異端のインテルメッツォ
作品118-1のイ短調のインテルメッツォのこと。あるいは作品10-3も加えることが出来るかもしれない。
ブラームスは生涯で21曲のインテルメッツォを作曲している。これには、作品10-3やピアノソナタ第3番の第4楽章、さらにはピアノ四重奏曲第1番の第2楽章も含まれている。
この21曲のインテルメッツォのうち、問題の作品118-1は16番目に相当する。元々劇音楽の幕間に演奏される作品の意味だったインテルメッツォを独立した作品に昇格させ、独自のニュアンスを付与してきたブラームスだが、16番目に至って、自らが営々と築いてきたイメージを取り崩しているようにも見える。
- ゆったりとしたテンポ
- marcato不存在
- 弱めのダイナミクス
「f」で開始されるインテルメッツォは他に1例があるばかりだし、冒頭指定に「appassionato」を持つインテルメッツォはこれだけだ。さらに「Allegro」というテンポも異端である。かろうじてmarcatoの不存在」だけは守られているが、全体の印象は「カプリチオ」そのものだ。
「ブラームスの辞書」本文では、作品117の3曲、そして作品118-2という世界遺産級の珠玉のインテルメッツォに挟まれているので、気分を変えてとでも思ったのかもしれないと、苦し紛れの解釈も試みられてはいるが、何の解決にもなっていない。
作品116の最後を飾る7番ニ短調のカプリチオを最後に、カプリチオがパッタリと姿を消している。作品116以前は、小品のタイトリング面において、「インテルメッツォ」と「カプリチオ」が数の上で均衡するような配慮がされていたと思われるが、作品117以降では、インテルメッツォが極端に優勢になる。インテルメッツォを3つ並べた作品117はいたし方ないにしても、従来の基準ならば「カプリチオ」のタイトルを奉られてもいい作品にさえ、「カプリチオ」のタイトルが巧妙に回避されている。たとえば作品118-1、118-3、119-3である。
本件作品118-1は、その最初の兆候と捉えるべきであろう。
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