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カテゴリー「172 ヴァイオリン」の46件の記事

2024年10月25日 (金)

5度上げて無チェロ

我が家の無チェロコレクションの話。元々は申すまでもなくチェロ用なのだが、チェロよりオクターブ高い音が出る楽器ヴィオラにとっても古来おいしい素材だったと見えて、楽譜はもちろんCDも割とよく見かける。

がしかし、これを5度上げてヴァイオリンでとなると楽譜もCDも手薄と感じる。無伴奏ヴァイオリンには、それようにとバッハ自身が用意した渾身の作品群があるから、わざわざチェロ用を移調してまでとは思わないのだろう。無伴奏ヴィオラ作品をバッハが残さなかったから、せめてチェロ用でと思い詰めるヴィオラ奏者とは訳が違う。

ところが、ジュリアーノ・カルミニョーラという名高いヴァイオリン奏者が、その「5度上げ移調版無チェロ」のCDを出していた。

最初はあれっという感じ。無伴奏ヴァイオリン作品の5度下げヴィオラ版よりは慣れない感じ。でも繰り返し聞いていると慣れてくる。もっとCDがあっても良さそうだ。思うに「シャコンヌ」クラスの名曲が含まれないからCDの売り上げが芳しくないという大人の事情もからむ気がする。

2022年8月30日 (火)

合宿の夜

「調和の霊感」op3-9の話題だ。ヴァイオリンのための協奏曲ニ長調である。

1978年8月30日の夜。大学1年、大学オケの夏合宿恒例の室内楽演奏会の出来事だ。北軽井沢の合宿所のホールで、2コ上の先輩がヴィヴァルディのこのコンチェルトを仲間をバックに弾いた。

激しい雨が屋根にあたる轟音の中、それはそれは清らかな演奏だった。当時初心者で始めたヴィオラがものになるかどうかもわからぬ段階で、途方に暮れていた。夏合宿も明日で打ち上げというときに聞いたこの演奏が心にしみた。とりわけ第二楽章のピュアな旋律は長くあこがれとなった。自分はヴィオラであるにもかかわらず、いつかこういう曲が弾きたいと心から思えた。中学時代から継続中のベートーヴェンラブの真っただ中、ヴィヴァルディと言えば中学の清掃時間のBGMだった四季しか知らない偏った価値観に差し込んだ光。まだブラームスへの傾倒は始まっていなかった。

あれから44年。

 

 

 

 

2022年8月13日 (土)

アッカルドマジック

某中古CDショップで強烈な堀出し物に出会った。

ヴィヴァルディの「2つのヴァイオリンのためのソナタop1」と「ヴァイオリンソナタop2」のCDだ。ヴァイオリンを弾いているのはアッカルドだ。op1で第二ヴァイオリンを弾いているのはフランコ・グッリという名手。

 

20170430_183850

たまらん。新入荷の棚にあるのを手に取った。両方で4000円少々。即買い。帰宅後着替えももどかしく再生。唖然とする美しさ。凛とした音。ディスイズイタリア。

こうなるとだ。op5の6つのヴァイオリンソナタもほしくなる。

 

 

 

 

2022年8月12日 (金)

プレ調和の霊感

どのようなヴィヴァルディ関連本を読んでも、「調和の霊感」は、ヴィヴァルディの出世作と位置付けられている。1711年アムステルダムルセール社から刊行された。ヴィヴァルディ33歳だ。これによりヴィヴァルディの名が欧州中にとどろいたとされている。ブラームスで申せば「ハンガリー舞曲」だ。最初の出版作品が必ずしもブレークのキッカケにならないということだ。ドヴォルザークの「スラブ舞曲」は例外と見ていい。

出世作「調和の霊感」は、op3を背負っている。ということはつまりop1とop2が出世作に先行するということだ。

op1は「2つのヴァイオリンのためのソナタ」でop2が「ヴァイオリンソナタ」でどちらも12曲で構成される。

ちなみに名高い「四季」はop8に含まれる。ことほどさようにop3以降は、ブレークの恩恵を受けて、そこそこCDも見つかるのだがop1とop2は、相対的にCDが少ない。イムジチのボックスにも収録がない。

 

 

 

 

2022年7月30日 (土)

これもありか

調和の霊感の12番、ホ長調ヴァイオリン協奏曲のラルゴのこと。

バッハがハ長調に移してBWV976としてクラヴィーア版を編曲している。

これを編曲の対象に選んだバッハに感謝したいとずっと申し上げてきている。我が家所有のCDではピアノで演奏しているのはカツァリスただ一人だ。

いやいやどうして、バロックに慣れた耳には斬新。

 

 

2022年7月11日 (月)

言い訳めいたもの

CDショップの店頭を思い出してみるといい。「ヴァイオリン協奏曲」の売り場だ。大抵は作曲家の五十音順かアルファベット順だ。だから作曲家の時代とは関係なく並ぶことになる。最古のヴァイオリン協奏曲は「四季」で有名なヴィヴァルディあたりとされているが、合奏協奏曲、コンチェルトグロッソから進化したと解説されている。後期バロックに端を発したヴァイオリン協奏曲の万世一系の流れの一翼に、わがブラームスがいる。

と言いたいところだが、そうもいかない。

同じ「ヴァイオリン協奏曲」という表札を掲げながら、バロック時代のそれと古典派以降のそれには明確な違いがある。その違いは主に第一楽章にある。バロック時代のコンチェルトは第一楽章に「リトルネロ形式」を置くのに対し、古典派以降は「協奏曲風ソナタ形式」だ。別名称を与えたいくらいの差なのだが、ごちゃまぜにされている。それはおおむねドイツ古典派側の都合だ。

音楽の中心地イタリアから見たら、田舎もいいところのドイツあるいはドイツ語圏が、音楽的アイデンティティを確立していった18世紀。そのツールになったのがソナタ形式であり、弦楽四重奏であった。国としてのドイツの強大化とシンクロする形で、音楽史上に素知らぬ顔で君臨を始めたドイツ音楽の象徴が「ソナタ形式」なのだ。

その過程で伝統のリトルネロ形式が隅に押しやられ、ソナタ形式の枠に独奏ヴァイオリンが押し込まれていった。ソナタ形式の提示部に繰り返しがあることをいいことに、最初のを管弦楽の提示部とし、繰り返し後に独奏楽器の登場を約することが出来た。リトルネロは独奏と合奏の響きの対象というシンプルな原理であるのだが、ドイツ古典派の論理はそれを許さず、コンチェルトの第一楽章が肥大していった。第一楽章だけでバロックコンチェルトの全楽章の演奏時間よりも長い時間を要求するに至る。

イタリア側からはこうみえているはずだ。

安心していい。音楽史をどう見つめ直したところで、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の価値は微動だにしない。

 

 

 

 

 

 

2022年4月 8日 (金)

タルティーニ

本日4月8日はジョゼッペ・タルティーニの誕生日だ。本日は生誕230年のメモリアルデーということになる。1792年生まれということでバッハより7つ年下だ。

なんといっても「悪魔のトリル」で名高い。夢に悪魔が現れて云々。ビオンディさんのリサイタルで「捨てられしデイド」を聴いた。どちらもヴァイオリンとチェンバロの二重奏なのだが、彼の本領はむしろヴァイオリン協奏曲にある。120曲以上あるのだが、このほど全集を入手した。CD1から律儀に聴いているが、これがなかなか楽しい。キレッキレだ。

 

 

2021年3月13日 (土)

op8-9

「創意とインヴェンションの試み」op8のうちの最初の4曲、いわゆる「四季」を除く8曲に焦点を当てた。そのうちの9番ニ短調がop8-9である。実は大のお気に入りだ。独奏はオーボエでもいいことになっている。オーボエで演奏した場合、かなりのハイテクが求められているという。ヴァイオリン独奏版はRV236で、オーボエならRV454になる。ここいらの複雑さを面倒と思うか醍醐味と思うかでヴィヴァルディ度が推し量れるというものだ。

いわくありげなシンコペーションの連続で立ち上げる第一楽章。モーツアルトの同じ調のピアノ協奏曲を思い出す。

我が家所有のCDは下記のとおり5種類しかない。「四季」は20種類くらいあるのに、この曲は5種類ということは、op8全体を録音せずに「四季」だけを取り上げている演奏家が多いということだ。四季はそれほど「ドル箱」ということだ。

  1. イムジチ アーヨ RV236
  2. イムジチ アゴスティーニ RV454
  3. イタリア合奏団 RV454
  4. ヨーロッパガランテ RV236
  5. アルテデラルコ RV454

これらのうちをヴァイオリン独奏で収録しているのは、上記1と4で、残りはオーボエ独奏だ。4のヴァイオリン独奏はもちろんビオンディだ。困った甲乙つけがたい。

 

 

2021年3月 2日 (火)

ラカトシュ

ロビー・ラカトシュさんは1965年生まれのハンガリーのヴァイオリニスト。というよりロマ音楽の大家だ。

そのラカトシュさんをソリストに据えた「四季」のCD発見。周囲が普通の合奏団だから、ノリノリにはならぬのを承知で購入。恐る恐る聞いてみた。ツィンバロンとの二重奏あるいはせめてピアノとの二重奏にでも編曲されているなら別だろうけど、通常の合奏団を従えてできること多くあるまいとタカをくくっていたのだが、ソロの場面では十分に楽しめる。春の出だしは普通でがっかりしたが、ソロの音質でハッとさせられた。

夏1楽章の緩急交代の妙がハンガリー風で一息つける。ハンガリーの夏は暑いのか、2楽章のけだるさは独特。ツィンバロンのトレモロが聞こえる。フィナーレでは本調子に。

普通に始まる秋の1楽章のソロはアドリブがすごい。ピチカート総動員。89小節から105小節目までのねむりの場面で楽譜にない旋律をppで弾く。第二楽章の最大の特色として通奏低音のツィンバロンがひそやかなアルペジオを敷きつめる。まあこれも続く第3楽章の控えめな予言でしかないとあとから気づく。冬の第一楽章では当然歯の根が合わない。

「楽譜にないことを弾く」という意味では冬の第2楽章が頂点だ。ハンガリーロマたるものこうでなくては。フィナーレ120小節目「東風吹かば」の急速なパッセージから逆算された「滑ってころんで」がきれっきれで心地よい。

全体の印象として、チェンバロの不参加が大きく印象を変えていると思う。代わりがツィンバロンであることを味わうとより印象が深くなる。

 

 

2021年2月25日 (木)

雨の描写

ブラームス作品における雨の描写といえば下記であると、申したことがある。

  1. ヴァイオリンソナタ第1番ト長調op78「雨の歌」
  2. 歌曲「夕立」op70-4
  3. ドイツレクイエム第4曲中間部いわゆる「干天の慈雨」だ。

ブラームス愛好家のチョイスとしては自然だと思うが、世の中のクラシック愛好家のチョイスとなるとヴィヴァルディの「四季」から冬の第二楽章が高い確率で選ばれそうだ。

私とて大好きな曲である。思うに「ヴィヴァルディって天才」だ。雨の描写自体はピチカートなのだと思う。独奏ヴァイオリンは、暖炉の前のくつろぎの描写だろう。冬の雨なのに雪にならないのはイタリアならではである。梅雨時の雨ではないところに欧州らしさも感じる。

 

 

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