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カテゴリー「191 弦楽器」の10件の記事

2010年6月10日 (木)

糸杉

全部で18曲からなるドヴォルザーク最古の歌曲集。1865年7月に作曲された。女優ヨゼフィーナへの失恋と関連づけて語られることが多い。

1887年になってドヴォルザークは、この18曲のうち12曲を弦楽四重奏に編曲している。ピアノ伴奏部分を弦楽四重奏にしたのではなく、歌のパートもろとも弦楽四重奏に移した。緩急自在の曲想が繰り広げられる。弦楽四重奏の第1楽章以外どこにおかれても不思議ではない完成度だ。

そもそもドヴォルザークが過ごした19世紀後半は、ピアノ小品が流行した。ベートーヴェンのピアノ作品の中心はピアノソナタだったが、ロマン派の時代にはいると風向きが変わる。管弦楽の世界では脱交響曲の傾向も見えるからこれらを脱ソナタ形式と見ることが出来る。ベートーヴェンの創作の3本柱のうち交響曲とピアノソナタの両分野で、「脱ソナタ形式」の風潮が見られたということだ。3本柱の残る一角は弦楽四重奏だ。弦楽四重奏の形態を採用した小品は何故か生まれていない。管弦楽とピアノで起きたことが弦楽四重奏で起きていないのだ。

実はドヴォルザークはその例外だ。糸杉に限らず、弦楽四重奏の形態を採用した小品を数多く生み出した。自作の編曲も多いが出来映えを見るとよくなじんでいる。ピアニスト出身の作曲家が多い中、ドヴォルザークはヴィオラまたはヴァイオリンだ。ヴィルトゥオーゾではないアンサンブル奏者としての経歴が、弦楽四重奏の小品群に走らせたと見る。

おそらく家庭でのアンサンブルを考えると、正規の弦楽四重奏はいささか重いのだ。たとえばベートーヴェンの後期やプロシア王セットを気軽にと言う訳には行くまい。肩の力を抜いて楽しめる弦楽四重奏には、バカにならないニーズがあったに決まっている。さてはジムロックの入れ知恵かと思ったが、濡れ衣で出版は1921年だった。

2008年7月10日 (木)

ヴィブラート

弦楽器奏法の技術書では言及されぬことのない奏法。過度のヴィブラートは慎む等の表現が踊ることも多いが、現代ヴァイオリン奏法に無くてはならないテクニックだと思われる。「指先のヴィブラート」「手首のヴィブラート」「肘のヴィブラート」等の分類があるとされており、名人ほど自在に使いこなす。表現に潤いと幅を与えるとされている。

ピアノでは用いられないものの、弦楽器の奏者にとっては必須のテクだということが解るが、実は疑問がある。楽譜の上には「ヴィブラートをかけろ」あるいは「ヴィブラートをかけるな」の指示は一切現れない。少なくともブラームスの楽譜上にはない。だから「ブラームスの辞書」に収録されていない。

昨今クラシック音楽界では「楽譜に忠実なこと」が尊ばれる。コンクールでは特にその傾向が増す。マラドーナ国際コンクールでのだめはペトルーシュカに即興で自作のフレーズを挟んだために選外となる。その即興がどれだけ魅力的でも論外だそうだ。ピアノで言えばペダルの踏みはずし、弦楽器で言えば弓の上げ下ろしまで楽譜に忠実を求められているのにヴィブラートだけが完全に自分の判断というのは怖いものがある。

楽譜に記されていないヴィブラートを演奏者の判断でかけることは御法度になっていないばかりかセンスのいいヴィブラートをかけることはプラスの評価につながるのだ。楽譜にないポルタメントが失笑のきっかけになることが多いのと対照的だ。

バッハの時代にはヴィブラートをかけないのが当たり前だったから楽譜には書かれていない。ブラームスの時代はかけるのが当たり前だから楽譜には書かれていないと考えていいのか判然としない。

ヴィブラートの特別扱いがどうも気にかかる。この先ヴィブラートがポルタメント同様に廃れてしまい、かけないことが当たり前の時代がやってくるのか興味は尽きない。

2008年2月 7日 (木)

重音奏法

弦楽器においては複数の音を同時に発する奏法。

弦楽器の華麗なテクを披露する曲では日常茶飯に見られる。

一方、娘らのヴァイオリンレッスンでは割と早くから取り入れられて驚いた経験がある。先生によれば、重音奏法の練習には以下の通りいくつかのメリットがあるという。

  • 複数の音を同時に出すときには、単独の音を発する場合よりも脱力が大切となる。きれいな響きを聞き取るためにも脱力が必須となるのでコツが習得しやすい。
  • はまったときにアゴを通じて届く独特な響きを体験させて、音程が合うとはどういうことか刷り込ませる。
  • チュウニングを早くに教えられる。
  • 将来より高度なテクを要する曲を習得するためにも早く始めるに越したことはない。

なるほどである。ブラームスは協奏曲にまで行かなくても室内楽の中に華麗な重音がいくつか見られる。ヴァイオリンの事情には疎いがヴィオラに印象的な重音奏法が求められている箇所をいくつか挙げてみる。

  1. すぐ思いつくのは、ピアノ四重奏曲第1番だ。おいしい重音奏法の巣だ。まずは第3楽章の冒頭。ブラームスの室内楽屈指の名旋律をヴァイオリンとチェロが奏するのだが、その影でヴィオラが複雑な重音に挑んでいる。特に3小節目のえぐるような低いEsの音は味わいが深い。こうして立ち上がる第3楽章は手品のような重音に溢れている。弾ければおいしいという感じだ。
  2. 同じくピアノ四重奏曲第1番の第1楽章355小節目も第1楽章の結尾を飾るに相応しい。
  3. ピアノ四重奏曲第3番の第1楽章142小節目にも目の覚めるような重音がある。重音でなければならぬ必然性においては随一の場所だ。164小節目からの後半部と微妙に音程が違うのが悩ましくも美しい。
  4. ピアノ四重奏が続いた。弦楽六重奏第1番にも印象的な重音が存在する。第2楽章113小節目だ。小節の頭でD線の開放弦に触るだけなのだが、バグパイプのような効果が美しい。
  5. ヴィオラソナタ第1番の第1楽章。147小節目から4小節間にも重音が密集している。有り難味において屈指の場所だ。なぜならこの曲オリジナルはクラリネットソナタである。つまり重音なんぞ演奏不能だ。ブラームスが自らヴィオラ用に編曲するにあたって作り込んだ重音だからだ。

2008年1月22日 (火)

独奏する弦楽器

管弦楽曲において、弦楽器はいつも合奏させられている。同じ楽譜を複数の奏者が弾くという意味だ。もちろんヴァイオリン協奏曲やチェロ協奏曲の独奏者は独りで弾くが、そうしたケースを除けば基本的に弦楽器は合奏である。独奏した場合と合奏とでは、明らかに音色が違う。やがて作曲家たちはその音色の違いに着目し、管弦楽作品中に弦楽器の独奏を意図的に配置するようになる。時代が下ってオーケストラの編成が大きくなればなる程、音色の落差が大きくなって行くから、変化をつけたい作曲家に重宝されるようになった。

ベートーヴェンの交響曲には見あたらなかったと思うが、「ミサソレムニス」にヴァイオリン独奏がある。シューマンの第4交響曲にもドヴォルザークの8番にもヴァイオリン独奏がある。新世界交響曲には弦楽器のトップ奏者たちによる繊細なアンサンブルも用意されている。マーラーの五番にはヴィオラ独奏とヴァイオリン独奏が出てくる。忘れてはならないシエラザードの超絶な独奏ヴァイオリンも有名だ。ラロ「スペイン交響曲」やベルリオーズ「イタリアのハロルド」などはもはや協奏曲の域だ。

もちろんブラームスにもある。

  1. ドイツレクイエム第5楽章49小節目 チェロ独奏
  2. 交響曲第1番第2楽章90小節目ヴァイオリン独奏
  3. ピアノ協奏曲第2番第3楽章冒頭チェロ独奏
  4. ピアノ協奏曲第1番第2楽章99小節目ヴィオラ独奏

これらの曲では演奏終了後、ヴァイオリン奏者やチェロ奏者が特別な拍手を受ける場合もある。ラヴェルのボレロの演奏後スネアドラムの奏者がそうされるようにである。CDによっては名前が別記されているケースもあるから相当な出番だと認識されていると判る。

管弦楽に出現する独奏弦楽器の出番を見渡したとき、そのカッコよさにおいて上記2番3番は図抜けているように思う。プレイヤーのテクニックの披露という側面よりも、その場所が独奏でなければならぬ必然の方が勝っているという意味で絶妙のソロだと思う。そしてそれでもやっぱりカッコいいというのが最大の魅力である。このあたりのバランス、勘違いが起きがちであるが、ブラームスは踏み外していない。

2007年11月29日 (木)

開放弦

弦楽器において、左手で弦を押さえず音を出すことを「開放弦を鳴らす」と呼んでいる。ヴァイオリンを例にとると高い方から「E、A、D、G」となる。楽譜上では、音符の上または下に数字の「0」を書き添えることで「開放弦を使用せよ」の合図となる。開放弦を使用しないと出せない最低音だけは、この「0」が省略されるのが普通である。

習得の初期の段階において「開放弦」に関連していくつかの約束を教えられる。

  • 上行の音階の時は開放弦を使う。
  • 反対に下降の時は第1ポジションの4の指を使う。
  • 第1ポジションで上行するとき、開放弦が鳴り始めるまで直前の3の指を弦から離してはいけない。
  • 一番高い弦(ヴァイオリンならE)は金属音がするので出来れば開放弦を使わないようフィンガリングやポジションを工夫する。

実際にはこの原則通り行かないこともしばしばで、上級者ほど開放弦を上手に使っている。開放弦は使い方次第だということがだんだん判ってくるという寸法だ。開放弦だからといって音質が変わってしまうのは、弦のせいではなくて、むしろボウイングのせいであることがほとんどだという。実際のところ開放弦の制約はヴィブラートがかからないことくらいではないだろうか。チューニングさえ完璧なら、開放弦では絶対に音程をはずさずに済むのも心強かったりする。

古今の作曲家はみな、開放弦のこうした性格を知っていた。そしてむしろそれを利用した形跡さえある。重音奏法をする際、いくつかの音が開放弦であることは、とてもよくある話だ。ブラームスにもこうした意図的な開放弦の使用例がある。

  1. 弦楽六重奏曲第2番第1楽章冒頭のヴィオラ
  2. 弦楽四重奏曲第1番第3楽章のトリオのヴァイオリン
  3. 交響曲第1番第2楽章54小節目2拍目裏のヴィオラ
  4. 交響曲第4番第4楽章77小節目のヴァイオリン

上記のうち1,2,4の3例は指で押さえて出す音と開放弦で出す音を急速に交代させる用法になっている。六重奏の方は半音違いの音だが、四重奏の方は同じ音だ。同じ音を移弦して弾くことにより特殊な効果を発生させている。3番目は、大したことはないのだが単に珍しいだけの場所だ。ハ音記号の五線の下に引かれた2本目の仮線に貫かれた音符が書かれている。黙っているとヴィオラのC線の半音下のHなのだが、これに♯がついて実音Cとなるので、C線開放弦でOKという寸法だ。この位置に音符が来るとギョッとする。

思うにブラームスが用いた最も印象的な開放弦は第1交響曲中にある。第4楽章61小節目のヴァイオリンだ。ベートーベンの第九交響曲の主題との関連ばかりが噂される例の旋律だ。Gの開放弦がアウフタクトに配置されCに跳躍する。第1交響曲も大詰めという気分にさせられる瞬間だ。このころになるとチュウニングが狂っていることも危惧されるが、ブラームスは臆する様子もない。第4楽章の前にチュウニングするなど考えにくい中ではあるが、このG線の開放弦の音がしこたま強調される作りになっている。

2007年6月 7日 (木)

トレモロ

弦楽器の奏法の一つ。

4分音符、8分音符、16分音符、32分音符という具合に1拍を細かく分割して行くと、一つ一つの音はどんどん小さくなって行く。やがてある一点から1拍の中にキチンと音を盛り込めなくなる。そこまで行くと拍が数学的に正しく割られているかということよりも、チリチリという刻み独特の響きの方が重要になってくる。このチリチリした状態をトレモロという。

ブラームスと同時代にウイーンにあって、いわゆるワーグナー派の筆頭に祭り上げられて、ブラームスのライバルと目されているブルックナーの作品にはこのトレモロが多い。いやむしろトレモロはブルックナーを象徴する風景だったりもする。弦楽器のトレモロが作り出す霧の中をホルンが朗々という立ち上がりには「ブルックナー開始」という異名まで奉られている。弦楽器奏者はあまりトレモロが多いと疲れる。ppならばともかく、ブルックナーの息の長いクレッシェンドの果てに鎮座するffまでトレモロで弾かされることもあるのだ。

だからという訳ではないと思うが、ブラームスの管弦楽曲にはあまりトレモロを見かけない。第4交響曲やアルトラプソディが思い浮かぶ程度だ。ブラームスはどちらかというと拍数通りにきっちり刻ませたいのではないかと思う。

思うにブラームス最高のトレモロは室内楽に現れる。ピアノ三重奏曲第1番の第2楽章233小節目のヴァイオリンだ。スケルツォの中間部トリオの後半に相当する。朗々と旋律を奏でるチェロを横目に、かなりのハイポジションでオクターブの重音のトレモロが高揚感を煽り立てる。初版でも改訂版でもキッチリ味わうことが出来る。

2007年4月23日 (月)

張力

弦楽器の弦の話だ。

ヴァイオリンの場合、楽器の胴長は35.5cmと決まっている。だから弦もその大きさの楽器に張られることを想定して制作されている。当たり前の話である。

しからば、楽器の大きさに決まりがないヴィオラの弦はどうなっているのだろう。弦楽器ショップに行ってヴィオラの弦売り場を見回しても、L、M、Sの表示は見当たらないから、ヴィオラの弦は、使用する楽器の大きさに関係なく一種類しかないのだと推定できる。懸賞に応募してプレゼントされるTシャツのサイズが大抵「F」つまり「フリーサイズ」になっているようなものだ。この「F」フリーサイズを「どんな体格の人間でも自在にフィットする」という意味に受け取っている奴はいない。大抵「L」あたりに作られているようだ。思うに「L」と表示してしまうと、「Sは無いのですか」という問い合わせが発生してしまう。無償で提供するTシャツの品揃えなどしたくもないという心理が見え隠れする。

ヴィオラの弦はどうも胴長で41~42cmあたりのヴィオラを想定して作られているらしい。弦楽器の弦は輸入物ばかり目に付くが、「日本人の体格に合わせて」などという微調整が施されている気配はない。日本の事情にあわせて右ハンドルを作ってくれている自動車業界とは違うようだ。

胴長で41~42cm、弦長でいうと37cm程度の楽器に張られることを前提に設計された弦を胴長39cmのヴィオラに張ったらどうなるか。張力が弱くなるということらしい。張力が弱くなると「音量」と「音の張り(明るさ)」が落ちるとされている。ガット弦がスチール弦やナイロンガットに取って代わってきたのは、より強い張力を求めてであるとも言えるらしい。だからこの部分を補うために小さな楽器に高張力の弦を張るニーズが存在するという訳だ。メーカーは「ハードテンション」「シュタルク」と称されるバリエーション仕様でこれに対応しているという訳だ。

張力が高いと言うことは良いことばかりかというとそうでもない。レスポンスが落ちるという副作用もあるという。つまり「弓のひっかかりが悪い」という状態を引き起こしかねないということだ。

私のヴィオラは胴長は45.5cmで弦長は40.5cmだ。「ライトテンション」の弦を薦めてくれたお店の人の考えがやっと呑み込めた。

弦の設計時想定よりも恐らくは大きな楽器なので、普通の弦を張ると張力が大き過ぎてしまう。弓の性能やテクニックにもよるが、楽器を鳴らすのが一苦労という状態が想定される。あるいは大き過ぎる張力が楽器本体に及ぼす悪影響も考えてのことかもしれない。楽器自体が大きいことで張力の確保は十分と考え、レスポンス重視に振ったセッティングと言うことが出来る。なんだかF1のタイヤの選択みたいだ。

おかげで今のところ私の楽器からレスポンスの悪さを感じることはない。音量にも満足している。残念なことに音程の良くなる弦はどこにも売っていない。

「ブラームス専用弦」でもあったら即買いなのだがいかがなものだろうか。

2007年1月31日 (水)

ボウイング

うーんと単純に言ってしまえば、弦楽器の演奏は、弓を動かす右手と弦を押さえる左手の高度な連携と見ることが出来る。そのうちの右手の所作を総称してボウイングと呼んでいる。その意味するところは深くて広くて重い。これを細かく正確に定義するなど私の手には余る。名人ほどボウイングが上手いとだけ申し上げておく。

がしかし、弦楽器の演奏家どうしの会話の中にはもっと軽い意味で「ボウイング」という言葉が使われていることが多い。

弓を手で持つ場合弓の端を持つ。持った手に近い側を「元弓」といい、遠い側を「先弓」という。弾く場合、元弓側を弦に載せて先弓の方に動かすことを「ダウンボウ」略して「ダウン」という。その逆は「アップボウ」略して「アップ」という。弓の動きは大別すると「ダウン」と「アップ」の2つに分類される。弓の動く方向だと思えばいい。

与えられた楽譜を楽音に翻訳する際、ダウンボウを用いるのかアップボウを用いるのか決めることを「ボウイングを決める」という。「ボウイング」という単語はこの意味で使われることが多いのだ。作曲家が楽譜で伝えようとしたニュアンスを音にするにはどちらで発音するのが最も適切かで決定される。オーケストラでは同じパートの中でボウイングがバラバラであることはみっともないこととされている。別のパート間でも近似したニュアンスを表現するには同じボウイングであることが望ましいとされている。

ダウンとアップの2種類の組み合わせなのに、膨大なバリエーションが考えられる。「同じダウンボウ」であっても、弓のどの部分で弾くかによってバリエーションがある。弓の弾力を利用して弾ませるかどうかの区別もあるから、単純なものではない。指揮者の指示、コンマスの見解、演奏の伝統、奏者の技量、音量、テンポ、見た目などなど様々な要素から決定されるが、不思議と作曲家自身が指定することは少ない。

ブラームスのヴァイオリン協奏曲の第2楽章の55小節目、管弦楽側のヴァイオリンパートにある最後の2つの16分音符はダウンボウの連続で弾くよう楽譜に明記されている。ヴィオラにもある。

ワシントン国会図書館所蔵の自筆譜がネットで公開されているという情報が寄せられたので確認したところ、この部分のダウンボウの指示が自筆譜にもハッキリ書かれていることがわかった。「ブラームスの辞書」280ページにある「poco a poco piu largamente」の記述中で提起した疑問に決定的な回答をもたらす情報であった。

貴重な情報をお寄せいただいた「しばっち様」に対する感謝の気持ちを盛り込んだ記事である。ネット社会様々である。

http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2005/07/post_7ff9.html

2006年12月22日 (金)

魂柱

これで「こんちゅう」と読む。クワガタやカブトムシと紛らわしい。詳しいことは判らぬが弦楽器に無くてはならない部品とのことだ。弦楽器のf字孔から覗き見ることが出来る。駒の直下に立っているといっても、楽器の中央ではなくE線側にずれている。表板と裏板に挟まれる圧力によって立っているだけなので、衝撃を与えると倒れてしまうことがあり、注意が必要だ。

ヴァイオリンにとってどれだけ大切な部品であるかは、「魂柱」という、いささかものものしいネーミングからもうかがえる。スペイン語では「魂柱」のことを「Alma」と呼んでいるらしい。一般に「心」とか「魂」と解される用語がそのまま与えられているということから、かの地でも重要な部品とみなされていることがわかる。グスタフ・マーラーの妻「Alma」の名前はもちろんこうした由来を背負っていると思われる。

我が家の長女は、13年前の今日生まれて、父である私に「あるま」と名付けられた。彼女が愛用するヴァイオリンにも、もちろん「魂柱」が立っている。

2006年11月19日 (日)

スコルダトゥーラ

弦楽器の調弦法のひとつ。弦楽器の4本の弦の複数または一つを意図的に通常と違うピッチに調弦すること。大抵は作曲者の考えが反映する。

有名なところでは、モーツアルトの協奏交響曲変ホ長調K364だ。ヴァイオリンとヴィオラが独奏を受け持つが、このうちのヴィオラにスコルダトゥーラが指定されている。4本全ての弦を半音高く調弦して、半音低いニ長調の楽譜を弾くようになっている。半音高く調弦することで張力が増強され、響きに輝きが増すことが狙いだと思われる。運指が楽なことと、開放弦が使いまくれることも狙いの一つかもしれない。独奏ヴァイオリンはお構いなしで、独奏ヴィオラにだけこうした措置が施されているところがミソである。

現在市販の楽譜ではヴィオラも通常チューニングが前提になっているものが多い。当時と違って、弦の張力が格段に向上している現在これをやると、楽器を痛めはしないかと心配する向きに配慮したと思われる。

シューマンのピアノ四重奏曲変ホ長調第3楽章には、曲の途中でチェロのC線を1音下げるという指示がある。これも一種のスコルダトゥーラなのだろう。

バッハの無伴奏チェロ組曲の第5番ハ短調BWV1011にもスコルダトゥーラが採用されている。こちらは最高弦のA線だけが対象だ。A線を1音低いG音に調弦するよう指図がある。低い方からC-G-D-Gとなる。お気づきの通りG線が2本だ。楽譜もこれが前提で書かれている。我が家のCDでは、ヴィオラ版のミルトン・トーマスがこの調弦方法で演奏している。またペーター版のヴィオラの楽譜にはオリジナル調弦と、通常調弦の両方の楽譜が収められている。

最近せっかく無伴奏チェロ組曲ヴィオラ版に親しんでいるのだから、私もヴィオラのA線を1音下げてオリジナルの雰囲気を楽しんでみた。オリジナル調弦版を使っていつもの通りの要領で弾けばいい。しかししかし、ことはあまり単純ではない。D線でポジションを上がっていると不安が先に立って楽しめない。慣れるのに時間がかかる。慣れによって解消する性質の課題は棚上げとして、意外と厄介なのは、楽譜の景色が決定的に変わってしまうことだ。音符の並び方で、その瞬間や周辺の和音の成り立ちにおよその見当をつけているのだが、その見当が狂ってしまうのだ。重音やアルペジオの際の心構えに影響する。

申し遅れたが、ブラームスにはスコルダトゥーラは出現しない。

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フォト

ブラームスの辞書写真集

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    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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