ブラームス神社

  • 道中安全祈願

おみくじ

  • テンプレート改訂しました

独逸日記

  • ドイツ鉄道博物館のおみやげ
    2012年3月28日から4月4日まで、次女の高校オケのドイツ公演を長男と追いかけた珍道中の記録。厳選写真で振り返る。

ビアライゼ

  • Schlenkerla
    自分で買い求めて賞味したビールの写真。ドイツとオーストリアの製品だけを厳選して掲載する。

カテゴリー

カテゴリー「121 再現部」の3件の記事

2007年4月 2日 (月)

主題再帰

「ブラームスの辞書」では「提示済みの旋律が同一楽曲内で再度出現すること」と定義している。「再現部」としてしまうと、いわゆるソナタ形式のそれを想起してしまうので区別している。ソナタ形式の再現部も含むより大きな概念だと思っていただきたい。主題が再度現れることは、何もソナタ形式に限ったことではないので、新たな定義が必要だと考えた訳である。

ブラームスに限らず西洋の音楽、とりわけドイツの器楽曲は、この「主題再帰」を重んじていると思われる。一度提示済みの主題が再度現れる瞬間に誰もが感じるほっとした安堵感こそが音楽の目的ではないかとさえ思っている。そうした仕組みの中でも、もっとも大がかりなものが「ソナタ形式」だと位置づけられる。

最初に提示される主題は「我が家」とでも位置づけられよう。それに対して「主題の展開」「主題の処理」「主題の発展」等々さまざまな命名がされているが、それらをひっくるめて「外出」と捉えたい。「外出」にもさまざまな種類があることとはもちろんだ。角のコンビニまで弁当を買いに行くのも外出なら、週末を利用して温泉に行くのも外出である。この論法で行くなら「主題再帰」は「帰宅」とでも位置づけられよう。

外出に様々な種類があるように「主題再帰」つまり「帰宅」のしかたも様々である。実はこの帰宅の方法つまり「主題再帰」の準備こそが「帰宅」そのものよりも珍重されることが多い。「主題再帰」の瞬間よりも、そこに至る道のりを楽しむという訳だ。何を隠そうブラームスは、帰宅の方法の多彩さにおいて抜きんでた存在なのだ。ブラームス作品の味わいにおいて「主題再帰」はいつも大抵見せ場になっていることが多い。「主題再帰」の道の上にいるのだと自覚する瞬間に何とも言えぬ陶酔感さえ存在するのだ。

何もブラームスにまで用例を求めずとも事は足りる。

たとえば娘たちとのヴァイオリンの練習に使われる教則本で感心することがある。カイザーの1番を例にとってみる。初心者向けの第1ポジション御用達の曲だが、こんな小さな曲にも「主題提示」と「主題再帰」が用意されている。つまり大抵の曲が「ABA’」の形を採っているのだ。ヴァイオリン一本で奏でられる小品なのに、旋律線だけでなく和音進行も一人前の手順が踏まれているのだ。娘たちと練習する際には、どんな練習曲でも最初の日に必ず楽譜の「主題再帰」の場所に鉛筆で線を引くことにしている。娘たちにとっては「この印のところからまた最初に戻るから、弾き慣れた旋律になる」という「ふんばりの目標」になるのだ。少々つらくても我慢させるのだ。その我慢がいつまでなのかの具体的な目標が「主題再帰」の場所なのである。

私の立場から申せば、その印「主題再帰」の場所はオアシスであり「ほっとする場所」であることを教える意味がある。作曲家は再帰の直前にそれ相応の手続きを必ず踏むので、感覚的でもいいからそれを意識させたいのだ。主題再帰部に効果的に戻るために弾き手として何をするのか娘たちと意見を出し合うのだ。必ずしも正解が存在する訳ではないが「クレッシェンドする」「ディミヌエンドする」「リタルダンドする」「少しフェルマータする」等々娘たちが感じてくれればいい。

西洋音楽を志す者にとって、とりわけブラームスであれば尚更、「主題再帰」を幼い頃から意識しておくことには大切だと信じる変なパパである。

2007年3月16日 (金)

piu f sempre crescendo

ブラームスの生涯で唯一弦楽六重奏曲第1番の第1楽章234小節目に存在する。ひとまず「今までより強く、常にだんだん強く」と解しておく。

数小節前から微細なクレッシェンドで着々と準備されてきた再現部の到来である。ヴァイオリンがシンコペートされた重音で華麗に装飾しているが、紛れもない第一主題の再現である。この指定「piu f sempre crescendo」は特定のダイナミクスを表現してはいない。「f」の文字は含まれているが、あくまで「piu f」つまり「今までより強く」という相対的な指示にとどまっている。「f」の字面またはあまりのカッコ良さにつられて、強過ぎるダイナミクスにしてしまうと途端に行き詰まる。246小節目の「ff」に向けたクレッシェンドの斜面の途中であることを肝に銘じなければならない。

このように解することで一つの疑問は帳消しになる。この「sempre」は「piu f」と「crescendo」のどちらを修飾しているかという疑問だ。どちらと捉えても「どの瞬間をとっても常にクレッシェンド」という解釈となる。第一主題の再現自体が長いクレッシェンドの斜面に埋め込まれているということを演奏者に知らしめる効果という点では同等と思われる。234小節からいきなり気合いを入れ過ぎるなという警告も含まれていると考えたい。もちろん、この素晴らしい再現を屁理屈で台無しにしないことが大切である。

何やらポカポカと暖かい南向きの斜面のような気がする。

2006年5月10日 (水)

再現部隠蔽

ブラームスの癖のこと。古来よりいろいろな人によって指摘されているブラームス節の根幹である。狭い意味においては、ソナタ形式の再現部がぼやかされる傾向を指しているが、「ブラームスの辞書」の中では、同一楽曲内において一度提示済みの旋律を再示する場合に単なる繰り返しを避ける傾向にまで対象を拡大して用いている。

ソナタの舞曲楽章では比較的単純な繰り返しが施されている場合が多い。そのものズバリのダカーポが使われていたりもする。

一旦舞曲楽章から離れると、ブラームスは単純なる繰り返しを避ける傾向を隠さない。それらのパターンを以下に列挙する。

  1. 旋律は回帰するものの、調性が違っている。
  2. 調性は復旧するが、旋律が微妙に変奏されている。
  3. 調性は復旧するが旋律は仄めかされる程度。
  4. 旋律も調性も復旧するが、担当する楽器が変わっている。
  5. 旋律も調性も復旧するが、伴奏の音形が変わっている。
  6. 旋律も調性も復旧するが、ダイナミクスが変わっている。
  7. 旋律も調性も復旧するが、テンポが微妙に変わっている。

上記の一つまたは複数に該当するケースがほとんどだろう。一番肝心なことは、再示がどんなに変化していようとも、その変化は聴き手が「あっ再現だな」と気付く範囲にとどまっているということである。聴き手に気付いてもらえなかったら元も子もないのだ。無論、気付くのに要する時間には際限がない。2年たって気付くケースだってありである。

これらは、ブラームスの変奏曲好きとも関係があると思われる。一つの旋律にいろいろな角度から光を当てる行為をブラームスは得意にしていた。「何故変奏をするのか?そこに旋律があるからだ」というノリを容易に想像できる。

その他のカテゴリー

001 用語解説 002 ドイツ旅行① 003 ドイツ旅行② 004 ドイツ旅行③ 050 空席状況 051 お知らせ 052 総集編 053 アラビアンナイト計画 054 セバスチャン 055 令和百人一首 056 拾葉百首 060 ブラームス神社 061 縁起 063 賽銭 070 ドイツ分室 071 地名辞書 072 地名探検 073 地名語尾辞典 074 地名語尾 075 ドイツ語 076 ドイツ方言 077 ドイツ史 078 ハプスブルク 079 人名辞典 080 イベント 081 謝恩クイズ 082 かるた 083 のだめ 084 お盆 085 中国出張 086 英国研修 087 ブログ出版 088 意訳委員会 089 ドヴォルザークイヤー総集編 090 ドヴォルザーク作品一覧 091 平均律与太話 092 暦 093 バロック 094 ドイツバロック 095 イタリアンバロック 096 65の手習い 100 作曲 101 編曲 102 楽譜 103 音符 104 楽語 105 テンポ 106 音強 107 拍子 108 調性 109 奏法 110 演奏 111 旋律 112 音型 113 リズム 114 和声 115 対位法 116 形式 117 編成 118 ヘミオラ 119 テキスト 120 ベースライン 121 再現部 122 微調整語 123 語彙 124 表情 125 伴奏 126 ジプシー音楽 140 ソナタ 141 変奏曲 142 フーガ 143 ロンド 144 コラール 145 間奏曲 146 スケルツォ 147 ワルツ 148 レントラー 149 緩徐楽章 150 セレナーデ 153 カプリチオ 154 トリオ 155 序奏 156 シャコンヌ 157 メヌエット 158 舞曲 159 カンタータ 160 ブラームス節 161 分布 162 引用 170 楽器 171 ピアノ 172 ヴァイオリン 173 ヴィオラ 174 チェロ 175 コントラバス 177 オーボエ 178 クラリネット 179 ファゴット 180 ホルン 181 トランペット 182 トロンボーン 183 チューバ 184 ティンパニ 185 トライアングル 186 チェンバロ 187 オルガン 190 鍵盤楽器 191 弦楽器 192 木管楽器 193 金管楽器 194 打楽器 195 メゾソプラノ 196 アルト 200 作品 201 ピアノ曲 202 歌曲 203 器楽 204 室内楽 205 交響曲 206 協奏曲 207 管弦楽曲 208 合唱 209 重唱 210 民謡 211 オルガン 212 オペラ 213 カノン 214 連弾 215 練習曲 216 学生歌 230 ドイツレクイエム 231 交響曲第1番 232 交響曲第2番 233 交響曲第3番 234 交響曲第4番 235 大学祝典序曲 236 ヴァイオリン協奏曲 237 ピアノ協奏曲第1番 238 ピアノ協奏曲第2番 239 二重協奏曲 248 弦楽六重奏曲第1番 249 弦楽六重奏曲第2番 250 ピアノ五重奏曲 251 クラリネット五重奏曲 252 弦楽五重奏曲第1番 253 弦楽五重奏曲第2番 254 弦楽四重奏曲第1番 255 弦楽四重奏曲第2番 256 弦楽四重奏曲第3番 257 ピアノ四重奏曲第1番 258 ピアノ四重奏曲第2番 259 ピアノ四重奏曲第3番 260 ピアノ三重奏曲第1番 261 ピアノ三重奏曲第2番 262 ピアノ三重奏曲第3番 263 ホルン三重奏曲 264 クラリネット三重奏曲 265 ヴァイオリンソナタ第1番雨の歌 266 ヴァイオリンソナタ第2番 267 ヴァイオリンソナタ第3番 268 チェロソナタ第1番 269 チェロソナタ第2番 270 クラリネットソナタ第1番 271 クラリネットソナタ第2場 272 FAEソナタ 300 作曲家 301 バッハ 302 シェーンベルク 303 ドヴォルザーク 304 ベートーヴェン 305 シューマン 306 メンデルスゾーン 307 モーツアルト 308 ショパン 309 シューベルト 310 ワーグナー 311 マーラー 312 チャイコフスキー 313 Rシュトラウス 314 リスト 315 ヘンデル 316 ヴィヴァルディ 317 ヴェルディ 318 ヨハン・シュトラウスⅡ 319 ビゼー 320 ブルックナー 321 ハイドン 322 レーガー 323 ショスタコーヴィチ 324 テレマン 325 ブクステフーデ 326 パッヘルベル 327 シュメルツァー 328 フローベルガー 330 プレトリウス 331 シュッツ 350 演奏家 351 クララ 352 ヨアヒム 353 ミュールフェルト 354 アマーリエ 356 ビューロー 357 クライスラー 358 ヘンシェル 362 シュットクハウゼン 400 人物 401 ファミリー 402 マルクゼン 403 ジムロック 404 シュピッタ 405 ビルロート 407 ビスマルク 408 ハンスリック 409 フェリクス 411 マンディ 412 ヴィトマン 416 カルベック 417 ガイリンガー 418 エルク 419 グリム兄弟 420 森鴎外 421 ルター 422 源実朝 431 アガーテ 432 リーズル 433 マリエ 434 ユーリエ 435 オイゲーニエ 436 ベルタ 437 リースヒェン 438 オティーリエ 439 シュピース 440 トゥルクサ 441 バルビ 442 シシィ 443 メルケル 500 逸話 501 生い立ち 502 性格 503 学習 504 死 505 葬儀 506 職務 507 マネー 508 報酬 509 寄付 510 顕彰 511 信仰 512 友情 513 恋 514 噂 515 別れ 516 こだわり 517 癖 518 読書 519 リゾート 520 旅行 521 鉄道 522 散歩 523 食事 524 ワイン 525 タバコ 526 コーヒー 527 趣味 528 手紙 529 ジョーク 530 習慣 531 住居 532 恩人 533 指揮者 534 教師 535 暗譜 536 美術 537 ビール 550 楽友協会 551 ジンクアカデミー 552 ハンブルク女声合唱団 553 赤いハリネズミ 554 論争 555 出版社 556 初版 557 献呈 558 伝記 559 初演 560 校訂 571 ウィーン 572 ハンブルク 573 イシュル 574 トゥーン 575 デトモルト 576 ペルチャッハ 577 ライプチヒ 578 デュッセルドルフ 579 フランクフルト 580 ベルリン 581 アイゼナハ 582 リューベック 583 ニュルンベルク 590 イタリア 591 イギリス 592 チェコ 600 ブログMng 601 運営方針 602 自主規制 603 アクセス 604 検索 605 カテゴリー 606 記事備蓄 607 創立記念日 608 ブログパーツ 609 舞台裏 610 取材メモ 611 マッコークル 612 シュミーダー 613 一覧表 614 課題 615 カレンダリング 616 ゴール 617 キリ番アクセス 618 キリ番記事 630 記念 631 誕生日 632 命日 633 演奏会 634 正月 635 ヴァレンタイン 636 クリスマス 637 ブラームス忌 638 ブラスマス 639 クララ忌 641 愛鳥週間 642 ランキング 699 仮置き 700 思い 701 仮説 702 疑問 703 お叱り覚悟 704 発見 705 奇遇 706 区切り 707 モチベーション 708 演奏会 709 感謝 710 よろこび 711 譜読み 712 音楽史 720 日本史 721 日本人 722 日本語 723 短歌俳句 724 漢詩 725 三国志 727 映画 728 写譜 730 写真 731 数学 732 レッスン 733 ビートルズ 740 昔話 741 仲間 742 大学オケ 743 高校オケ 760 家族 761 父 762 母 763 妻 764 長男 765 長女 766 次女 767 恩師 768 孫 780 スポーツ 781 野球 782 駅伝 783 バスケットボール 784 サッカー 785 アントラーズ 786 バドミントン 790 コレクション 791 CD 792 ipod 793 楽譜 794 書籍 795 グッズ 796 愛器 797 職場のオケ 800 執筆の周辺 801 執筆の方針 802 ブラダス 803 校正 804 譜例 807 パソコン 808 ネット 809 ドボダス 810 ミンダス 820 出版の周辺 821 パートナー 822 契約 823 装丁 825 刊行記念日 840 販売の周辺 841 お買上げ 842 名刺 860 献本 861 ドイツ国立図書館

フォト

ブラームスの辞書写真集

  • Img_0012
    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
2025年4月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
無料ブログはココログ