ピアノ伴奏はいかが
記事「やっぱりアメリンク」でアンナマグダレーナバッハの音楽帳にBWV82「Ich habe Genug」の第2曲第3曲が収められているとまくしたてた。実は愛聴盤がもう一種ある。ジェイムズマドックスというピアニストが入れていて、ソプラノはイングッド・シュミットヒュッテン。そりゃあアメリンクには一歩譲るけれど、家庭でポロリポロリと弾いている感じがしておさまりがいい。
さらにこちらは2枚組で、同音楽帳の全曲が入っている。ドライブや在宅勤務のおともに好適。
記事「やっぱりアメリンク」でアンナマグダレーナバッハの音楽帳にBWV82「Ich habe Genug」の第2曲第3曲が収められているとまくしたてた。実は愛聴盤がもう一種ある。ジェイムズマドックスというピアニストが入れていて、ソプラノはイングッド・シュミットヒュッテン。そりゃあアメリンクには一歩譲るけれど、家庭でポロリポロリと弾いている感じがしておさまりがいい。
さらにこちらは2枚組で、同音楽帳の全曲が入っている。ドライブや在宅勤務のおともに好適。
ブラームスはと言えばあきらかにホルン好き。オケの中の見せ場には事欠かない上に、室内楽にだってホルン三重奏という稀有な出番がある。ホルンとハープを伴奏に据えた凝った合唱作品だってある。ところがシューベルトも負けていないという事例に出会った。ホルンを伴奏に従えた作品がSingphonikerの「男声パートソング全集 」に収録されていた。それらをドイチュ番号順に列挙し、編成とテキスト供給者を添えておく。
いやもうご機嫌だ。森やら狩やらが相応しいとシューベルトも考えていたようだ。ホルン2または4で伴奏になってしまう。アカペラともピアノ伴奏とも違った味わいと奥行き。
「テンペスト 」といえばシェークスピアだ。昨日は私の妄想だったが本日は正真正銘のシェークスピア。
「An Sylvia」D891はシェークスピア初期の喜劇「ヴェローナの二紳士」の一節を独訳したものがテキストになっている。原作は1590年代に成立したと目される。イタリアを舞台に「恋と友情」をはかりにかけて最後はめでたしめでたしで終わる。ニ紳士のうちの1人ヴァレンタインの恋人がシルヴィアである。シューベルトは本作から「シルヴィア礼賛」の部分をテキストに完璧な仕事をする。シルヴィアの容姿やキャラまで思い浮かぶようだ。
イ長調4分の4拍子。「Massig」は言うなれば「モデラート」だから「惚れ込み4原則 」よりはかなり早いうえに、曲想がレガートではない。ピアノ左手の独特の音形が手を変え品を変えて貫かれる。きっと彼女は明るくて聡明だ。
この手の軽妙な、いわばモーツァルト的なリート作品はブラームスには見当たらない気がする。
ベートーヴェンの第五交響曲冒頭のあれである。「GGGES」だというより「ジャジャジャジャーン」で通じるのではあるまいか。肝は先頭の8分休符だったりする。同曲のいたるところに痕跡をとどめ、これが「主題労作」の典型となり手本と化してゆく証拠に、ベートーヴェン自身の他の作品は元よリ、後世の作曲家の作品にもそれと思しき箇所が散見される。ブラームスにだってある。特定の作曲家のベートーヴェンとの関係を強調したいときに重宝しているようにも見える。
そこでシューベルトだ。「こびと」D771に注目したい。オリジナルは「Der Zwerg」という。マテウス・フォン・コリンのテキストは「魔王」「死と乙女」の系統のバラードと解してよさそうだが、内容はずっと陰惨。
同曲中に運命動機が頻繁に現れる。1823年の作品なので当然運命交響曲よりも後。なんらかのインスピレーションの連携がないとしたらその方が不自然だ。シューベルトの手にかかると陰惨なテキストの内容が濾過される感じ。
ドイチュ番号で思い出した。著者オットー・エーリヒ・ドイチュではなくヘルムート・ドイチュ先生のことだ。歌曲伴奏の第一人者として長く君臨する。実は彼こそが書籍「ブラームスの辞書」の生みの親だ。一連の経緯は下記の通り。
ドイチュ先生の著書は「伴奏の芸術」という。
この本の28ページに「ブラームスのダイナミクスの指定は並外れて変化に富み、それを全部書き出してリストにするのも、おそらく価値があるのではと思われる」と書いてある。書籍「ブラームスの辞書」の執筆に踏み切れずに迷っていた時、この部分に触れて背中を押された。
だから出版後、なんとしても先生に進呈したいと欲しての突撃であった。奥様にも進呈したお礼にとサインまでいただいた。
ここに掲示するわけにもいかないが、ご夫妻との記念写真が今も私の宝でる。
今、シューベルトの記事を発信するにあたってもう一度読み直している。ドイチュ先生はシューベルトの記述に特段の愛情をささげておられる。これも縁。
ここで言う「伴奏者」とは声楽の伴奏という意味だ。
19世紀屈指のピアニストだったクララが、公の場で歌曲の伴奏をしたケースは非常に少ない。クララを伴奏者に従えて歌ったことがある歌手は男女それぞれ1名だけだという。男性はバリトン歌手ユリウス・シュトックハウゼンで、女性はコントラルト歌手アマーリエ・ヴァイスだ。大ヴァイオリニストのヨアヒム夫人は、超一流の歌手だったことがわかる。
だからハンブルク女声合唱団の名誉会員だったクララが、たとえ練習の折にでも、ピアノ伴奏をしてくれていたら、それはそれで大変なことなのだが、なんだかやってそうな気がして仕方がない。
そもそも「ヴァイオリンソナタ」という通称が適当ではない。本来は「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」だ。ピアノが先である。これは古典派の伝統だ。ヴァイオリンとピアノの二重奏ソナタにおいて、ヴァイオリンはピアノの添え物だった時代の名残だ。ブラームスの師匠筋のシューマンは、「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」としている。ロマン派の時代になって、「ヴァイオリン」を先に書くケースが増えていたのを、ブラームスは決然と古典派の原則を踏襲した。
名は体を表す。楽曲内における両者の位置づけが対等であることの予告でさえある。ヴァイオリンがきれいな旋律を奏でて、ピアノはその引き立て役という構図が勇敢に否定されている。「伴奏」という単語は厳に慎まねばならない。
と言いつつ、ヴァイオリンソナタ第1番第1楽章を題材にした今回の調査の結果を公表する際、その一覧表には行きがかり上ヴァイオリニストしか記載しなかった。迂闊であった。罪滅ぼしに、本日はピアニストたちを一覧化する。姓のアルファベット順に記し、相棒のヴァイオリニストと録音年を付記した。
見ての通り、ブラームスのコンチェルトを録音している人も多い。CDを売る立場から申せば、知名度、話題性が高い方がいいに決まっている。オリジナルはともあれ、ひとまず「ヴァイオリンソナタ」と銘打って売られる以上、知名度や話題性で「ヴァイオリニスト>ピアニスト」というケースも目につくが、実に楽しいリストだ。
「野のさびしさ」op86-2には、意外なことに声のパートには音楽用語が置かれていない。テキストと音符を繰り返し眺めて、イメージがいくらでも湧いて出るのだが、「f」「p」のようなダイナミクス用語が歌手用のパートに現われない。伴奏のパートにだってたった4回の楽語と少々の<>が出現するだけだ。
これは何も「野のさびしさ」に限った話ではない。op32以降つまり中期以降の歌曲に共通して現われる傾向だ。
つまり、「テキストを読め」「伴奏を味わえ」というブラームスのメッセージだと思う。テキストの持つリズム、抑揚、フレージングを理解して、そのまま歌えばよろしいとブラームスが言っていると思う。もしかすると「判らなくなったら伴奏を聴け」と付け加えているかもしれない。
「夏の宵」は作品85-1を背負った甘美な歌曲。大御所のハイネのテキストに真っ向から対峙したブラームスである。
昨今ほとんど亜熱帯まがいの東京の夏を思い浮かべてはいけない。ひんやりと涼しげな黄金色の月を見上げながら、夢ともうつつともつかぬ物思いにふける情景なのだ。暗示的な和音がピアニシモで2つ鳴らされた後、いきなり核心をつくような甘美な旋律が立ち上がって始まる。ピアノ四重奏曲第3番第3楽章アンダンテ、ヴァイオリン協奏曲第2楽章、「サッフォー頌歌」の冒頭旋律に連なる3度下降の系譜上にある。このとき「sempre pp e legato」と記されてピアノ左手に現れる「ファ-シ-レ-ファ-シ-ラ」という上行する分散和音は本作品のもう一つの肝である。
ニ長調の中間部を経て25小節目で冒頭旋律が回帰するとき、先の分散和音には「dolce」が加えられた上に、1オクターブ高くしかも右手で奏でられる。
これだけでも美しい。十分に美しい。
「夏の宵」に続く作品85-2には同じハイネのテキストに付曲した「月の光」という作品が置かれている。変ロ長調の調号「フラット2個」を与えられながら冒頭小節でいきなり「D」にフラットが奉られている。テキストが異郷での苦悩を匂わせていることと鮮やかにシンクロしている。
やがてそうした苦悩が爽やかな「月の光」によって打ち払われる。テキストがまさに「月の光」にさしかかるところで、前作「夏の宵」の冒頭旋律が密やかに回帰するのだ。ピアノ側の上行する分散和音までセットになっている。前作の25小節目での再現よりさらに1オクターブ高く鳴らされる。爽やかな月の光に心洗われる情景の描写だと思われる。あるいは、月の高度が徐々に増して行くことを象徴したかとさえ想像したくなる。
大切なものを掌にのせてそっと差し出すような「とっておき感」がここの売りである。ピアノのパートに現われた「dolcissimo」がその根拠だ。「この分散和音は前作に出現した2回に続く3回目と考えよ」という意図に違いあるまい。「前の2回よりもっとね」というブラームスのメッセージである。
そうとでも申さねば、この唐突な「dolcissimo」は説明がつかない。
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