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カテゴリー「119 テキスト」の108件の記事

2023年5月14日 (日)

初レチタティーヴォ

レチタティーヴォとは歌唱法の一つか。オペラ、オラトリオ、カンタータの中で、語り調で歌われる個所またはその唱方法のこと。ベートーヴェンの第九交響曲に目覚めた私のレチタティーヴォ初体験が、同曲のフィナーレで、初めてバリトンが歌い出す場所に置かれていた。当時は何のことやらさっぱりわからぬまま聴いていた。

鑑賞の中心がベートーヴェンで、ジャンルが器楽に極端に偏っていたせいで、オペラ系の知識が抜け落ちていたせいである。レチタティーヴォは、旋律を聴かせるアリアの反対概念にも見える。おいしい聞かせどころとなるアリアは、得てして歌手の見せ場であるのに対し、レチタティーヴェはストーリーや情景の説明機能の方に重心が寄っている。単純な伴奏が付与されるのが通例で、チェンバロの和音だけのこともある。

第九の見せ場のバリトンの登場のところに置かれていても、なんぞなんぞ考えもしなかった。シラーのテキストに入れ替わると同時に始まる歓喜の歌の導入でしかないとわかっていてもかっこいいレチタティーヴォであった。

2023年5月13日 (土)

歓喜と友

日本語で表記しては通じまいとばかりにドイツ語にしてみる。

  • Freude  歓喜
  • Freunde 友

似ている。「歓喜Freude」に「n」が挟まるだけで友になる。中学時代にはまった第九の終末合唱のテキストの話だ。カタカナで丸暗記を試みる中で、まず感じたのは「Freunde」が英語「Friend」に似ているということだ。ドイツ語と英語は言語学的には近いということを実感した最初の経験であった。次に感じたのは「フロインデ」と「フロイデ」の類似だ。第九で初めて声楽が現れるバリトン独唱は「オーフロインデ」とうたって始まる。ここはまだシラーのテキストではない。ほどなく始まる歓喜のメロディーからがシラーのテキストで「フロイデ シュネル ゲッターフンケン」と走り出す。「フロインデ」と「フロイデ」がいやでも対比される構造。

「歓喜」と「友」が似ているなんてかっこいいなと夢想する中学生だった。

2023年5月11日 (木)

ドイツ語初体験

話は前後する。中学生で第九に目覚めた当時、やはり断然フィナーレだった。シラーのテキストによる歓喜の歌の大合唱という、大上段へのふりかぶりっぷりが中学生の脳味噌には刺激的だった。早々に買い求めたスコアを片手に聞きまくった。

そのテキスト、意味も分からぬまま覚えてしまった。「おお友よ、こんな調べにあらず」で始まるベートーヴェン自作の部分も合わせて丸暗記。「オーフロ~インデ、ニッヒトディ~ゼテーネ」という具合だ。まだ中学生だ。義務教育上の英語の学習が始まったばかりの脳味噌に、初めてドイツ語がしみ込んでいった。偏差値の足しにならぬドイツ語なのに、なんだか楽しかった。

これが今も大好きなドイツ語初体験であった。

2021年12月23日 (木)

判定やいかに

記事「王と王子の12番歌合せ 」の判者つまりレフリーは私だ。本日は私の判定結果を公表する。

<第1組> ブラームスの勝ち

「糸を紡ぐグレートヒェン」と「永遠の愛について」という盤石の短調対決。前者が私的ベスト24から漏れていることからも明らか。

<第2組> ブラームスの勝ち

「月に寄す」「五月の夜」という「ヘルティ作詞の月夜歌合わせ」前者は比較的マイナーながら肉薄。意外な僅差。

<第3組> シューベルトの勝ち

「連祷」「サッフォーの頌歌」 遅い4拍子どうしだが、意外な大差でシューベルト。

<第4組> 引き分け

「幸福」「セレナーデ」 順当な引き分け。

<第5組> ブラームスの勝ち

「子守歌」対決。事実上の世界一決定戦かとぞ見る。

<第6組> シューベルトの勝ち

「ます」「雨の歌」、前者はピアノ五重奏、後者はヴァイオリンソナタの引用元。引用後の作品ならブラームスの圧勝だが、引用元だとシューベルト。

<第7組> シューベルトの勝ち

「水の上で歌う」「あの娘のもとへ」最愛の短調対決。泣く泣く判定。引き分けにしないのが愛。

<第8組> 引き分け

「夕映えの中で」「エーオルスのハープに」

<第9組> 引き分け

「夜と夢」「野に一人いて」 ブラームス最愛の歌曲とがっぷり四つに組んで引き分けるとは!

<第10組> シューベルトの勝ち

「ノルマンの歌」「領主フォンファルケンシュタイン」 思わぬ大差でシューベルト。

<第11組> シューベルトの勝ち

「シルヴィアに」「調べのように」 この勝負を心から楽しめる自分に乾杯。

<第12組> ブラームスの勝ち

「菩提樹」「日曜日」大接戦の末、ブラームスが差し切る。

ご覧の通り、シューベルト5勝、ブラームス4勝、3引き分け。前半終了時点でブラームスが3勝2敗1分けで折り返したが。案の定王者の貫禄で逆転。

 

 

 

2021年12月19日 (日)

詩人はいかに

昨日の記事「シューベルトの24曲 」で話題にしたシューベルト歌曲私的ベスト24についてテキストの供給状況を整理しておく。

登場するのは18名。「子守歌」はテキスト作者不明なので23曲を18人でカバーしているということだ。2作品に供給したのは以下の5名。

  1. ゲーテ
  2. ヘルティ
  3. ザリスゼーヴィス
  4. ラッペ
  5. コリン

3作に供給した詩人はいない。1作が下記。

  1. シラー
  2. ヤコビ
  3. ショーバー
  4. シューバルト
  5. マイヤーホファー
  6. シュトルベルク
  7. リュッケルト
  8. シュルツェ
  9. シュトルク
  10. シェークスピア
  11. ロホリッツ
  12. ミューラー
  13. シュレヒタ

選定中は気にかけずに行ったので、結果としてのこのバランスの良さは意外。このメンバーを見るだけでワクワクする自分がうれしい。

 

2021年12月16日 (木)

リートとドイツ三大詩人

先に話題にした「ドイツ三大詩人 」の件。ゲーテ、シラー、ハイネがそれにあたるという評価だそうだ。ゲーテとシラーはシューベルト歌曲においてはテキスト供給の1位と2位だし、シューマンの力を借りればハイネも上位に来る。ブラームスはこれらメジャー所があまり多くないというのが特徴になっている。

ドイツ三大詩人の選定に、ドイツリートへのテキストの供給状況が影響しているなどということはあるまいな。ないとは思うが誰かに先に言われるのも悔しいので記事にしておく。もし、シューベルトがクラシック音楽の中に「ドイツリート」というジャンルを創設し、その後何人かが追随しなかったとしても「ドイツ三大詩人」はこの3名だったのだろうか?

少しは影響があったほうに1ユーロ賭けたい気分である。

2021年12月11日 (土)

自作テキスト

子守唄は、テキスト作者不明なのをいいことに、もしかして「シューベルトの自作か」とはしゃいで見せた。ところが本当にテキストが、シューベルトという作品があった。

「サリエリ氏の50歳の誕生日を祝して」D407だ。

ここでいうサリエリ氏とは、アントニオ・サリエリだ。映画「アマデウス」で名高いあの人である。彼は教育者として優秀な弟子を数多輩出した。シューベルトはその一人である。師匠の50歳を祝うカンタータだ。テキストはと見るとちゃんと韻も踏んでいる。めでたしめでたしなのだが、作曲年が1816年なのはおかしい。サリエリは66歳の年にあたる。

2021年12月10日 (金)

詩人ストッカー

根拠レスな直感で申し訳ないが、一般の音楽人名事典は、歌曲のテキストの供給者の記述が薄いと感じる。作曲家と演奏家に偏っていると思う。もしかするとオペラの脚本家や演出家もそうした偏りの被害を受けてはいまいか。古今のドイツリート作品にテキストを供給した人の詳細なリストを見てみたい。そこに記載された顔ぶれを架空ながらひとまずA群と位置付ける。次に参照したいのは一般の人名辞典だ。その中の詩人のリストをめくる。そこの記載された詩人たちをB群とする。作家辞典ならなお好適なのは申すまでもない。

そらまあ話題がドイツリートである以上A群にはドイツ語の話者が並ぶのが自然だ。B群からドイツ人を抽出してC群としなければなるまい。オーストリア、スイスの人もあるいは加えてもいいこととする。

A群とC群を比べよう。詩人たちを以下のように分類する。

  1. A群にもC群にもいる。そらまあゲーテもシラーもハイネもここだ。訳詩までOKならシェークスピアもここだ。
  2. A群にいてC群にはいない。
  3. A群におらずC群にいる。生まれた時代が極端に古かったり新しかったりも影響すあるかと。
  4. どちらにもいない。数の上ではここが一番多いのかと。

断然興味深いのは2番だ。「ドイツリートのテキスト供給者としてしか知られていない詩人」という位置取り。さらにこの人たちをどの作曲家が付曲しているかで分類する。シューマンの末っ子4男フェリックスはここに入るはずだ。ブラームスが確か3曲付けている。この要領で作曲家をカウントすると、人数でも頻度でもシューベルトが多い気がする。それは歌曲作品の絶対数を考慮するにしてもだ。シューベルティアーデで交流のあった友人のテキストに曲を付けてそれが不滅の位置にいるケースも少なくない。

これがつまり詩人ストッカーだ。もちろん私の造語。妄想が止まらぬが、世はすでに芸術の秋。

 

 

2021年12月 9日 (木)

詩人大賞

ドイツの三大詩人は、ゲーテ、シラー、ハイネと言われてはいるのだが、ブラームスやシューベルトに限ると違和感もある。シューベルトにおいてハイネは、主流とまでは言えないし、ブラームスでも似たようなものだ。ブログ「ブラームスの辞書」としては、ヘルティを推したい。「五月の夜」のヘルティだ。シューベルト、ブラームスどちらにも佳曲が多い。

2021年12月 8日 (水)

女流不在

歌曲へのテキスト供給者に女性がいない。作家も作曲家も事情は同じだ。世の中女子の時代だというのにいかがなものか。

我が国の古典和歌だと無視し得ぬ女性歌人も存在するがむしろ例外だ。

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