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カテゴリー「093 バロック」の78件の記事

2021年4月25日 (日)

聖マルコの日

本日4月25日は聖マルコの日だそうだ。キリスト教は一神教なのだが、その代わりに願い事の業務分担があると見えて、何かにつけて守護聖人がついてまわる。聖マルコもそうした聖人の一人で、ペテロの命でアレクサンドリアに出向いて布教しその地で没した。

828年イスラム教徒の支配下となっていたアレクサンドリアから、ヴェネチアの商人がマルコの遺骸を持ち帰った。異教徒の手から取り戻しということだ。その遺骸を祭る教会こそが、世に名高いサンマルコ寺院である。だから聖マルコは、ヴェネチアの守護聖人になっている。4月25日ヴェネチア人たちは特別なお菓子「マルコのパン」を食べるという。ドイツ・リューベック市の名物である「マジパン」の起源である。

ヴィヴァルディの父親は、聖マルコ寺院のヴァイオリン弾きだった。

 

 

 

 

2021年4月19日 (月)

トリオの人数

ブラームスの時代、「トリオ」と言えば「三重奏」だ。ピアノ、ヴァイオリン、チェロのピアノトリオが代表格である。しかしバロック時代となるとそうはいかない。バロック時代に好まれたのはトリオソナタなのだが、編成には必ずしも決定版がない。それどころか演奏者の数も「3」とは決まっていない。「トリオ」は「3つの楽器」「3人の奏者」を意味しておらず「3つの声部」の意味だ。

「旋律楽器2つと通奏低音」の意味である。「通奏低音」に複数の奏者が据えられることもあるおかげで、「3人」にならないケースが多い。一般の傾向としてトリオでいながら4人以上が志向される。

バッハのオルガン作品にもトリオソナタがある。BWV525からBWV530までの6作は、オルガニスト一人による「トリオ」だ。右手と左手と足で「3つの声部」をまかなう。あるいはBWV1014を筆頭とするヴァイオリンソナタはチェンバロの両手とヴァイオリンの3声になるなど奏者は2人となる。

なるほど空気を読んだグールドさんはピアノの両手とハミングのトリオを志向した。

2021年4月18日 (日)

ピカルディという習慣

ピカルディ終止の採用不採用がランダムで、その基準がさっぱり推測できないのをいいことに毎度毎度の妄想がある。

ピカルディ終止は短調作品のエンディングにおける常識だったのではあるまいか。「短調=ピカルディ終止」ではなかったか。作曲家と演奏家の分離が進む前、作品の出版が前提となる以前、短調作品は終止和音の第3音を半音上げるという記譜がなくても、習慣として同主長調への読み替えが行われていたのではないか。

作曲と演奏の分業が進み、作品を紙へダウンロードする習慣が広く普及するのと並行して、「楽譜通り」が何かと珍重されるようになった結果、習慣であったピカルディを記譜するようになったなどどということはあるまいか。

通奏低音が単音と数字だけを見て、他の音を即興で補うことが当たり前だったのを、19世紀以降、あらかじめ校訂者が楽譜に落としておくようになったリアライゼーションと同根とは考えられまいか。

記譜上明記されたピカルディ終止を無視して短調のまま終えることは、慎まねばならぬ一方で、記譜上ピカルディになっていない短調作品を演奏家独断でピカルディ終止に導くことには酌量の余地を認めたい。

 

 

 

 

2021年4月13日 (火)

サラダ尽くし

ブランデンブルク協奏曲第6番のフィナーレ第三楽章の話。学生時代にレッスンの集大成としてヴィオラの先生と取り組んだ。21小節目、ヴィオラ2本のソロが掛け合いを始める場面。掛け合いの入りが遅れない呪文として先生が教えてくれた。

「ポテトサラダ」「タマゴサラダ」「トマトサラダ」だ。これでサラダ尽くし。「歌ってごらん」と言われたものだ。「歌えなければ弾けないよ」と。効果は劇的だ。

各サラダのうち、「サ」にアクセントが来るというのも理にかなっている。もちろんヴァリエーションはある。「野菜サラダ」「ゴボウサラダ」でもいいのだが「ツナサラダ」「ハムサラダ」「シーザーサラダ」は使えない。素材3文字のサラダでないと具合が悪い。

 

 

2021年4月 6日 (火)

同期アンサンブル

大学3年になる2月だったかと記憶している。大学オケの同期でアンサンブルをすることになった。このときの演目がブランデブルク協奏曲第5番だった。同期の仲間のチェリストが実は達者なピアニストで、名高いチェンバロ独奏を弾きこなしてしまうほどの腕前だった。

ヴィオラを初心者で始めた私だったが頼まれて演奏に参加した。

これが初めてのバッハ演奏体験だったはずだ。

 

 

2021年3月30日 (火)

1人6役

ブランデンブルク協奏曲は、バッハの人気作品の一つだ。かなりな種類のCDが出ている。特異な編成の6番がお気に入りだと何度も書いてきた。

さてここに、「ルコンセールドナシオン」のCDがある。指揮はジョルディサヴァール。1992年の発売。珍しいのは6番の独奏者だ。2本のヴィオラ奏者を必要とするのだが、うち一人がファビオビオンディになっている。お気に入りのヴァイオリニストなのだが、ここではヴィオラを聞かせてくれるということだ。てことは、ブランデンブルク協奏曲の全6曲すべてにソリストとして出番があるということになる。3番を「独奏ヴァイオリン」と呼ぶかどうかには議論もあろうが、他の4曲ではソリストだ。1番ではピッコロヴァイオリンを操っている。

どうだろう。一人のヴァイオリニストが1番から5番まですべてに独奏を担当し、さらに6番ではヴィオラに持ち替えてという1人6役はあまり見かけない気がする。

首までどっぷりのビオンディ好きの私、脳内ビオンディ補正がかかるせいか、ビオンディの6番がすっかり気に入っている。

 

 

 

 

2021年2月16日 (火)

ノーインジケーション

「No Indication」だ。バッハやヴィヴァルディに限らずバロック時代の作品を収めたCDのブックレットを眺めているとよく見かける。楽章ごとにトラックがあてがわれている中、楽章冒頭にテンポを指定する用語が配置されていないことがあるからだ。

ブラームスにおいては楽章冒頭に「Allegro」「Andante」など楽語が配置されるのが普通だ。むしろ必須でさえある。ベートーヴェンやモーツアルトにしても同様だ。

ところが、バロックになるとかなりな数の「無表示」が存在する。無表示とまでいかなくても、表示がテンポや表情の指定になっていないケースもある。「Allmande」「Corente」「Sarabando」など、舞曲名称だけでテンポ指定がない場合もある。各々の舞曲には慣習に由来する標準的なテンポがあり、その慣習から逸脱する場合に限って、テンポ用語が付与されるのかとも推測するが不可解。

思い当たることと言えば、バロック時代には作曲と演奏が未分化だったことだ。作曲家自身が演奏する場合、テンポ表示など書かなくてもわかるのだ。けれどもこの解釈は「それなら全部書かなければいい」という指摘に反論できない。

譜面をよくみれば非常識なテンポになるはずがないという類の確信の存在、いわば「音楽的な常識」が透けて見える。「コンチェルト」の体裁が「急緩急」の3楽章形式として確立して以降、テンポ表示はますます不要になった感がある。直感で申し訳ないが、コンチェルトの第一楽章に「無表示」が多い気がしている。

ブログ「ブラームスの辞書」としては無表示は困る。作曲家の意思表示としての音楽用語を分析することこそが、「ブラームスの辞書」という発想の根源だからだ。無表示はお手上げとも映るが、無表示の出現状況を作曲家別、曲種別に集計すると何かわかるかもしれないとは思うが未着手である。

 

 

2021年2月15日 (月)

生没同日

誕生日と命日が一致することだ。

ミヒャエル・プレトリウスは1571年2月15日生まれで1621年2月15日に没しているから、まさに「生没同日」だ。生まれの方には「?」マークもついている。著名な作曲家ではあまり見かけないから貴重である。

本日生誕450年にして没後400年のダブルメモリアル。

 

 

2021年1月26日 (火)

楽器の法王

かつてピアノを楽器の王様と認定しながら、人の声の優秀さを話題にした。ところがメンデルスゾーンは、オルガンを「楽器の王様」と断言しているらしい。

このところバロック特集を展開する中で新たな考えが浮かんだ。オルガンには発音後の減衰を伴わぬというセールスポイントがあるし、歴史は控えめに見積もってもピアノの数倍はある。

かといって、「楽器の王様」の称号をピアノから剥奪するのも乱暴だと思い一計を案じて良いことを思いついた。オルガンを「楽器の法王」に認定する。単に「王」だと俗界のトップという感じがするが、「法王」だと聖界の長というニュアンスがこもる。「皇帝」となると「王」より上っぽくてややこしい。オルガンの来歴を考えると、信仰と密接不可分だ。「法王」という提案にはその含みもある。

「オルガンのイメージはどうみてもプロテスタントでしょ」という突っ込みを受ける覚悟だけは出来ている。「法王」というとローマに住んでいるイメージがあるけれど、「楽器の法王」は是非ともリューベックかハンブルクにお住まいいただきたい。

2021年1月 7日 (木)

バロック特集の収穫

バロック特集を企画したキッカケは、ブラームス自身が持つ古い音楽への細やかな愛情だ。古楽譜収集家あるいは校訂者としての深い知識は、まさにそれらの音楽への愛情に立脚している。

ブラームスとバッハの浅からぬ関連を元に、まずはバッハ特集をと思い立ったのだが、そのバッハの記事を備蓄する中から、少なからぬ量のヴィヴァルディネタが派生した。ヴィヴァルディの創作の基幹的な領域であるヴァイオリン作品を切り口にイタリアンバロックへの興味が広がるのにさしたる時間はかからなかった。

そこで見たのは、当時の音楽の中心地にして最先端のイタリアの威光だった。

ソナタ形式を頂点に据えて、欧州に君臨したかに見えるドイツ音楽を、イタリア側から眺める感じだ。イタリアから見ればドイツ音楽は国民楽派でしかないという確信めいた衝撃が走った。走りはしたのだが、ドイツ音楽の価値は減ずるはずもなく、単に視野が広がる結果となった。そして興味は同時代のドイツ音楽、いわゆる「ドイツバロック」に向かう。

ブラームスとバロックの最大の接点としてのオルガン音楽を起点に、コラール全体に間口が広がった。

一方でイタリアとの比較を容易にするため、ヴァイオリンも切り口に据えたことは、よい判断だった。ヴィヴァルディ、ヴェラチーニ、ジェミニアーニ、タルティーニらまばゆい巨星たちに対して何ら遜色なき多彩な個性に気づかされたのも大収穫と申してよい。その成果の一端は今後順次披露させていただくこととする。

ヴィヴァルディやタルティーニにとっての「四季」や「悪魔のトリル」と同様に、「カノン」にとどまらぬパッヘルベルの魅力にも気づかされた。ブクステフーデ、ワルター、エルレバッハ、ビーバー、シュメルツァーとヴァイオリン音楽をキーに次々と間口が広がった。一部チェンバロ作品にも興味が拡大した。

そして忘れてはならぬテレマン。当代随一の人気作曲家だったわけが理解できた。

こうしてバロック漬けとなった脳味噌で聴くブラームスには別の魅力が宿ることとなった。これは確信だ。より深いバロック音楽への興味と理解の上にブラームスを聴く喜びは格別である。

 

 

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