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カテゴリー「187 オルガン」の144件の記事

2021年5月 6日 (木)

踏みっぱ

「踏みっ放し」の短縮形。よく娘たちが使っていた言い回しだ。「置きっ放し」を意味する「置きっぱ」や、「出しっ放し」を意味する「出しっぱ」がその代表だ。

ドイツレクイエム第3曲の解説文が末尾のフーガに言及する際に「保続低音」が引き合いに出される。最低部でずっと維持される「D」音の引き延ばしのことだ。ドイツ語では「Orgelpunkt」と呼ばれると付記される。「オルガンポイント」だ。

ドイツレクイエムに親しんで長いからこのことはよく知っていたがオルガンとの関係を軽く考えていた。オルガンの3段楽譜による記譜に慣れてきて初めて実感が伴った感じがする。

オルガン楽譜の最下段、足鍵盤を踏みっ放しの意味だった。左右の手がさまざまな音を弾き続けている中、最低部で同じ音が委細構わずに持続することだ。上2声が協和しない音に触れる瞬間があろうとお構いなしだ。

ブラームスの音楽界での位置付けを決定づけた出世作ドイツレクイエムの核心に、ずっしりと鎮座する確信に満ちたオルゲルプンクトだ。同作品がオルガンの参加を任意にしているのはむしろ控えめだ。ここにオルガンの「踏みっぱ」がなくてどうするというのだ。

2021年5月 4日 (火)

オルガン任意

ドイツレクイエムの編成のお話。ドイツレクイエムの演奏に参加する楽器で、オルガンは任意とされている。「おってもおらんでもよろしい」ということらしい。

周知の通り、同作品はレクイエムの文言こそタイトルに踊っているものの、ルターの独訳聖書からテキストを採用しており、典礼のための音楽とはせずに、あくまでも音楽会での演奏が前提とされている。だからオルガンの参加を必須としていないのかとも思う。op55の「勝利の歌」もまたオルガン任意だ。作品番号が近い合唱作品op53「アルトラプソディ」やop54「運命の歌」は、オルガン不参加である。

バロック特集や、旅行の影響で、私の脳内のオルガンの位置づけが変わった。オルガンへの深い共感は、バッハの聴き方の幅が広がったばかりか、プロテスタントの信仰、教会の知識を増加させた。ひいてはドイツバロック音楽を聴く上での姿勢に決定的な違いを生じさせた。そうした脳みそでドイツレクイエムを聴くことで思ってもみなかった視点が新たに加わった。

やけに「オルガン任意」が気になる。是非入れてほしい。我が家所有のCDの中でオルガンが参加しているのはジュリーニ指揮のウィーンフィルだけだ。ところが、このムジークフェラインのライヴ録音ではあまりオルガンが聞き取れない。オルガンが聞き取れないことがストレスにさえなる。

一方、ピアノ連弾版や2台のピアノ版のCDがあることを思うと、いっそ独奏オルガン版がほしくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年4月30日 (金)

ハウプト不在

「ドリアントッカータ」の異名をとるBWV538のお話だ。ドーヴァー版の楽譜には奇妙な表示群が存在する。たとえば以下の通り。

20190310_201832
「Oberwerk」「Positiv」と読める。3段楽譜の上段と中段に頻発する感じだ。つまりこれはオルガンの鍵盤指定である。「Oberwerk」と記されていたら、そこからオーバーヴェルクの鍵盤で弾きなさいという意味だ。本作は冒頭からずっとこの調子で「Oberwerk」「Positiv」の表示が交代で出現する。文字通りなら主鍵盤であるハウプトヴェルクを使う暇はない。

念のためブライトコップフの新版を確認したが初回以降は「O」「P」と略記されているものの同様の状態だ。

こんなことになっているのはBWV538だけである。これがバッハ本人の意思なのか、バッハの演奏を聴いていた人の書き込みが記譜されるに至ったのか、気になる。

2021年4月28日 (水)

四段鍵盤

北ドイツで隆盛を誇った大オルガンとは、複数のオルガンの集合体と目される。演奏者はコンソールと呼ばれる演奏台に座ったまま、手元の鍵盤を弾き分けることで複数のオルガンを操作できるという寸法だ。鍵盤の数は足鍵盤を除いて概ね2~4だ。

各々の鍵盤はそれぞれ別のパイプ群を操作し、パイプの位置や機能によって、およそ以下のように命名されている。

  1. ハウプトヴェルク 主鍵盤と訳され、奏者頭上のパイプが鳴る。
  2. オーバーヴェルク 文字通りハウプトヴェルクのさらに上にパイプが据えられる。
  3. リュックポジティヴ 演奏者の背後。これにより聴衆から演奏者が隠れる。
  4. ブルストヴェルク ハウプトヴェルクの下、奏者の胸の位置にパイプが置かれる。

三段の時は、これらのうち大抵ブルストヴェルクかオーバーヴェルクが省かれる。18世紀後半以降リュックポジティブを欠くオルガンが建造されるようになる。もちろんこのほかに足鍵盤が装備されており、奏者両翼にパイプが屹立する。

20190312_110916
概ねこんな感じか。

いやはや今となっては懐かしい、ハンブルク・ヤコビ教会シュニットガー制作の大オルガンは四段鍵盤らしいのだが、同地を訪れたときに演奏台の写真が撮れていない。

 

 

 

 

 

2021年4月27日 (火)

ニーノロータ

20世紀イタリアの作曲家だ。映画音楽の分野ではかなりな有名人。「ゴッドファーザー」「太陽がいっぱい」など名旋律が多い。中学校時代私も大好きだった。このほどふとした弾みで思い出した。「スターウォーズ」のオルガン版が欲しくて購入したCDに、ニーノロータ作曲の「オルガンのためのソナタ」が収録されていた。

20181110_090309
いやいや楽しいCDだ。冒頭はひとまずバッハだ。「トッカータとフーガニ短調BWV565」が枕替わりである。ダースベイダーのマーチは、オルガンで弾かれると説得力がある。それに加えてニーノロータとは恐れ入る。

 

 

 

 

2021年4月22日 (木)

チェックポイント

オルガンのためのトリオソナタ変ホ長調BWV526のお話。とりわけ第二楽章だ。全トリオソナタ6曲中で、もっとも好きな場所だ。

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この世の物とも思えぬ繊細なアルペジオ。新しいCDを入手したとき、まずはこのラルゴを聴く。ここが気に入ると大抵安心できる。だからチェックポイントだ。

2021年4月20日 (火)

両手と足のためのトリオソナタ

なんという発想だろう。オルガンに足鍵盤があるという一点から広がる着想。右手と左手に加えて足を使うというオルガンの特徴を生かし切るとはこういうことだ。バロック時代の室内楽の代表格であるトリオソナタは通常4名の奏者を必要とするのだが、これらを一人のオルガン奏者で達成してしまおうという魂胆だ。これに匹敵するのは、「両手とハミング」のグールドくらいか。

  1. BWV525 変ホ長調
  2. BWV526 ハ短調
  3. BWV527 ニ短調
  4. BWV528 ホ短調
  5. BWV529 ハ長調
  6. BWV530 ト長調

とりわけ楽譜を見ながら聴くと楽しみが倍増するのだが、オルガニストの苦労も透けて見える。ホリガーさんによる室内楽版を聴くと室内楽としての完成度も相当な域にあるとわかるけれど、これを一人でという難しさはまた別格だ。音楽的人格がすべて試される感じ。無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌにも匹敵してはいまいか。

 

 

 

 

2021年4月17日 (土)

パッヘルベルのピカルディ

ブクステフーデのオルガン自由曲、短調の作品全てがピカルディ終止を採用していると驚いた。しからばパッヘルベルはと話を広げる。

我が家のドーヴァー版のパッヘルベルオルガン作品全集収載のオルガン自由曲45作品のうち、短調の作品は18曲ある。

このうち17曲がピカルディ終止だった。わずかにニ短調のフーガだけが短調のまま終止する。悩ましい結果だ。このニ短調の解釈をどないするか。

さりとてブクステフーデ、パッヘルベルというバッハの先輩が、ピカルディ終止ほぼ100%の採用だということだ。

2021年4月16日 (金)

ブクステフーデのピカルディ

バッハのオルガン自由曲についてピカルディ終止の採用状況を考察したのだから、それをブクステフーデに展開する。

BuxWV136からBuxWV176まで、42曲のうち、断片のBuxWV154とフリギア調を採用するBuxWV152を除外し、長調の作品22曲を控除した18曲の短調作品が母数となる。

ああ。

おどろくべき結果となった。

ブクステフーデの短調のオルガン自由曲は全てピカルディ終止を採用していた。わずかながら短調のまま終わる作品もあったバッハと違い、一つの例外もなくピカルディ終止だった。

2021年4月15日 (木)

バッハのピカルディ

しからば 、バッハのオルガン自由曲の中にピカルディ終止を用いた作品がどれだけあるのだろうか。

BWV525からBWV591まで67曲をベースに考える。この中から断片が伝承されるBWV573を除く66曲をひとまず意識する。この時点で長短比率がピタリ50%ずつになることに軽く驚かされる。短調作品33曲の中から最新の研究によりバッハ作でないものを控除する。すなわちBWV554、555、558、559の4曲をのぞいた29曲となる。

この中には我が家に楽譜がない作品もあるにはあるが、幸いピカルディ終止かどうかは聴けばわかるのでカウントは容易い。

結論を申せば18曲がピカルディ終止だ。54.4%に相当する。

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