モデラート周辺
「moderato」は穏やかだ。具体的イメージが湧きにくくもある。単独で用いられる場合「中くらいの速さで」と解されるが、「中くらい」っていったいどのくらいだろう?人によって違うのは間違いない。
一方「allegro moderatro」のように何らかの形容詞に追随して用いられる場合「程よい」という意味の副詞的働きをする。ざっくり言えば主たる形容詞の意味を温和にするということだ。そう「抑制語」なのだ。「allegro」に付着すれば、現実問題としては「テンポダウン」が志向されよう。ブラームスでは「allegro」「andante」「allegretto」にしか付着しない。これら3つの用語が極端になることを戒めている。「non troppo」に近い。
それから「piu moderato」も無視できない。不思議なことに速めのテンポの曲にのみあらわれ、事実上テンポダウンとして機能している。「adagio」の楽曲中に現れてテンポアップを志すことはない。
もっとある。「molto moderato」だ。これはパラドックスだ。「抑制系」と「煽り系」の同居である。ブラームスは4箇所「molto moderato」を使っている。場所は秘密だけどね。
とどめは「moderato ma non troppo」だ。難解である。「moderato」の何が過剰になることを恐れているのだろう。元来過剰をそぎ落として「中くらいに」という意味ではなかったのか?2箇所あるから探して欲しい。
モデラートをなめてはいけない。
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