トップ系とパート系
多くは楽曲の冒頭、楽譜列の最上段に存在し、全ての声部に有効な指示を「トップ系」と名づけた一方、各楽譜列に記載され、記された声部のみに有効な指示を「パート系」と呼んでいる。
ヴァイオリン協奏曲第一楽章を例にとると、「allegro non troppo」がトップ系で、ファゴット、ヴィオラ、チェロの「mp」がパート系である。
「なんだそんなことか」と思うかもしれないが、なかなかどうして奥深いものがある。トップ系はゴシック体で印刷される一方、「パート系」はイタリックの斜字体である。作曲家は書きなぐっただけだろうから、出版社がいちいちトップ系かパート系か判断していたことになる。もちろんブラームスがそれとわかるように書き分けていた存在も否定できない。
「トップ系」にしか現れない「allegro」のような単語があるかと思うと、「f」のようなダイナミクス語は「パート系」にしか出現しない。「staccato」のように典型的なパート系に見える単語が、まれにトップ系に現れて狼狽させてくれたりと、ちっとも退屈しない。
楽譜作成ソフトをいじると、この差は重要である。スコアを先に仕上げて、後からパート譜に行く場合、トップ系の指図は全てのパート譜に転写される一方、パート系は記された声部だけに印刷される。もちろん「トップ系」「パート系」は私の造語なので、マニュアルには書いていない。
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