VOCE系のお話
「VOCE系」とは、音楽用語「sotto voce」「mezza voce」の総称だ。どちらも「p」または「pp」と共存し、「f」系とは共存しない。「p」「pp」とはまた次元の違う「弱さ」「静けさ」だと思われる。「ささやき」「つぶやき」「モノローグ」といった類の「人の出す声」に因んだニュアンスと解したい。
創作のごくごく初期においては、さほど使用されていないが、作品番号でいうと34、5番以降頻繁に出現するようになる。また初期には、「p」や「pp」のようなダイナミクス記号との併用ばかりが目立つが、パガニーニの主題による変奏曲あたりから「sotto voce」「mezza voce」の単独使用が始まる。この剥き出しの「VOCE系」ついには楽曲の冒頭への使用も始まる。作品61あたりから、この傾向は大きなうねりとなる。
中期と呼ばれる創作期の特徴として剥き出し「VOCE系」の頻発を上げることができる。「p-f」系のダイナミクスメータとは別の体系のものさしを会得したと捉えたい。慣れ親しんだ「p-f」系と異質の尺度で、ダイナミクスを指定することで、「p」側のニュアンスの幅をより豊かにする狙いがあると推測している。
最初の「VOCE系」はピアノソナタ第二番第一楽章16小節目の「pp mezza voce」で、最後に使用される「VOCE系」は4つの厳粛な歌op121-2の52小節目の「sotto voce」だと思われる。
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