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カテゴリー「146 スケルツォ」の19件の記事

2015年11月17日 (火)

減七の味付け

ピアノ三重奏曲第2番ハ長調の話。

第3楽章冒頭には「Scherzo」と明記された8分の6拍子。調号としてフラット3つが奉られている。8分の6拍子のスケルツォがいつもハ短調になるというブラームスの癖通りの展開だ。「pp」が「sempre」でと念押しされながら、ヴァイオリンとチェロがユニゾンで、「C→Es→G」という具合に、ハ短調主和音を刻みながら登って行く。テンポがPrestoということもあって何やら神秘的な感じがする。

ピアノパートに目を転ずる。そこには「pp sempre」に「leggiero」が追加される。小節の前半6個の16分音符を見るといい「C→D→Es→Fis→A→C」になっている。最初の3つはともかく、ラストの3つ「Fis→A→C」から小節後半の「Es」にかけての並びは「Cm」から減七和音に逸脱している。1小節目と2小節目は、小節の途中で減七和音に揺らぐということだ。ダイナミクスが「pp」な上に、テンポが速いので聴き手がはっきり確信出来ないまま通り過ぎてしまう。「8分の6拍子のスケルツォは、いつもハ短調」というブラームス自身の癖を逆手に取るスパイスだ。

こうした揺らぎの構造は、フィナーレの冒頭1~2小節でも保存される。小節後半に減七和音への揺らぎが見られる。

2015年11月15日 (日)

最後のスケルツォ

ブラームスが楽譜上に明記したという意味において、ピアノ三重奏曲第2番op87の第3楽章が最後のスケルツォとなる。op99のチェロソナタの第3楽章には「スケルツォ」と明記されない。

ブラームスがシューマンらとともに合作したFAEソナタでスケルツォを担当して、ハ短調8分の6拍子でスケルツォを書いて以来、もはや伝統となった「ハ短調のスケルツォ」の最後の作品である。
以下に8分の6拍子のスケルツォを列挙する。
  1. FAEソナタ第3楽章 ハ短調8分の6拍子
  2. ピアノソナタ第2番第3楽章 ロ短調8分の6拍子
  3. ピアノ四重奏曲第1番 ハ短調8分の9拍子 インテルメッツォに改名
  4. ピアノ五重奏曲第3楽章 ハ短調8分の6拍子
  5. ピアノ四重奏曲第3番 ハ短調8分の6拍子
  6. ピアノ三重奏曲第2番 ハ短調8分の6拍子
  7. チェロソナタ第2番 ヘ短調8分の6拍子 スケルツォと明記されない。
見ての通り、ハ短調のスケルツォはいつも必ず8分の6拍子になる。興味深いのは上記3番だ。ピアノ四重奏曲第1番の第三楽章には元々「スケルツォ」と書いてあったのだが、現在流布する楽譜では「インテルメッツォ」と差し替えられている。これがもし、放置されていたら「ハ短調のスケルツォはいつも8分の6拍子」という命題が偽となっていた。
さらに上記の表の作品は全て短調だし、全てピアノ入りの作品となっている。FAEソナタはブラームス自身出版に同意していないからノーカウントとして、ピアノソロ、二重奏、三重奏、四重奏、五重奏に各1種ずつだ。

2015年7月29日 (水)

擬似ユニゾン

ホルン三重奏曲の第2楽章での出来事。287小節目から中間部が始まる。大変珍しい変イ短調のトリオだ。フラット7個の現場は滅多にないから要チェックだ。

287小節目から12小節間、ヴァイオリンとホルンがオクターブユニゾンだなどと思っていたら、ところがどっこい3度だった。ホルン側の記譜が「in Es」だから「C」から始まる旋律と見えて、実音は「Es」からになる。楽譜上の見かけはオクターブユニゾンだが、実音上では3度進行になっている。ちょっと面白い現象。

2015年7月28日 (火)

ジュピタースケルツォ

モーツアルトの交響曲第41番ハ長調の終楽章は「C→D→F→E」という主題で始まる。いわゆる「ジュピター音型」だ。ブラームスの4つ交響曲の調性を順に並べると「CDFE」となるなど、興味本位も含めて話題には事欠かない。

ホルン三重奏曲変ホ長調op40の第2楽章の冒頭を見て欲しい。ピアノが2オクターブにまたがるユニゾンで立ち上がる。その最初の4つの音を順に並べると「Es→F→As→G」になっている。これを変ホ長調の移動ドで読むと「ドレファミ」になる。つまりジュピター音型である。

何せテンポが速い上に、ピアノなのでから耳を澄ましていなければ聴き逃がす。このスケルツォ全体にこの音型が織り込まれている。

2012年12月26日 (水)

トリオのテンポ

ソナタの中間楽章に現われがちな舞曲楽章は全て三部形式で書かれている。そのまた中間部は一般にトリオと呼ばれている。三楽章制を採用するソナタには出現しないからカウントがややこしいがひとまず34曲としておく。これに作品4の変ホ短調のスケルツォと、FAEソナタの中のハ短調のスケルツォを加えた36曲が本日のお話の対象である。なお同一曲の中にトリオが二度出現する場合もそれぞれ1曲とした。ちなみに第4交響曲の第3楽章は、ソナタ形式なのでカウントに入れていない。

今日のお話はこれらのトリオのテンポが直前の主部に比べて上がるのか下がるのかを議論したい。まず最初に主部からトリオに行く際にテンポが速まるものを列挙する。

  1. ピアノソナタ第1番「Allegro molto con fuocoPiu mosso」
  2. 管弦楽のためのセレナーデ第1番「Allegro non troppoPoco piu moto」
  3. 弦楽六重奏曲第1番「Allegro moltoAnimato」
  4. ピアノ四重奏曲第1番「Allegro ma non troppoAnimato」
  5. 弦楽六重奏曲第2番「Allegro non troppoPresto giocoso」
  6. 弦楽四重奏曲第1番「Allegretto molto moderato e comodoUn poco piu animato」
  7. 弦楽四重奏曲第2番「Quasi menuetto,moderatoAllegretto vivace」
  8. 交響曲第2番「Allegretto grazioso(quasi andantinoPresto non assai」
  9. クラリネット五重奏曲「AndantinoPresto non assai,ma con sentimento」

上記1番および3番を例外とすれば主部のテンポは全概ね「Allegro未満」になっている。逆にトリオに行く際にテンポが下がるものは下記の通りだ。

  1. FAEソナタ「AllegroPiu moderato」
  2. ピアノソナタ第2番「Allegro→「Poco piu moderato」
  3. ピアノ三重奏曲第1番「Allegro moltomeno allegro」
  4. ホルン三重奏曲「AllegroMolto meno allegro」
  5. ピアノ三重奏曲第2番「PrestoPoco meno presto」
  6. クラリネットソナタ第2番「Allegro appasionatoSostenuto」

初期に集中して現われた後、一番最後に一花咲かせている感じである。

もっとも大切なことはテンポが上がるケース、下がるケース合計で15例にとどまる。つまり残り21のケースにおいては、テンポが変わらないということだ。少なくともブラームスはトリオの冒頭でテンポを直接いじる指示をしていない。「いじって欲しいところにはそう書いてある」というブラームスの考えに従えば、「書いていないところでいじるな」とも解釈出来る。たとえばトリオの冒頭に「espressivo」「legato」「dolce」等の語が置かれているケース(全て実在する)において慣習としてテンポが変動している事例が後を絶たないが、安易な解釈は慎まねばなるまい。

次女たちふくだもな五重奏団が挑むピアノ五重奏第3楽章のトリオには、速度の指示がない。テンポ変動が必要な場合、必ず明記するのがブラームス流だから、表示の無い同曲トリオにおいてブラームスはテンポの変更を求めていないということだ。求めているのは気分の変更だけにとどまる。

2012年12月25日 (火)

クリスマスプレゼント

楽章を2小節単位でくくることから得られる大きな4拍子という枠組みの中で、2拍のズレを楽しむのが中間部トリオであると一昨日書いた。

同じく実質4拍子の枠組みの中で、1拍のズレを楽しむ場所もある。第三主題がそれ。23小節目アウフタクトだ。曲中初めて全楽器が同時に鳴る場所でもあるし、最初のフォルテシモでもある場所。大きな4拍子で見ると4拍目から始まるのだが、アウフタクトの4拍目が主調・ハ長調の和声を持っている。続く23小節の1拍目はヘ長調になっている。和声的にはハ長調の和声を持つ4拍目が強拍に聞こえるのに、拍節的には4拍目になっているというズレ。さらに26、27、28小節において2拍目に「fz」が付与されているから、1拍ズレているという錯覚に陥る。広い意味でのシンコペーション。

全体を4拍子ととらえることで、シンコペーションの効果が増幅される。そういう意味では、この度のフォルテシモが始まる前の4分休符がとても大切だということが判る。全パート4分休符にすることで、続く爆発が強拍か弱拍かを判りにくくしている。同じ場所が再現される109小節目では、ここに4分休符があてがわれないことから、1回目において拍のはぐらかしが意図されたと判る。

次女たち「ふくだもな五重奏団」がブラームスのピアノ五重奏に挑むと聞いたとき、嬉しいの次に頭によぎったのが、「ピアノ誰弾くの?」だった。トップ奏者が集まれば、弦はどうにかとは感じていたが、ブラームス室内楽のピアノは、一筋縄では行かないと思ったからだ。いつもはコンサートミストレスの隣で弾いているヴァイオリン奏者が、そのピアニストだとわかったとき、疑問は解けた。ドイツでオルガンを披露したほどの腕前。そして何より左利き。これは理屈抜きに応援せねばと思った。ブラームスのピアノ入り室内楽で何が難しいといって、みんな苦労するのがバランスだ。とりわけライブでは難問だ。シェーンベルクがブラームスのピアノ四重奏をオーケストラ編曲した理由の一つに挙げているほどだ。曰く「ピアニストが達者であればあるほど、弦楽器がかき消される。」「かといって達者なピアニストでないとピアノパートが様にならない」「だから正しいバランスで聞かせるために管弦楽に編曲した」と。頼りはフタの開閉度というオチも珍しくない。ピアノに張り合っても音をつぶさない弦楽器と、弦楽器との間合いを読んで匙加減出来るピアニストが必要だ。

高校オケの弦楽器トップ奏者に囲まれてブラームスの室内楽に挑むのが同じ高校生のピアニスト。そのメンバーに娘が加わっている。これがどれほどの至福かご理解いただけるだろうか。

昨日次女たちオーケストラ部のクリスマス会があった。時期的に見て一年の労をねぎらう忘年会のノリもあるにはあるのだが、まだ年内にオーケストラフェスタがあるからその面では壮行会だ。そしてブラボーの練習も少々。

終盤間近のビスマルク特集を延々とさえぎって、10本もピアノ五重奏ネタを連ねたのは、ブログ「ブラームスの辞書」からメンバーへのクリスマスプレゼント。そして何やらブラームス風な遠まわしのエール。お気づきの通りこのたびカテゴリー「250 ピアノ五重奏曲」を新設して関連記事を集約する。

とはいえこの一連の記事が、乙女たちのはばたきを妨げる小さなカゴにならないことを祈るばかりである。ブラームスのご加護を特盛で。

2012年12月21日 (金)

いきなり借用

ふくだもな五重奏団がチャレンジするピアノ五重奏曲の第三楽章スケルツォは、調号としてフラットが3つ奉られている。そこでいきなりチェロがC線解放弦の「C音」を放って立ち上がるのだから、そこにハ短調を期待するのが人情というものだ。

ところが3小節目でいきなり問題が提起される。第一ヴァイオリンとヴィオラは「As音」から旋律を立ち上げるからだ。最初の1小節は変イ長調の主和音「As-C-Es」になっている。期待されるのはハ短調「C-Es-G」だから、「G音」が半音違いの「As音」の差し替えられた形だ。本来来るべき和音の代わりに別の和音を持ってくることを借用というのだが、ここではそれが楽章冒頭の旋律提示の段階でいきなり現れる。チェロ解放弦の「C音」は根音ではなくて「第3音」でしたというオチ。

勝手にハ短調「C-Es-G」を期待する聞き手に肩透かしをかましてはぐらかしつつ、リズムもスラーが頻繁に小節線を跨ぐ。さらにダイナミクスは曰くありげなピアニシモ。何かを隠した薄明かりの中を手探り状態で進む。

同じ和声の枠組みがピアノ協奏曲第1番の冒頭にも見られる。調号にフラット1個を奉り、低い音域で「D音」がフォルテシモで放たれるから、誰もが期待するニ短調と思いきや、第一ヴァイオリンとチェロが「変ロ音」でなだれ込む。この手法をそのままに主音をD音からC音に差し替えたのが、ピアノ五重奏だ。ダイナミクスがピアニシモであることが大きな違い。ハ短調の確立に時間をかけるという手口。

2012年12月20日 (木)

紛れ込んだ1小節

昨日の続き。ブラームスのピアノ五重奏の第3楽章スケルツォが実質4拍子という話題。スコアをお持ちの方はいよいよ是非御手許に。

楽章が実質4拍子で、2小節一組にくくって考えると、いろいろと面白い。だから演奏にあたっては、パート譜にマーカーペンで2小節ごとに印をつけるといい。「奇数小節の前」「偶数小節の後」にマークする。「12」「34」「56」「78」とい具合に「奇数+偶数」で大きな4拍子が作られる。けれどもこれがトリオまで貫かれているからといって、機械的にホイホイ印をつけると痛い目にあう。

13小節目から始まる「タッカタッカタッカタカタカ」は見事に4拍子にはまる。16分音符が4つで構成された4拍目のおかげで「4→1」という拍節感が強調される。ところが同じ旋律の再現158小節目練習番号Dを見るがいい。「偶数小節→奇数小節」になっている。さっきと逆だ。どこで狂ったのだろうとばかりに探しあてたのが75小節目。(下図、丸囲み)

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67小節目から始まるフガートの中だ。ヴィオラに4小節(つまり大きな4拍子2個分)遅れて旋律を引き継いだピアノ4小節の次の75小節が半端の原因。4つ振りで感じるなら「1234」「34」「1234」に聞こえる。次に旋律を受け継ぐ第一ヴァイオリンは76小節目から立ち上がって以降、「偶数小節+奇数小節」で大きな4拍子を構成するようになる。ヴィオラとピアノ以外の奏者はお休みで、小節をカウント中。4拍子のノリでうっかり数えているとここでズレるから、休んでいる人たちにこそ必要な豆知識。

マーカーペンで機械的に印を付けられるのは「73小節と74小節」のくくりまでで、75小節を浮いた1小節とみなして「76小節と77小節」をひとくくりにする。以下「78+79」「80+81」と続く。4分の4拍子の音楽に1小節だけ4分の2拍子が挿入される感じだ。

楽章冒頭チェロのピチカートソロ4発で、実質4拍子を宣言しておきながら、途中にこうした意地悪をしのびこませるブラームスのひねりだ。

2012年12月19日 (水)

実質4拍子

次女たち「ふくだもな五重奏団」が挑むブラームスのピアノ五重奏曲。その第3楽章は「スケルツォ」のタイトルが奉られた8分の6拍子。この拍子のスケルツォ全4例は、みなハ短調という不思議はかつて話題にした。けれどもこの楽章の売りはむしろ、その8分の6拍子と、4分の2拍子の交代の妙にある。13小節目で4分の2拍子に転ずる。どちらの拍子もいわゆる「2拍子系」で「1212」となる。

ところが、背筋を伸ばしてもう少し高い所から旋律やフレージング、あるいは拍節を観察すると4拍子が透けて見えるようになる。「8分の6拍子」や「4分の2拍子」の小節2個を一組でくくるといい。2小節を一組にして大きな1小節ととらえて、4つ振りで感じるといろいろな仕掛けを体感できる。「1212」の連続と感じるよりもずっと大局観が得やすい。

その感覚は中間部トリオまで貫かれている。

ブラームスは楽章の冒頭でチェロC線解放弦のピチカートを単独で4度鳴らす。これは楽章が実質4拍子であることのささやかな宣言だ。

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2010年3月29日 (月)

スケルツォマーカー

カバー率4割少々ながら、仮設ドボダスが一応の完成を見た。これよりドヴォルザークの発想用語について若干の考察を試みる。

まずは「Molto vivace」だ。この語句は「ブラームスの辞書」には載っていない。つまりブラームスは使っていないということだ。先頃完成した4割ドボダスで抽出するとドヴォルザークは「Molto vivace」を9回も使っている。ブラームスの使用ゼロに対してカバー率4割の段階で9回の使用が確認出来るということは、ドヴォルザークの特質である可能性が高い。

  1. スラブ舞曲第9番ロ長調B147-1
  2. ピアノ五重奏曲イ長調B155第3楽章
  3. 交響曲第9番ホ長調「新世界より」B178第3楽章
  4. 弦楽四重奏曲第12番ヘ長調「アメリカ」B179第3楽章
  5. ヴァイオリンとピアノのためのソナティーナB183第3楽章
  6. 組曲イ長調B184第2曲中間部
  7. 弦楽四重奏曲第13番ト長調B192第3楽章
  8. 弦楽四重奏曲第14番変イ長調B193第2楽章
  9. 交響詩「野鳩」B198第3部

上記の通りだ。この分布は興味深い。

  • 創作史的に申せば1886年以降に集中する。後期ソナタの有名どころ全てに顔を出す。
  • 高速3拍子に集中する。2拍子は上記1番だけだ。
  • 多楽章作品に現れる時は全て舞曲楽章だ。交響詩「野鳩」の第3部も実質スケルツォである。

「Molto vivace」と言えばショパン愛好家なら「子犬のワルツ」を思い浮かべる方も多いと思うが、私は独自にドヴォルザークのスケルツォマーカーと認定したい。本腰を入れて突き詰めようと思うと最早「ブラームスの辞書」ではなくなってしまう。

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ブラームスの辞書写真集

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    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
2017年10月
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