初レチタティーヴォ
レチタティーヴォとは歌唱法の一つか。オペラ、オラトリオ、カンタータの中で、語り調で歌われる個所またはその唱方法のこと。ベートーヴェンの第九交響曲に目覚めた私のレチタティーヴォ初体験が、同曲のフィナーレで、初めてバリトンが歌い出す場所に置かれていた。当時は何のことやらさっぱりわからぬまま聴いていた。
鑑賞の中心がベートーヴェンで、ジャンルが器楽に極端に偏っていたせいで、オペラ系の知識が抜け落ちていたせいである。レチタティーヴォは、旋律を聴かせるアリアの反対概念にも見える。おいしい聞かせどころとなるアリアは、得てして歌手の見せ場であるのに対し、レチタティーヴェはストーリーや情景の説明機能の方に重心が寄っている。単純な伴奏が付与されるのが通例で、チェンバロの和音だけのこともある。
第九の見せ場のバリトンの登場のところに置かれていても、なんぞなんぞ考えもしなかった。シラーのテキストに入れ替わると同時に始まる歓喜の歌の導入でしかないとわかっていてもかっこいいレチタティーヴォであった。
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