prestoあれこれ
「ブラームスの辞書」と対面したその日に、じっと用語解説とは!
「presto」はテンポ系用語中の最高速度の座に君臨している。時代を経てもこの位置づけは変わらない。ブラームスもベートーヴェンもトップ系で約40箇所ずつ「presto」を使用している。この点で両者は一致しているが、使用の実態は雲泥の差だ。
「presto」の使用に当たっては、プレーンのプレストが大半を占めるベートーヴェンに対して我らがブラームスは「presto」に何らかの抑制語を付加する傾向がはっきりと見て取れる。たとえば「non troppo presto」の類だ。ベートーヴェンにおいては「presto」は開放感溢れる疾走の象徴であるのに対して、ブラームスにおいては抑制あるいは制御の対象である。
ブラームスの楽譜の上に「presto」の字面を見た場合、語感に騙されて走りすぎてはいけない。周囲の状況に照らして、行きがかり上「presto」の表札を掲げただけで、実テンポは数学的なプレストとはいえないケースも少なくない。
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