刊行一週間
7月11日が納本記念日だから今日で一週間になる。
2003年の冬に「ブラームスの辞書」の執筆を決意したとき、既に頭の中では完成形が固まっていた。ブラームスが楽譜に記した音楽用語だけを集め、それをアルファベット順に収録して、ビシバシとコメントまで加える。タイトルも「ブラームスの辞書」で決まっていた。その日から先週11日までの2年半の間、誰かに「ブラームスの辞書」のことを相談したことも少なくない。頭の中にイメージは出来ているのに、周囲の人間に対してなかなかキリリと伝えることが出来なかった。ド素人の自費出版なのだから、ある程度仕方の無い面でもあるが、悔しい思い出も少なくない。ましてや音楽の知識の少ない人に対しては、説明など無力だった。本当に限られた人だけが、私の趣旨を知って後押ししてくれた。
翻って、この一週間で事情は激変した。「ブラームスの辞書」現物が世の中に存在していることの意義は、とてつもなく大きい。現物を「ハイ」と指し示すことで百万語を費やす説明よりも、速く正確にコンセプトを伝えることが出来るようになった。音楽の知識が少ない人たちも、いったんは手にとってくれる。400ページの重みを感じてくれる。譜例さえ絞らねば1000ページの本にだってすることが出来たはずだ。文字の詰まり方を見れは、内容を不当に膨らませた400ページでないことは、誰にでもわかるはずだ。
一方音楽に造詣のある人たちには、同じ反応が現れた。「バカじゃなかろうか」である。著者の私に対して直接口にするしないは別なのだが、悪い意味はない。褒め言葉として受け取っている。「ここまでやるか?」に近いニュアンスである。この一週間で既に29冊が私の手元を離れた。まだ全部を読み終えた人は誰もいないが、もう少したつと、まとまった量を読んだ人から感想が舞い込むと思う。「よっぽど暇なんだね」の感想は正直者の証である。それらがこれからどう変わって行くか、あるいは変わらないのかに、興味がある。
本のできばえは、2年半前にイメージした通りかそれ以上である。だから、「ブラームスの辞書」が評価されるもされないも、全ては内容の反映であると看做すことが出来る。
日本人はブラームスの音楽が好きだと思う。よって少なからぬ数の「ブラームス関連本」が出版されている。私の本は今それらの中で、よちよち歩きを始めた。
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