ダイナミクスレンジ
音強の幅。ブラームスが使用した最強のダイナミクスは3箇所存在する「fff」だ。このうち一つは「fff sempre」で、もう一つが「fff molto pesante」で、残る一つがプレーンの「fff」である。全て初期のピアノ作品に登場する。語感から考えて「fff molto pesante」が最強っぽい。ピアノソナタ第一番のどこかにあるので探してみて欲しい。
もちろんピアノ独奏曲の「fff」と大管弦楽曲の「ff」と物理的な音量はどちらが大きいかという類の野暮は聞きっこなしである。
一方の弱い側はどの作曲家も同じである。「休符」で表現される「無音」状態。独奏曲でないならばゲネラルパウゼが最小のダイナミクスである。ゲネラルパウゼを除いた場合の最小のダイナミクスは作曲家ごとに違う。ブラームスの場合は「ppp」を71箇所使っているが、このうち一箇所だけ存在する「ppp quisi niente」(pppほとんど無音で)が理論上ブラームス最弱音と思われる。他に「pp possibile」が一箇所存在する。これも相当弱いはずなのだが「ppp」が付与されないので、「ほとんど無音」にはかなわないと思われる。
三箇所、しかも初期ピアノ作品にしか存在しない「fff」に比べ「ppp」は、ジャンルや時期に関係なく分布する。このアンバランスは、ブラームスならではと思われる。さらに「ffff」や「pppp」が出現しないバランス感覚も心地よいものがある。
「ppp quasi niente」や「pp possibile」がどこにあるかは秘密である。
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