ターゲット論
何事もマーケティングの時代である。商品を効率的に売るために、そしてそれを最大の利益に繋げるために、人々は知恵をしぼる。通例それらの努力は商品開発の前のコンセプトワークから開始される。「どのような層に買っていただくか」を想定するところが大抵のスタートラインとなる。
私の本のターゲットはどのような層だろうか?執筆中からずっとそれを考えていた。何しろオタクな内容である。無名の自費出版作品をお金を出してまで買ってくれるとしたどのような人たちだろう。
①「ブラームスを愛する人」
②「ブラームスを演奏する人」
③「ブラームスを聴く人」
こんな切り口を考えている。①②③の全てまたは一部。無論私なら買う。絶対に買う本である。店頭でみかけたら間違いなく買うだろう。
①は多分に建前だ。本当の狙いは②にある。ブラームス作品の楽譜に普段から親しんでいる人たちだ。ブラームスの楽譜に真剣に向き合っている人たちだ。普段ブラームスを演奏する過程で、彼の楽譜に接し、ぼんやりながら用語遣いの癖の存在に気付いている人々はいないだろうか?その人たちがわが意を得たりと膝を叩いて賛同してくれるような本でありたい。「そうそうそれって言えてるよね」と感じてくれるネタを供給したい。複数の楽譜間の用語遣いの異同に頭をなやませている人たちは、きっと少なからず存在する。演奏会を控えて譜読みをするうち演奏へのアプローチに迷いが生じてしまった人々の助けになれるかもしれない。意欲ある学生たちは有力な候補と思われる。学割でも設定しなくては!
③は条件付だ。この層は幅が広くて難しい。演奏家論の題材としてブラームスを位置づけている人たちからは歓迎されないだろう。この層の一部もターゲットには、なり得ようが①または②との複合が前提となるように思う。
結論は②なのだ。プロフェッショナルかアマチュアかは問わぬが、楽譜を音にする立場の人たちが最有力のターゲットだ。作曲家自らが楽譜上に記した文字情報は作品解釈上重要なツールとなる。校訂者の手による記入だったとしてもそれらの体系的な分析は解釈の助けとなるハズである。
えらそうに言っているが、本音はもっと単純だ。この本を買ってくれる人たちとブラームスを肴にビールが飲みたいということだ。これでぐっと解り易くなった。
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