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カテゴリー「156 シャコンヌ」の11件の記事

2019年5月11日 (土)

パッサカリアニ短調BuxWV161

ブラームスとブクステフーデの関係を語る上で避けて通れないブクステフーデのオルガン作品。1875年に最初に出版された時の校訂者が、ブラームスの親友で、当代最高のバッハ研究家のシュピッタだった。この時期ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」の作曲とタイミングがあっている。フィナーレにパッサカリアが来ることは周知のとおりだ。

ブクステフーデのパッサカリアニ短調は、自筆譜が失われている。毎度のことだ。バッハの長兄ヨハン・クリストフによる写本によって現代に伝えられている。

作品冒頭低音主題が28回繰り返される。7回ずつ一組の4部構成という端正な設計である。おそらくブクステフーデのオルガン作品としては最も有名な部類に属する。

ああ。何を隠そう、本作の出版をシュピッタに勧めたのはブラームスだった。

 

 

 

 

2019年2月25日 (月)

ト長調シャコンヌ

我が家のパッヘルベルオルガン作品全集のCD6枚組には、大問題がある。パッヘルベルのシャコンヌは下記6曲とされているのに、P41からP43の3曲しか収録されていない。この時点で「全集」とは言えまい。

  1. P38 Cdur
  2. P39 Ddur
  3. P40 Ddur
  4. P41 Dmoll
  5. P42 Fdur
  6. P43 Fmoll

さらに疑問は続く、上記一覧にない「ト長調シャコンヌ」が収録されている。P38からP40までの長調のシャコンヌのいずれかの誤植の可能性もある。ドイツ語か英語のブックレットを熟読すればきっとわかるのだろうが、あきらめている。

ト長調シャコンヌは、「水槽のシャコンヌ」と遜色ないくらい美しい。

2019年2月24日 (日)

水槽のシャコンヌ

パッヘルベルのシャコンヌの代表作をヘ短調だと申したばかりだ。ニ短調シャコンヌは、第四交響曲のフィナーレの始原の姿かもしれないとも書いた。これら短調のシャコンヌは、どっしりと地に足の着いた実直さが売りなのだが、本日はヘ長調シャコンヌP42の話題である。

まさに「水槽のシャコンヌ」だ。ヒーリングミュージックと紹介されたらすんなりとはまる。水槽ではあるのだが、我々聴き手も水中にいる感じ。さまざまな水の音が聞こえる。ゆるやかな流れ、泡立ち、光などイメージが次々に刺激される。ダイナミクス「p」の掌中でニュアンス1つの出し入れに終始する。あらゆる意味でバッハやブクステフーデとは違う個性の発露だ。

名高いニ長調カノンに似たベースラインだというのもなじみやすい。同時にカノンがけして偶然でないとわかる。

2019年2月23日 (土)

ドリアンシャコンヌ

バッハのBWV538は「ドリアントッカータ」の異名で名高い。ニ短調なのに「♭」が付与されていない。教会旋法「ドリア調」然として聞こえるから「ドリアン」とされる。ピアノの白鍵をDから上にオクターブたどった音階と記憶している。

昨日、パッヘルベルのシャコンヌニ短調が、ブラームスの第四交響曲のフィナーレの素材になったバッハのカンタータ150番の下敷きになっているとはしゃいだ。

その楽譜を見て驚いた。

20180313_184706
はっきりと「in d」とタイトリングされながら、左端の調号に「♭」が見当たらない。拍子の「3」という標記もおどろきだ。

つまりこれはドリア調だ。だからドリアンシャコンヌである。

2019年2月22日 (金)

パッヘルベル起源

バッハのカンタータ150番「主よ我汝を仰ぎ見む」は、ブラームス愛好家にとっては特段の位置づけだ。終末合唱の低音主題が、第4交響曲のフィナーレの母体になっているからだ。

同時にバッハのカンタータを俯瞰する立場からも、話題の多い作品だ。現状で申せば、現存する最古のカンタータである公算が高い。

さらに一部の研究家はパッヘルベルとの関係も指摘している。パッヘルベル作品の主題が、先の終末合唱の低音主題に転用されているという見解だ。

えらいこっちゃ。

パッヘルベルのどの作品なのだろう。もしパッヘルベルからの転用が事実なら、第4交響曲フィナーレの起源はパッヘルベルにさかのぼることになる。おそらくパッヘルベルのニ短調のシャコンヌだ。低音の主題がバッハのカンタータ150番にそっくりである。

20180313_184706

この作品とてもいい。このベースライン目当てで聴き始めたがどうしてどうしてとてもいい。

2019年2月21日 (木)

パッヘルベルのシャコンヌ

パッヘルベルのシャコンヌは、ひとまず全6曲とされている。

  1. P38 Cdur
  2. P39 Ddur
  3. P40 Ddur
  4. P41 Dmoll
  5. P42 Fdur
  6. P43 Fmoll

Ddurが2曲ある。P39は16変奏、P40は13変奏という具合に、変奏の数で区別している。このうちもっとも名高いのはおそらく下記のFmollだ。断りなくパッヘルベルのシャコンヌと言えばP43を指すという常識が存在しそうだ。

20180313_184726
曲もいいのだが、楽譜の表紙が下記の通り格調高くてたまらん感じだ。

20180313_184822

2018年1月13日 (土)

生シャコンヌ

一昨日、古澤巌先生のリサイタルに行ってきた。

演目はバッハ。無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番と第2番。休憩をはさんで無伴ヴァイオリンのためのパルティータ第2番。アンコールに無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番から第3曲。

何から話そう。

すごかった。言葉を尽くしたところで、私の筆力の限界をさらすだけだ。

1980年12月14日

千葉大学管弦楽団第48回定期演奏会。

千葉県文化会館。指揮:芥川也寸志。

チャイコフスキー:イタリア奇想曲、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第6番「悲愴」

私は大学3年だった。大学にはいって始めたヴィオラだというのに、このときパートリーダーデビュウだった。若造には荷の重いオールチャイコフスキープログラムだ。

で、ヴァイオリン協奏曲で、独奏ヴァイオリンを弾いてくれたのが、古澤巌先生その人だった。

夏合宿にもおいでいただいた。本番までに何度か練習にお付き合いいただいた。西千葉の駅前で焼き鳥をごいっしょしたこともある。気さくな人柄でドアマチュアとのバカ話にも難なく打ち解けてくださった。

チャイコフスキーのコンチェルトの第2楽章には、独奏ヴァイオリンの主旋律に、弱音器付きのヴィオラがオブリガートをかます場面がある。ヴィオラのパーリーとして、手を伸ばせば届く距離にいた独奏の古澤先生と交わしたコンタクトは生涯の宝だ。

一昨日はこのとき以来37年ぶりの先生の実演だった。プログラムが無い代わりに自らマイクをとってのトーク語りかけが本当に本当に実直で心にしみた。そうしたトークとキレッキレの演奏との落差がこれまた最上の癒しになっていた。

バッハへの敬意が充満する演奏。2曲あるソナタの第3楽章、それからアンコールにもあったアンダンテこそが古澤節の真骨頂だと思った。

シャコンヌを生で聴いたのは初めてだ。目の前で弾かれてみて、作品のすごさがわかった。この内容をヴァイオリン一本でと志すバッハのすごさを思い知られたとでもいうのか。目の前の実演というインパクトは無限だ。ヴァイオリン奏者の息遣い、ボデーアクション、魔法のような弓の操り。

なんだか力がもらえた。開幕したばかりの「バロック特集」をやり抜く力が、腹の底から涌いてきた。

2015年10月28日 (水)

イタリアンショック

いやはや、たまげた。私はショップに出かけた際、ブラームスのヴァイオリンソナタのCDが陳列されているあたりを一通り眺める癖がついている。最近ちょっとない発見をした。即買いだった。

バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータニ短調の終曲。というより「シャコンヌ」と申した方が早い。ブラームスが右手を脱臼したクララのためにピアノ左手用に編曲したことでも知られている。ピアノ伴奏が隅々まで普及したロマン派時代には、「無伴奏」という形態自体がある種のストレスだったと見えて、わざわざピアノ伴奏を付与する試みが見られた。ロベルト・シューマンによるピアノ伴奏付与したCDは既に入手済みだったが、このほど「シャコンヌ」のピアノ伴奏付編曲のメンデルスゾーン版を収録したCDを発見した。

メンデルスゾーンは忘れられていたバッハの再発見に道を開いた人物。マタイの蘇演の指揮者だ。バッハ協会設立の当事者でもある。つまり当時最高のバッハの権威だ。その人の編曲によるピアノ伴奏付与には本当に興味深い。

ヴァイオリニストは、あのシャコンヌをまるまる弾いている上に、メンデルスゾーンのピアノ伴奏がかぶっている。あのシャコンヌに伴奏を施すとはいい度胸をしている。現代では考えられぬ仕打ちだが、どうしてどうして真剣だ。

演奏はヴァイオリンがルドヴィコ・トラムマ、ピアノ、フラメッタ・ファッチーニ。おそらく二人ともイタリア人だ。

そうそう、そのシャコンヌの前にブラームスのヴァイオリンソナタ第1番ト長調が収録されている。よりによってイタリア人の試みとは恐れ入る。バッハとメンデルスゾーンの関係なら、よく知られてもいる。だからシャコンヌの後にはメンデルスゾーンのヴァイオリンソナタが収録されている。バッハ-メンデルスゾーンのコンビにブラームスを持ってくるとは、大した見識だ。

2007年12月16日 (日)

尊重すべき欠落

古典派からロマン派の時代にかけてピアノという楽器の機能が飛躍的に発展したことはよく知られている。音量、音域、耐久性の面で画期的な楽器になった。「旋律」「リズム」「ハーモニー」といういわゆる「音楽の三要素」をたった一人の奏者で概ね不足なく表現することが可能になった。大オーケストラの響きでさえ投影することが出来るようになった。

人々はピアノという楽器の表現力に夢中になり、結果としておびただしい量のピアノ曲が生まれた。その他大編成の楽曲をとりあえずピアノで鳴らしてみて全体を大づかみするという機能も貴重だった。

それは結果としてピアノ以外の楽器が、表現力という面で相対的に地位を下げることにつながった。ピアノによる伴奏があることが当たり前になったことにも現れている。黙ってヴァイオリンソナタといえばピアノに伴奏されることが当たり前なのだ。無伴奏の作品は珍しい例外となって行くのに、ピアノ独奏曲が「無伴奏ピアノのための」と形容されることはない。

だから、ロマン派の作曲家たちはバッハの無伴奏作品を「不完全なもの」と認識した。無伴奏ヴァイオリンのための一連の作品にピアノやオーケストラの伴奏を「私が補ってあげますよ」とばかりに施してしまう例が少なからず現れた。欠落があるのを放っておけないというニュアンスである。ヴァイオリンやチェロ、フルートが無伴奏であることを「補うべき欠落」だと見なしたのだ。

ブラームスは違う。

ブラームスはそれを「尊重すべき欠落」とみなした。ピアノパートの欠落という事実を表面上の問題として退けた。無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータから名高いシャコンヌを編曲するにあたり、作曲者バッハが無伴奏であることで感じた制約、あるいは無伴奏であることを選んだ意図をそのまま保存しようと考えた。原曲を今一度聴いてみるがいい。ヴァイオリン1本の作品ながら、そこには「気高い旋律」「多彩なリズム」「豊かな和声」がある。いわゆる音楽の三要素が何一つ欠けていない。図らずも表現力豊かなピアノに転写するにあたりブラームスは「余計なことをしない」ということを肝に銘じていたと思われる。ピアノの表現力の豊かさが、この場合下手をすると邪魔なのだ。今目の前にある機能を敢えて使わないということは、豊かな機能を目一杯使うよりも数段強固な意志が必要だと思う。

だから「左手のための」なのだ。両手が前提のピアノ演奏から意図的に右手の参加を奪うということを通じて無伴奏という形態を選んだバッハと精神的に連帯したのだ。

クララ・シューマンの右腕の負傷は口実に過ぎまい。クララは、見舞いに送られた曲を見て喜んだと思われる。見舞いが嬉しかったのではない。ブラームスが意図したバッハとの連帯に心から賛同したと思われる。2人の交流が素晴らしいのは、こうした点で阿吽であったことだ。

2007年8月13日 (月)

パッサカリア

長くブラームスに親しんでいるせいか「パッサカリア」という言葉はすっかり耳になじんでいて違和感がない。

大ざっぱな理解でよければ難しい概念ではない。低音主題が形を変えずに延々と繰り返される中、華麗な変奏が繰り広がられる形式のことだ。シャコンヌとの区別が必ずしも明確でないことはたいていの解説書に載っている。

ブラームスの第四交響曲の終楽章がこのパッサカリアになっている。だからブラームス愛好家は「パッサカリア」と聞いても少しも不自然とは思わない。

夏休み前にバッハのオルガン作品全集CD16枚組を入手した。連休中どこにも行かないことをいいことに聞きまくっている。オルガン独特の音圧が癖になりそうだ。解説書を読んでいて愕然とした。現存するバッハの作品中にパッサカリアの題名が奉られている作品は1つしかない。BWV582ハ短調のパッサカリアがそれである。「バッハがこのパッサカリアを作曲した当時、すでにパッサカリアという形式は使い古されていた」と書かれている。だから1曲しかないという文脈である。

「パッサカリア」とはそんなに古い形式だったのかと正直驚いた。ブラームスの第四交響曲は、バッハの時代すでに廃れかけていた形式を丸ごと交響曲の単一楽章にあてがったというこのなのだ。ブラームス親派も戸惑ったことだろう。反対派はむしろ呆然としたと思う。「気は確かか」くらいのノリだろう。古い形式のリバイバルではあるが、それを交響曲のフィナーレに起用すること自体は斬新だ。しかも退屈とは無縁の多様性が実現している。結尾で第1楽章のテーマが回帰するのを聴いたシェーンベルグは驚きを通り越し、熱狂を隠していない。

バッハをも飛び越していたのだ。ブラームスが一またぎして見せた時間の長さを思いやる夏になった。

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