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カテゴリー「171 ピアノ」の24件の記事

2024年2月25日 (日)

ピアノ伴奏はいかが

記事「やっぱりアメリンク」でアンナマグダレーナバッハの音楽帳にBWV82「Ich habe Genug」の第2曲第3曲が収められているとまくしたてた。実は愛聴盤がもう一種ある。ジェイムズマドックスというピアニストが入れていて、ソプラノはイングッド・シュミットヒュッテン。そりゃあアメリンクには一歩譲るけれど、家庭でポロリポロリと弾いている感じがしておさまりがいい。

さらにこちらは2枚組で、同音楽帳の全曲が入っている。ドライブや在宅勤務のおともに好適。

2023年2月 3日 (金)

格闘の痕跡-ピアノ編

たとえば以下のリストをご覧いただく。

  1. シュナーベル 1882/4/17
  2. バックハウス 1884/3/26
  3. ケンプ 1895/11/25
  4. アラウ 1903/2/6
  5. セルキン 1903/3/28
  6. フィシャー 1914/7/5
  7. バドゥラスコダ 1927/10/6
  8. グルダ 1930/5/16
  9. ブレンデル 1931/1/5
  10. グールド 1932/9/25
  11. エッシェンバッハ 1940/2/20
  12. レーゼル 1947/2/2
  13. オピッツ 1953/2/5

私のためにベートーヴェンのピアノソナタを弾いてくれているピアニストの一覧だ。一応は歳の順。この人たちのCDを今持っているということだ。中学時代に買ったLPで演奏者のわからぬものはこのリストにない。LP時代が去ってCD時代になって以降、CDを買い求めた人たちということになる。ベートーヴェンに限ってのリストであることは再度強調しておきたい。

ドイツオーストリア系に極端に偏る。それも古い人ばかり。当時の音楽雑誌の刷り込みがいかに強烈だったかわかる。女子は6番のアニーフィッシャーだけだ。当時誰が好きだったかあまり覚えていない。ロシア楽派が不当に冷遇されているが、もちろん政治的意図はない。

お断りしておくと、今はやりの13人なのは偶然だ。

2022年2月15日 (火)

レンタルピアノ

一流のアスリートに対し、メーカーが用具を無償提供するケースがある。一流選手が使用しているということ自体が、巨大な広告と同じだから、メーカー側に十分なメリットがある。

ウィーン進出以降、ブラームスは瞬く間に楽壇における地位を上げていった。彼が演奏会で弾くピアノには注目も集まろう。メーカーはそこに目を付ける。シュトライヒャーというウィーンのメーカーが、カールスガッセの自宅用にとピアノを1台貸与する。

1872年のことだ。カールスガッセへの転居と同時に貸与されたと解されよう。そしてそれは、ウィーン楽友協会の芸術監督に就任した時期とも一致するのだ。

そのピアノはブラームスが没するまでその部屋にあった。つまり終身貸与である。これが有償だったか無償だったか定かではないが、心証としては「そりゃ無償に決まってンだろ」という感じである。

2021年10月15日 (金)

興奮冷めやらぬ

レーゼル先生のピアノサロンの続き。90分の中、話がブラームスに及んだ瞬間が1度あった。

モスクワ音楽院での修行からドイツに戻った当時、先生はロシア物の弾き手と思われていた。そんな中、共産圏特有の国策レコード会社ドイツシャルプラッテンからドイツ物のオファーが来たという。これまた国策でドイツ作曲家の作品を片っ端から録音するというプロジェクトを進めるためにレーゼル先生に白羽の矢が立ったということだ。そこそこ弾けて若いということが決め手だったとご本人が謙遜気味におっしゃっていた。

そうしたプロジェクトの中にブラームスがあって、それらは一部LPもあったがCDとして80年代には日本にも輸入されていた。共産圏の国策としての外貨獲得の側面もあったに違いない。

19歳でブラームスに目覚め、片っ端からブラームス作品を聴くためにCDを物色ていた私の目に留まるのも当然だ。何しろ当時ブラームスのピアノ作品全てがCDで入手可能なピアニストはまれだった。当然私はレーゼル盤を取り揃えたが、先生20代のその録音は長く私のスタンダードとなった。思うに「最高のブラームス弾き」であると。

今回のサロンコンサートはそのレーゼル先生を生で見ることが出来る機会となった。最後の来日ともいわれていてつくづく貴重だ。ブラームスは先生の広大なレパートリーの一角に過ぎないこともわかった。

あの夜のモーツアルトのソナタをきっと一生忘れない。言葉にしたら壊れてしまう思い出としてそっととっておく。

泣きたい。最後だなんておっしゃらないでくれ。

 

 

2021年10月14日 (木)

レーゼルのピアノサロン

10月11日に都内紀尾井ホールに行ってきた。ペーター・レーゼル先生のトークショウを聞くためだ。通訳を交えての90分。緊急事態宣言明け間も無いこのタイミングで一生の思い出のためにと予約しておいた。

進行役と通訳を兼ねた松本和子先生とレーゼル先生が2人ステージに並んで座る。後ろにはスタインウエイが鎮座する。ラフな服装の上にマスクをかけておられるせいかグッと身近に感じられる。つい最近の地震の話、昨今のコロナの話に始まって、次第に音楽の話題に移ってゆく。あらかじめ列席者から寄せられた質問を交えながら滑らかに話題が展開する。

  • ベートーヴェンとは
  • 指揮者クルトマズア
  • 指揮者ザンデルリンク
  • 東ドイツの録音事情
  • ピアノ演奏におけるドイツとロシアの違い
  • ショパンとは
  • 日本人のピアニストについて
  • 最近の若いピアニストについて

先生の経歴にモスクワ音楽院での研鑽があり、共産圏特有の事情も色濃く反映するエピソード満載だった。謙虚で冷静な印象は片時も崩れなかった。賞賛を強調し批判は超遠回しに最小限という感じ。一番印象に残ったのは、最近のピアニスト評だ。「テクニック的にはみな申し分ない」とおっしゃる一方で、昨今の録音ソースの過剰さが気になると。名演の録音ばかりを聞いてそれが上手に転写されただけのコピーが氾濫すると嘆いておられた。演奏に際しては楽譜から読み取ることが第一で、録音を聞いてばかりではその録音のコピーが仕上がるだけになる。作曲家の思いを正確に読み取ることが大切と。

実演はラフマニノフの楽興の時から1曲と、最後にモーツアルトのイ長調のソナタ。結局全楽章聞かせてもらえた。第一楽章の変奏曲が始まった時震えた。慣れ親しんだ「トルコ行進曲付」だというのに、そりゃあもう凄い。言葉になんかならない。

言葉にしないとブログにならないのだが、どうにも言葉は無力。どうにもならん。

90分がアッという間。二人が舞台袖に立ち去りそうになった時、レーゼル先生が何か言いた気に立ち止まる。「本日のこの貴重な時間は通訳の素晴らしい進行のおかげです」と。照れくさそうに通訳する松本先生に拍手を向けさせるという振る舞い。そう、こうした人柄通りのモーツアルトだった。

 

2021年9月 3日 (金)

連弾王

シューベルトを「裏ワルツ王 裏」と認定した勢いで続ける。作品全体を見渡して感じるのはピアノ連弾曲が多い。短い作品が多いが、数が多いのでCD5枚組になるかもしれない。

ブラームスが世に出たきっかけ「ハンガリア舞曲」はピアノ連弾だった。作品39の「ワルツ」もオリジナルは連弾用だ。管弦楽や4重奏以上の室内楽には連弾バージョンが存在するが、シューベルトはもっと多い印象。D番号順にざっと拾っておく。

  1. 幻想曲ト長調 D1
  2. 幻想曲ト短調 D9
  3. 幻想曲ハ短調 D48
  4. 6つのポロネーズ D599
  5. 3つの英雄的行進曲 D602
  6. ロンド ニ長調 D608
  7. ドイツ舞曲と2つのレントラー D618
  8. フランスの歌による8つの変奏曲 D624
  9. 序曲 ト短調 D668
  10. 序曲 ヘ長調 D675
  11. 3つの軍隊行進曲 D733
  12. グランデュオ D812
  13. 自作主題による変奏曲 D813
  14. 4つのレントラー D814
  15. ハンガリー風ディヴェルティスマン D818
  16. 6つの大行進曲 D819
  17. フランス風主題による変奏曲 D823
  18. 6つのポロネーズ D824
  19. 大葬送行進曲 D859
  20. 英雄的大行進曲 D885
  21. 子供の行進曲 D928
  22. ファンタジーヘ短調 D940
  23. アレグロイ短調 D947
  24. ロンドイ長調 D951
  25. アレグロモデラートとアンダンテ D968A
  26. 2つの性格的な行進曲 D968B

すごい量。シューベルトを「連弾王」とひそかに認定する。念のために申し添えると独唱者一人にピアノ連弾の伴奏というケースは一つもない。

 

2021年8月18日 (水)

伴奏は男か

フィッシャーディースカウ先生の著書で話題になった伴奏の大家ジェラルド・ムーア先生は男性だ。またディースカウ先生と組んで録音を残したピアニストの面々もみな男性だった。

どうも世の中のドイツリートのCDで伴奏を務めるのは男性ピアニストが多い気がする。何故だろう。室内楽の中のピアノパートには、山ほど女流ピアニストが出て来るし、ソリストだって同様だ。コンクールの入賞者あるいは音大のピアノ科の男女比を見れば女性優位ではないかとも思える。

ヘルムートドイチュ先生もご著書「伴奏の芸術」の中でこの点に疑問を提示しており、いくつか仮説も示しておられるが決定的ではない。ディースカウ先生は、この点については沈黙している。我が家のCDコレクションの中で女性が伴奏を務めるケースはたった1枚だ。店頭で歌曲のCDを選ぶとき、作曲家、演奏家をキーにする。伴奏者の性別は気にもしていない。それなのに結果として集まったCDに女性伴奏がほぼないのは、私のコレクションの偏向とは言えまい。録音でだけの現象なのだろうか。実際のリサイタルでは女性伴奏者も多いのだろうか。男性歌手も女性歌手も 伴奏者に男性を選ぶという現象が起きていると考えていいのだろうか。

世はなべて女子の時代だというのに不可解なことだ。

 

2021年8月17日 (火)

華麗なる伴奏者

ご自身の著書「シューベルトの歌曲をたどって」の中で、伴奏者ジェラルド・ムーアを絶賛している一方、実際の録音を見てみると、ジュラルド・ムーア先生ばかりでもないとすぐわかる。我が家にあるCDだけでも以下の通りだ。

  1. アルフレート・ブレンデル
  2. イエルク・デムス
  3. ウォルフガング・サヴァリッシュ
  4. カール・エンゲル
  5. クリストフ・エッシェンバッハ
  6. ダニエル・バレンボイム

ピアノソリストばかりか指揮者としても有名な人、いわゆる大物が惜しげもなく並ぶ。これはフィッシャーディースカウ先生自身が、超大物であることの反映だ。伴奏を務めることがピアノ奏者としても名誉であると考えられていそうだ。1899年生まれのジェラルド・ムーア先生はディースカウ先生にとっても先輩格だが、これらの面々はむしろ後輩にあたる。大歌手の名声が確立した後も、当代の名手と組むことで研鑽を怠らないということだろう。

 

 

 

2021年8月15日 (日)

ジェラルドムーア

フィッシャーディースカウ先生は大著「シューベルトの歌曲を辿って」の中で、シューベルトへの愛を隠していないが、同等な愛情が伴奏者であるジュラルド・ムーア先生にささげられている。1899年生まれで、1972年に同全集が完成されたときは73歳だったはずだ。彼の記述はわずか5行にとどまっているが、心酔ぶりは明らかだ。「紙幅が許せば、この人の記述に1章をささげるべきだ」「シューベルト歌曲全てについて伴奏経験がある世界で唯一の人物」という感動的な前置きに始まり、その演奏の特質を嬉々として列挙する。

  1. リズムの弾み
  2. レガート奏法の技術
  3. テキストへの感情移入

ジェラルド・ムーア先生の伴奏は我が家のささやかなCDのコレクションの中にあっても膨大な量で、相棒の歌手はディースカウ先生にとどまるものではない。

ブラームス歌曲の伴奏においても図抜けた存在だ。ディースカウ先生の掲げた上記の特質は、何もシューベルト演奏に限ったものではなく、ブラームスにおいても威力を発揮していると見るのが自然だ。

 

 

 

2020年9月27日 (日)

ハミング癖

今更グールドの話なんぞ、ネット上には溢れ返っている。グールドのCDは我が家にはかなり揃っている。バッハ中心にいろいろだ。作品解説の冊子には「グールド本人の歌やうなり声がはいっていますがご了承ください」という趣旨の注意書きがほぼ必ず添えられている。

確かに確かに、歌詞が無いから歌とは言うまいが、聞こえる。批判されることもあったが、どうにも止まらなかったらしい。最早名物の域だ。彼の演奏は素人の私に真似ることは出来ないが、ハミングのほうは何とか真似ることが出来るかもしれない。
ハミングの中で気に入っているのは「フーガの技法」だ。聞いてみると意外とと申してはなんだが美声だ。音程もはずれていない。ピアノの楽譜を見ながらこれを完全にまねて歌えたらそれなりに受けが取れるかもと練習している。よく聴くと、ときどき左右どちらの手も弾いていない旋律を歌っているようにも聞こえる。

 

 

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