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2005年10月 8日 (土)

秋川の奇跡

秋川きららホールに行った。「鮫島有美子ソプラノリサイタル」を聴くためだ。そしてピアノを担当するのは、鮫島有美子先生のご主人でもあり世界最高のアンサンブルピアニストであるヘルムート・ドイチュ先生である。

ドイチュ先生の著作を鮫島有美子先生が訳された本が出版されている。「伴奏の芸術-ドイツリートの魅力」という本だ。ブログ「ブラームスの辞書」でも6月24日にこの本に言及している。「ブラームスの辞書」の執筆のプランを暖めていた頃、「伴奏の芸術-ドイツリートの魅力」に出会って勇気付けられた。この出会いがなければ、「ブラームスの辞書」は完成しなかったかもしれないのだ。だからドイチュ先生は「ブラームスの辞書」の祖父にあたるとも言えるのだ。

「ブラームスの辞書」が完成する前から、完成の折には、是非ともドイチュ先生にさしあげたいと思っていた。普段ウイーン在住の方だから、演奏ツアーで日本を訪れる機会を待つのが現実的だ。まして鮫島先生の伴奏をなさるのであれば、著者と訳者の揃い踏みとなる。

本日、演奏会の終了後、楽屋にドイチュ先生を訪ねた。不安はあった。どこのウマの骨ともわからぬド素人の著書を受け取ってくれるのか?

終演後、着替えを終えて楽屋から出てきたところをお呼びたてして、事情を説明した。日常の日本語ならば理解出来るそうだが、この説明は辛そうだった。横におられた奥様に助けを求めると、奥様は、一瞬呆れたような驚いたような顔をして私を見た後、鮮やかなドイツ語で通訳。それを聞いたドイチュ先生の「凄い」という反応を一生忘れることはないだろう。「あなたは普段何してるひと?」と訊かれた。「普通のサラリーマンです」と答えると「ホント?」と。私が英語で「Do you like Brahms」とお聞きすると「Yes of couse」と即答だ。ニュアンスとしては「もちろん」ではなく「ったりめ~だろが」に近い。

 

奥様が熱心なファンに囲まれている間、少し離れたところで私の本をずーっと読んでいる様子が超嬉しい。日本語読めるのだろうか?音楽用語は共通語だけれど。奥様が横から「こういう本好きだから、今晩ずっと読んでるわよ」と口を挟む。「日本語読めますか?」と訊くと「少しなら」と。それでもなにやら興味深そうにパラパラとページをめくっている。そう完全に学者の表情になっていた。奥様も「これ何年かかりました?」とか「明日練習あるから、今晩読み過ぎちゃだめよ」とか会話に入って来られた。

「一冊差し上げるからお好きな曲は?」と訊くと瞬間的には決められない様子。私が4つの厳粛な歌の1番の節を口ずさむとOKのサイン。ドイチュさんには「opus121」を差し上げた。奥様は?とお尋ねすると「Mainacht」と即答だ。これ「五月の夜」op43-2だが、念のため冒頭の節を口ずさむとOKと言ってニヤリだ。奥様にはopus43を差し上げた。ご夫妻は、とても気さくなお人柄だった。最初の心配は全くの杞憂だった。受け取ってくれるどころか、喜んでくれた。「実るほど頭の低き稲穂かな」という言葉が浮かんだ。

調子に乗ってサインをねだった。先生のご著書「伴奏の芸術-ドイツリートの魅力」を持参したので、裏表紙を開けてペンを差し出すと、「どうもありがとう」と平仮名で書いて、サインと日付を入れてくれた。日付の下には奥様もサインをくれた。

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周りの人にシャッターお願いして一緒に写真にも納まってくれた。サッカーで言ったらジーコかプラティニかベッケンバウアーとツーショットで写真とったようなものですよ。おまけに何もお礼が出来ないからといって、たった今ステージで受け取った花束を私に持ってゆけと言って手渡してくれた。

こうして「ブラームスの辞書」は、生みの親ドイチュ先生と鮫島先生に無事手渡された。嘘だと思うならマイフォトを見てください。(きっぱり)

神様っているんだと思った。この日のお二人の演奏にも神様がいた。アンコール6曲のうち最後から2曲目の「花の街」を聴いたとき鳥肌が立った。背中に冷たいものが走った。「伴奏の芸術-ドイツリートの魅力」の著者がどんな演奏をするのか興味津々だったが、凄かった。自在の表現をする奥様の演奏に合わせて、ニュアンスが自由自在だ。間違いなく最低100通りは引き出しがあるに違いない。そんな雲の上の人が「凄い」と手にとってくれた。神様でないなら、きっとブラームスの導きに違いない。

今日はきっと眠れまい。これがどれだけ嬉しいかご理解いただけるだろうか?

 

 

 

 

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コメント

ありがとうございます。

中国に10日も行っていたので、すっかり昔話になってしまいました。

やっぱり、思い出すだけで鳥肌が立ちます。

良かったですね♪

この本なら、絶対に喜んで貰ってくれると思っていましたよ。
その通り、いえ、それ以上の驚嘆と感動だったことでしょう。

貴方の想いと執念(?)が実りましたね。
私達には神様以上の、ブラームスのお導きです。
本当におめでとうございました。

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