「シ」とは音階の「シ」である。ここでは第7音の意味をも含む。
夏休みも終盤にさしかかり、次女と「調性の森」をハイキングしている。8月2日の記事「今何調」で触れた通り、次女に少しずつ調性の周辺のあれこれを教え始めた。
http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2007/08/post_0666.html
調号として付与されたシャープやフラットの数から調を推定する方法からだ。話を単純にするために短調はしばらく棚上げにして長調に的を絞った。「フラットもシャープも何も付いていないときはハ長調」これが基本である。
シャープもフラットもでたらめに付いている訳ではない。付く音には規則性がある。シャープでいうとファ→ド→ソ→レ→ラ→ミという順番が崩れることはない。調を効率的に推定する場合、最後に付いたシャープがポイントだ。「最後に付いたシャープ」とはシャープ1個の時は「ファ」であり2個なら「ド」である。
「最後に付いた結果の音がシになるような調ですよ」と教えた。シャープもフラットも無いハ長調からファにシャープが付く。それでファ♯に生まれ変わる訳だが、このファ♯がシ、つまり音階の7番目になる調だということだ。ファ♯の半音上のソで始まる調ということで、正解のト長調が得られる。「シャープはシを作る記号だよ」と教えたところ、次女はカラリと解ってくれた。きっと私のDNAのせいだ。
嬉しい質問が返ってきた。「じゃあフラットはどうなの」当然の疑問だ。同じ論法で言うなら「フラットはファを作る記号」だ。「シを作る」「ファを作る」という位置づけは対照的だ。シャープが付与された音が目的とする調にあっての導音になるというのは、気持ちの問題として収まりがいい。これに比べて「ファを作る」というフラットの位置づけは奥ゆかしくて穏和だ。ハ長調にあっては第3音として扇の要だったミが、シに付与されたフラット一個のせいでいつの間にか第7音に変わるのだ。ミそのものには表面上何の変化もないだけに、知らぬ間の役割変更である。弦楽器はこのあたりのさじ加減が面白いのだ。
調を「シャープ系」「フラット系」とに分類したとき、このような役割の違いが調のキャラに反映しているような気がする。楽譜に出現するシャープやフラットがいつもこうした役割ではないが、調号として各段の左端に鎮座する場合は使える考え方である。
面白いのは「ナチュラル」だ。フラットとシャープどちらのリセットなのかで役割が変わる。フラットをリセットする時はシャープと同じ機能だし、シャープをリセットする時は、フラットと同じ機能だ。ここまで話していたら、楽器に触る時間が無くなってきた。今日のハイキングはこれまでだ。
こういう話、楽器を弾いているより面白いらしい。今度はお弁当を持って行こう。
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