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カテゴリー「093 バロック」の72件の記事

2021年2月16日 (火)

ノーインジケーション

「No Indication」だ。バッハやヴィヴァルディに限らずバロック時代の作品を収めたCDのブックレットを眺めているとよく見かける。楽章ごとにトラックがあてがわれている中、楽章冒頭にテンポを指定する用語が配置されていないことがあるからだ。

ブラームスにおいては楽章冒頭に「Allegro」「Andante」など楽語が配置されるのが普通だ。むしろ必須でさえある。ベートーヴェンやモーツアルトにしても同様だ。

ところが、バロックになるとかなりな数の「無表示」が存在する。無表示とまでいかなくても、表示がテンポや表情の指定になっていないケースもある。「Allmande」「Corente」「Sarabando」など、舞曲名称だけでテンポ指定がない場合もある。各々の舞曲には慣習に由来する標準的なテンポがあり、その慣習から逸脱する場合に限って、テンポ用語が付与されるのかとも推測するが不可解。

思い当たることと言えば、バロック時代には作曲と演奏が未分化だったことだ。作曲家自身が演奏する場合、テンポ表示など書かなくてもわかるのだ。けれどもこの解釈は「それなら全部書かなければいい」という指摘に反論できない。

譜面をよくみれば非常識なテンポになるはずがないという類の確信の存在、いわば「音楽的な常識」が透けて見える。「コンチェルト」の体裁が「急緩急」の3楽章形式として確立して以降、テンポ表示はますます不要になった感がある。直感で申し訳ないが、コンチェルトの第一楽章に「無表示」が多い気がしている。

ブログ「ブラームスの辞書」としては無表示は困る。作曲家の意思表示としての音楽用語を分析することこそが、「ブラームスの辞書」という発想の根源だからだ。無表示はお手上げとも映るが、無表示の出現状況を作曲家別、曲種別に集計すると何かわかるかもしれないとは思うが未着手である。

 

 

2021年2月15日 (月)

生没同日

誕生日と命日が一致することだ。

ミヒャエル・プレトリウスは1571年2月15日生まれで1621年2月15日に没しているから、まさに「生没同日」だ。生まれの方には「?」マークもついている。著名な作曲家ではあまり見かけないから貴重である。

本日生誕450年にして没後400年のダブルメモリアル。

 

 

2021年1月26日 (火)

楽器の法王

かつてピアノを楽器の王様と認定しながら、人の声の優秀さを話題にした。ところがメンデルスゾーンは、オルガンを「楽器の王様」と断言しているらしい。

このところバロック特集を展開する中で新たな考えが浮かんだ。オルガンには発音後の減衰を伴わぬというセールスポイントがあるし、歴史は控えめに見積もってもピアノの数倍はある。

かといって、「楽器の王様」の称号をピアノから剥奪するのも乱暴だと思い一計を案じて良いことを思いついた。オルガンを「楽器の法王」に認定する。単に「王」だと俗界のトップという感じがするが、「法王」だと聖界の長というニュアンスがこもる。「皇帝」となると「王」より上っぽくてややこしい。オルガンの来歴を考えると、信仰と密接不可分だ。「法王」という提案にはその含みもある。

「オルガンのイメージはどうみてもプロテスタントでしょ」という突っ込みを受ける覚悟だけは出来ている。「法王」というとローマに住んでいるイメージがあるけれど、「楽器の法王」は是非ともリューベックかハンブルクにお住まいいただきたい。

2021年1月 7日 (木)

バロック特集の収穫

バロック特集を企画したキッカケは、ブラームス自身が持つ古い音楽への細やかな愛情だ。古楽譜収集家あるいは校訂者としての深い知識は、まさにそれらの音楽への愛情に立脚している。

ブラームスとバッハの浅からぬ関連を元に、まずはバッハ特集をと思い立ったのだが、そのバッハの記事を備蓄する中から、少なからぬ量のヴィヴァルディネタが派生した。ヴィヴァルディの創作の基幹的な領域であるヴァイオリン作品を切り口にイタリアンバロックへの興味が広がるのにさしたる時間はかからなかった。

そこで見たのは、当時の音楽の中心地にして最先端のイタリアの威光だった。

ソナタ形式を頂点に据えて、欧州に君臨したかに見えるドイツ音楽を、イタリア側から眺める感じだ。イタリアから見ればドイツ音楽は国民楽派でしかないという確信めいた衝撃が走った。走りはしたのだが、ドイツ音楽の価値は減ずるはずもなく、単に視野が広がる結果となった。そして興味は同時代のドイツ音楽、いわゆる「ドイツバロック」に向かう。

ブラームスとバロックの最大の接点としてのオルガン音楽を起点に、コラール全体に間口が広がった。

一方でイタリアとの比較を容易にするため、ヴァイオリンも切り口に据えたことは、よい判断だった。ヴィヴァルディ、ヴェラチーニ、ジェミニアーニ、タルティーニらまばゆい巨星たちに対して何ら遜色なき多彩な個性に気づかされたのも大収穫と申してよい。その成果の一端は今後順次披露させていただくこととする。

ヴィヴァルディやタルティーニにとっての「四季」や「悪魔のトリル」と同様に、「カノン」にとどまらぬパッヘルベルの魅力にも気づかされた。ブクステフーデ、ワルター、エルレバッハ、ビーバー、シュメルツァーとヴァイオリン音楽をキーに次々と間口が広がった。一部チェンバロ作品にも興味が拡大した。

そして忘れてはならぬテレマン。当代随一の人気作曲家だったわけが理解できた。

こうしてバロック漬けとなった脳味噌で聴くブラームスには別の魅力が宿ることとなった。これは確信だ。より深いバロック音楽への興味と理解の上にブラームスを聴く喜びは格別である。

 

 

2020年12月 3日 (木)

ブクステフーデのSleeper's Awake

バッハのカンタータ「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」BWV140の初演日が、とても珍しい三位一体節第27の主日だった周辺を調べて興味深いCDを入手した。

ドイツ語原文で「Wachet auf,ruft uns die Stimme」というカンタータをブクステフーデも作っていた。「BUXWV100」と「BUXWV101」の2作だ。後者には偽作説も取り沙汰されている。

バッハのBWV140は、下記の7曲からなりたつ。

  1. Coro Wachet auf,ruft uns die Stimme
  2. Recitativo
  3. Aria
  4. Choral  Zion hort
  5. Recitativo
  6. Aria
  7. Choral  Gloria sey dir gesungen
これに対してブクステフーデの2作は、どちらも下記の構成だ。
  1. Coro Wachet auf,ruft uns die Stimme
  2. Choral  Zion hort
  3. Choral  Gloria sey dir gesungen

バッハの構成からレチタティーヴォとアリアを除いた形だ。

ブクステフーデがリューベックのマリア教会のオルガニストだった時代に演奏されたものと思われる。1668年から1707年の在任中、復活祭が3月26日以前だった年は、4回だけだ。1674年、1690年、1693年、1704年である。このうちのいずれかまたはすべてで演奏されていた可能性が高い。

 

 

 

 

2020年11月28日 (土)

Sleeper's Awake当たり年

「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」というカンタータは、三位一体第27の主日に演奏されるのだが、復活祭が3月26日以前の年にしか存在しないと述べた。復活祭が3月26日以前になることがどれほど珍しいのか実感するために、「復活祭が3月26日以前だった年」を1650年にさかのぼって調べた。

  1. 1663
  2. 1674 11年ぶり
  3. 1690 16年ぶり
  4. 1693 3年ぶり
  5. 1704 11年ぶり
  6. 1731 27年ぶり
  7. 1742 11年ぶり
  8. 1758 16年ぶり
  9. 1761 3年ぶり
  10. 1769 8年ぶり
  11. 1780 11年ぶり
  12. 1788 8年ぶり
  13. 1799 11年ぶり 
  14. 1815 16年ぶり
  15. 1818 3年ぶり
  16. 1826 8年ぶり
  17. 1837 11年ぶり
  18. 1845 8年ぶり
  19. 1856 11年ぶり
  20. 1883 27年ぶり
  21. 1894 11年ぶり
  22. 1913 19年ぶり
  23. 1940 27年ぶり
  24. 1951 11年ぶり
  25. 1967 16年ぶり
  26. 1978 11年ぶり
  27. 1989 11年ぶり
  28. 2008 19年ぶり

未来についても調べた。

  1. 2035 27年ぶり
  2. 2046 11年ぶり
  3. 2062 16年ぶり
  4. 2073 11年ぶり
  5. 2084 11年ぶり
  6. 2103 19年ぶり
  7. 2119 16年ぶり

出方はやはりランダムかとも思うが、奇妙なこともある。ランダムにしては「11年ぶり」が多いような気がする。バッハの「BWV140」の初演は赤文字にしておいた1731年である。

2年連続は1度もない。間隔でいえば3年、8年、11年、16年、19年、27年に限られるのは興味深い。現在は次の2035年までの「27年ぶり」の中にいる。つ、つ、つまりブログ「ブラームスの辞書」のゴール2033年5月7日のブラームス生誕200年までの間に一度も出会わぬということだ。さらに「ブラームスの辞書」の開設まで遡っても2008年が一度きりだ。

 

 

 

2020年11月21日 (土)

ブリティッシュバロック

ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」という作品は、パーセルの主題が変奏されることで成り立つ。極論するなら日本人のパーセル観は、この一点に集約されると申していい。中学時代の音楽の時間に聴かされる。

バッハより26歳年長の1659年生まれで1695年に没している。享年36歳は当時としても短命だろう。

食わず嫌いはいけない。ソナタにはまっている。

11月21日はパーセルの命日だ。

 

 

 

 

 

 

2020年10月23日 (金)

Allegro ma poco

「快速に、けれど少しだけ」とでも解するのだろうか。

ルクレールの「2つの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ」に出現する。op3とop7各6曲ずつ、合計41楽章のうち、4つの楽章冒頭に鎮座する。

  1. op3-1 第2楽章
  2. oo3-5 第1楽章
  3. op7-1 第1楽章
  4. op7-2 第1楽章

作曲者ルクレールはフランス人だ。ネイティヴのイタリア語ユーザーではないから何かの間違いかとも思うけれど、これだけあるのだからそれなりの意図の反映に違いない。プレーンの「Allegro」より遅いと思うがどうだろう。同じ曲集に「Allegro ma non troppo」「Allegro non presto」「Allegro moderato」も使われている。「Allegro+抑制語」が非常に多彩だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月22日 (木)

ルクレール

バロック時代フランスにおけるヴァイオリン音楽の大家。記事「英仏西日照り」で、バロック時代のフランスにおけるヴァイオリン作品の不毛を嘆いたが、このひとは例外だ。コンチェルトやソナタがある。何よりも「2つの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ」全12曲がおすすめ。とにかく楽しい。おしゃれだ。無伴奏ヴァイオリン2本によるシンプルな編成ながら飽きさせない。

1864年10月22日パリのすまいで他殺体で発見された。

2020年10月20日 (火)

カール6世

神聖ローマ皇帝、というよりマリア・テレジアの父。即位前にスペイン継承戦争が起き、没後すぐにオーストリア継承戦争が起きた。1740年10月20日狩猟先で急死した。今日は命日だ。

ヴィヴァルディはカール6世に謁見したこともあるし、作品を献呈している。カール6世を頼ってウィーンに出たものの、その急死によりオペラ上演にも暗雲が立ち込める中同地にて没した。

三十年戦争以降、退潮傾向にあったとはいえ、神聖ローマ皇帝に謁見できたヴィヴァルディは大したものである。晩年にフリードリヒ大王にお目通りかなったバッハの事例と好一対だ。

 

 

 

 

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