のだめの中のブラームス②
第七巻116ページ目。第四巻39ページ目に続いて「ブラームスなめてんじゃないっすよ」が出現する。「R☆Sオケ」の公演に向けたブラームス第一交響曲の練習が思うように進まない中、シュトレーゼマンのブラ1のビデオを千秋が見る場面にかぶって出てくる。
メンバーの気持ちがコンクールに傾いて思うに任せない中、苦悶する千秋を象徴しているというニュアンスだ。明らかに第四巻の39ページを踏まえた表現だ。千秋にはこれが苦い経験となっていることは、疑いが無い。シュトレーゼマンに横取りされたこともさることながら不覚にも準備の不備を指摘された場所なのだ。続く117ページには、第四巻の時には明らかにならなかったシュトレーゼマンの「お説教」の内容まで明らかになる。
「こことここのフレーズをつなぐ夢見るホルン」「6度の和音第一楽章のこだま」「ブラームスは交響曲という大きな物語の中で無駄な時間を使っていないんですよ」という具合にたたみかける。恐らくこの箇所は音楽の友社から出版されている「ブラームス4つの交響曲」(ウオルター・フリッシュ著、天崎浩二訳)の121ページから122ページにかけての部分が色濃く反映していると思われる。特に「無駄な時間を使っていない」云々の部分は122頁の2行目と瓜二つである。
117ページのバックに配された譜例は2つ。最初のものは第二楽章の冒頭である。夢見るホルンのつなぎのパッセージが見て取れる。角度が付いていて読み取りにくいが「gestopft」があるのでそれとわかる。もう一つは12小節目である。ブラームスの交響曲ではレアな「rf」(リンフォルツァンド)あるのですぐわかる。第一交響曲で「rf」は二箇所しか現れない。もう一箇所は同じく第二楽章の25小節目だ。
譜例は先の「ブラームス4つの交響曲」の121から122ページの記述に沿った形で選択されているとみて間違い無さそうだ。117ページに配されたシュトレーゼマンのお説教の4つの言葉も、ほぼこれをなぞっている。
その後の筋立て、特に第8巻において元ベルリンフィルのカイドゥーンを唸らせるほどの演奏を披露したという結果からみて、このあたりの苦労は十分に実を結んだと考えられる。
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