22000行のエクセルデータ
執筆に先立つ前準備として、ブラームスの楽譜上の音楽用語を抜き出してエクセル入力した。文字になっている音楽記号全てが抜き出しの対象である。
作品番号、楽章、小節、パートごとに使用されている指示語を抜き出すのだ。これが言うとするとでは大違いの難儀な作業である。恣意的な抽出にならないよう、始める前に大体のルールを決めて取り組む。
「同一小節中の同一用語は、パートが割れても1箇所とカウントする。」が代表的なルールである。また「パート系とトップ系を出来るだけ厳密に区別してカウントする」点にも注意した。
この抽出作業の間は、ただただ抽出に徹し、どれだけ興味深い現象が現れようとも、その場では深入りせずに、コメント欄にマーキングをして先に進めた。全ての曲をできるだけ同じ感覚で処理するためである。とはいえブラームスの122を数える作品について抽出作業を終えるのに5ケ月半を要した。昨年夏の暑いさなかである。今振り返るとこの時期が一番辛かった。来る日も来る日も楽譜とにらめっこであった。
こうした作業が終わったとき、エクセル行数で22000行を数えるデータベースになっていた。エクセルのデータベース機能を使えばあらゆる切り口からの検索が可能である。私の著作には、このデータベースが役立ったことは言うまでも無い。
私が著作の中で提起したいくつかの試案は、もちろん統計的な根拠をその都度提示しているが、時々「直感で申し訳ないが」と断りながら提案しているケースがある。これは膨大なデータ入力をする過程で、指が感じた感覚を根拠にしているケースである。同じことを繰り返し入力するうちに、統計的な根拠は薄弱ながら、「なんだか多い」みたいな直感でたどり着いた試案があるということなのだ。エクセルデータを2万2千行も打っているとそういうこともあり得るかなと思っている。しかし音楽用語22000件などたいしたことは無い。ブラームスはそれに加えて音符まで書いていたのだから。
今度の著作は、初の自費出版ということもあって、我が子のようないとおしさを感じるのだが、その前提になっている22000件のデータベースもそれに劣らず宝物である。
分母もこれくらい大きいと、客観的に物を論ずるに足ると思っている。一定の比率でブラームス以外の人間の意思が混入していたとしてもである。
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