威行為で、大軍を渡河させて征服戦に打って出ることはしなかったが、ゲルマン人はこれを警戒したと思われる。すぐに火をつけて焼き払ったとされている。ライン川を防衛の最前線というカエサルの考えを裏付ける話だ。

はっきりとした場所は不明で、コブレンツあたりというのが定説らしい。当時の川幅は500m、あたりの水深は最大でおよそ8mとされている。

2016年9月10日 (土)

戦線の節約

記事「Limes」で、ローマとゲルマンの境界がライン、ドナウの両大河で形成されると書いた。これに「ローマ版万里の長城」である「Limes」が両者の国境という位置付けだった。ガリアを平定したカエサルは、少なくともライン川を越えて戦線を拡大する意図は無かったと言われている。

ところが、カエサルの養子で後継者のオクタビアヌスは、皇帝アウグストゥスになって以降、別の考えを持っていたようだ。ローマ対ゲルマンの最前線を「ラインドナウ線」から「エルベドナウ線」に押し広げたいと考えていたようだ。乱暴に申せばローマの支配地域を旧西ドイツ1個分増やすということだ。国境が東に遷移する。カエサルが手ごわいと言っていたゲルマン人を本拠地から追い出す戦争をせねばならない。アウグストゥスの妻の2人の連れ子、ティベリウスとドゥルーススの手柄で、ほぼその目論見は達成されていた。少なくとも2回、紀元前9年と紀元5年には、ローマ軍がエルベ川に到達している。

アウグストゥスのプランの裏には「ライン・ドナウ」を国境にするより「エルベ・ドナウ」を国境にする方が、最前線が100km以上短くなるという現実的な動機がある。国境警備に必要な兵員の数は、国境線の長さに比例するから、国境線が短くなれば兵員の数を削減出来る。

さらに現在のボン付近から、レーゲンスブルクまで550kmに及ぶLimesという柵を設けていたが、エルベ・ドナウの国境線にすれば、ドナウとモルダウを繋ぐ距離の柵で事足りる。おおよそ100kmの柵でOKだ。

アウグストゥスのプランはほぼ実現していたと見るべきだ。

2014年11月 4日 (火)

静寂車両

ドイツの鉄道は携帯電話が使用可能な車両と、そうでない車両に分かれている。使用可能の車両は「Handyverstarker」(aはウムラウト)という一方で、禁止の車両つまり静寂車両は「Ruhebereich」と呼ばれている。

ここにも出てきた。第一交響曲初演の地カールスルーエの語尾が「ruhe」で「休息」の意味だった。携帯電話使用禁止を意味する言葉が「Ruhe」とは驚いた。「Ruhe」の語感がより深く認識できた。

2年前次女たちの欧州公演をおいかけてドイツに行った際、自由時間を利用してICEに乗車した。これはその時に撮影した写真。つまり2年前にこの記事の構想がすでにあったということ。その時にすでに2014年11月4日第一交響曲初演記念日の記事と決めていた。我ながら周到。

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