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カテゴリー「181 トランペット」の3件の記事

2016年10月13日 (木)

タクシス家

欧州郵便事業を確立したのはハプスブルク家のマクシミリアン1世だ。自らの居城インスブルックと、息子のフィリップ美王の住むブリュッセルの間に定期郵便を開設したのが始まり。ネーデルランドとミラノに所領を有した彼は、統治の効率を上げるために情報インフラの整備に着手した。16世紀初頭の話だ。

イタリアはベルガモのタッシス家に命じて皇帝の郵便物を無料で配送するよう命じたのだ。当初郵便は公用に限られていたが、ミラノとネーデルランドは欧州随一の貿易の拠点だから、有力商人たちの郵便ニーズがあったのだ。程なく一般郵便も認められた。タクシス家は、皇帝の信任厚く、事業の独占権と世襲権を認められて勢いに乗った。やがて貴族に列せられてトゥルンウントタクシス家となる。

以降、トゥルンウントタクシス家は、宗教改革、30年戦争などの幾多の困難を乗り越えて、血縁関係を縦横に駆使しながら現代まで続く郵便制度の基礎を築いた。欧州の偉人研究において確固たる位置づけにある書簡は、信頼性高くかつ安価な郵便制度がその基礎になっていた。研究者によってはこれを、グーテンベルクの活版印刷に匹敵するとまで評価している。

2016年4月29日 (金)

ラッパ信号規定

ブラームスに限らず伝記作者の一番の資料は手紙や日記である。本人直筆であれば尚更価値が高い。ブラームスは家族や友人との情報交換のほかに、出版や演奏に関するこまごまとした打ち合わせを手紙で行った。後世の研究家にとってこれが宝のヤマである。あまり語られないことだが、当時の欧州の郵便の充実には目を見張るものがある。

道路事情や治安の向上により、郵便の信頼性は見違えるばかりになる。駅伝式のリレーによって、急行便なるものも生まれスピーディーな対応も可能になる。19世紀はそういう時代だった。郵便馬車が交換駅に近づくと、それを遠方から伝えるためのラッパが吹かれる。次の馬車を予め用意してもらうためだ。そうした場合の合図の音形が法律で定められるところがいかにもドイツっぽい。1828年プロイセンではじめて「ラッパ信号規定」が制定された。目的別に12種類の音形が決められた。プロイセン近隣の諸邦にまたたくまに広まった。1839年のバイエルンの規定音形を作曲したのがRシュトラウスの父だとされている。

つまりこれがポストホルンだ。

プロイセンの12のうち6つがドイツ帝国に引き継がれて20世紀まで存続した。

  1. 騎馬便の出発と到着
  2. 急行便の出発と到着
  3. 特急便の出発と到着
  4. 至急便の出発と到着
  5. 駅逓馬車の出発と到着
  6. 緊急信号

一説によれば、ベートーヴェンはカールスバートで聞いたラッパ信号を交響曲第8番の第3楽章に取り入れたという。

スペシャルコンサート まであと16日。

2009年4月 8日 (水)

無伴奏ごっこ

伝ブラームス作「トランペットまたはホルンのための12のエチュード」をヴァイオリンで弾いて楽しんでいることは3月9日の記事「悪知恵」で述べた。

あれからかれこれ1ヶ月。根拠レスな直感で申し訳ないが、すっかりブラームスの真作のような気がしてきた。「弾いてて飽きない」が唯一の根拠だ。ずっと弾いていてデジャブに見舞われた。どこかで経験した感覚なのだ。

今日、それが何だか判った。判ってみるとこれが何ともお叱り覚悟な妄想だ。

バッハの無伴奏チェロ組曲をヴィオラで弾いて遊んでいた時の感覚に似ているのだ。もちろん一番の要因は無伴奏だ。バッハの域に及ばないが、12のエチュードがどうも舞曲の集合に見えて仕方がない。プレリュードあり、アルマンドあり、メヌエットあり、ジークあり、ブーレありだ。

後年名高いシャコンヌをピアノ左手用に編曲するくらいだから、バッハ一連の無伴奏作品をよく知っていた。問題は17歳というこの時期に既に知っていたかだ。

もしかしてバッハの無伴奏作品が念頭にあったのではないか。無伴奏楽器による古典舞曲の集合体の体裁を採用したエチュードは、とりわけ無伴奏チェロ組曲と同じベクトルを感じる。まさかとは思うが一応言っておく。

ホルンやトランペットのためのエチュードをヴァイオリンで弾いて、こんなに面白いというのは、何とも罰当たりな話である。これを使って練習してホルンやトランペットが上手くなるのか疑問である。

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