のだめの中のブラームス③
第11巻の65ページ目。パリ留学を果たしたのだめがコンセルヴァトワールでアナリーゼの授業を受けるシーンがある。
教官が「アナリーゼ」の授業内容を自ら説明している。「まずは曲を聴いて、曲の特徴から時代や作曲家を推定し、次に楽譜を見て和声などの分析をしてみましょう」と言っている。そしてその後に流れる曲がブラームスの第三交響曲第三楽章になっている。こんな有名な曲を使用しておいて「曲の特徴から時代や作曲家を推定するもへったくれもないものだ」などといったらのだめファンから袋叩きにあうのだろうか?さすがに学生たちは作曲者ブラームスと作曲年を断定し第三交響曲についての薀蓄をぶっている。引き続いて和声や主題法に話題が進んでいる。のだめは例によってチンプンカンプンでショックを受けるという構成だ。授業がフランス語でなかったとしても、のだめちゃんはさっぱりわからなかったんだと思います。
会話されている内容は、日本で売られているブラームスの読み物には普通に書いてあることばかりなので、コメントは差し控えるとして、私が驚いたのはこういう授業が実際の音楽大学のカリキュラムに存在するということだ。空前のクラシック漫画としてブレークしている「のだめ」の売りは緻密な構成にあることは否定できないから、こうした授業が実際に行われ、一定の基準を満たした学生に単位が付与されていることは間違いないのだろう。漫画ではフランスという設定だが、日本の音楽大学でもこうした授業があるのだろうか?もしあるとするならば、「ブラームスの辞書」は副読本にピッタリである。「ブラームスの辞書」はほとんどこうした薀蓄のためにのみ存在していると言っていい。こうした薀蓄をグループ討議するだけで成立する授業なら今すぐ私でも受講できそうである。ブラームス学などという講座があれば間違いなく一級の参考書となるだろう。ブラームスとそれ以外の作曲家の知識のバランスが悪過ぎるのが難点ではあるが、どこぞ私を講師として雇ってはくれまいか?
問題はアナリーゼと称するこれらの学問(とりあえずこう呼んでおく)が実際の演奏にどう反映させるかだ。アナリーゼそのものを単位取得の要件とはせずに、アナリーゼの結果得られる情報を、的確に演奏に反映させるノウハウを単位取得の要件にしてもらいたいものである。
それにしても、第三交響曲を聴いて薀蓄を披露する学生たちの表情からは、ブラームスへの愛情が感じられない。おそらくこの後に聴かされるブラームス以外の作曲家についても同様の薀蓄をサラサラと語るのだろう。特定の作曲家への傾倒はプロの演奏家には邪魔なのだろうか?
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