本の題名
ブログを立ち上げてからかれこれ一ヶ月半。投稿した記事が本件で79を数える。私がはじめて出版する本の宣伝という性格が強いこのブログだが、実は今まで注意深く避けてきたことがある。本の題名に直接言及していないのだ。「私の本」「私の作品」「私の著作」という言い回しに専念し直接題名に言及することは無かった。今日納本を記念して題名に言及することにした。
本の名前は「ブラームスの辞書」である。
何のことはない。ブログの名前と同じなのだ。ブラームスが作品上に記した言葉だけに的を絞った音楽用語辞典、つまり「ブラームス専用の音楽事典」に相応しい名前だと思っている。
ナポレオンが「余の辞書に不可能は無い」と言ったという俗説が巷間に流布しているが、実際にどこかの博物館に「ナポレオンの辞書」が展示されているといいう話は聞かない。当たり前だ、彼の出世振りやいくさでの無敵ぶりを見て、「まるで彼に出来ないことはない」かのような破竹の勢いだったことの遠まわしな表現なのだ。と同時にナポレオンの価値観や、思考回路までをたくみに表現していると思われる。日本だったら「秀吉の辞書」であろうか。
私の本の題名「ブラームスの辞書」は、精神的にはこの「ナポレオンの辞書」を強く意識している。「ナポレオンの辞書」がナポレオンその人の行動原理や思考回路を示しているという前提に立つならば、「ブラームスの辞書」はブラームスの創作上の思考回路や癖をパラレルに反映する鏡という位置づけなのだ。ブラームスの作品上に現れた音楽用語の語彙や用法や頻度を分析することを通じて、ブラームスその人の創作上の思考回路を明らかにする狙いがあるのだ。ブラームスがその頭脳の中に持っていたに違いない創作上の諸基準を目に見える形にしたという意図が込められた題名なのである。
ド素人の自費出版本にしてはあまりに大袈裟な題名なのだが、私の意欲の反映として笑ってもらえれば幸いである。
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