ジュピターごっこ
ブラームスの交響曲の第一楽章の調性を第一番から順に並べると「CDFE」になるというお話のことである。この音形がモーツアルトの交響曲第41番「ジュピター」の終楽章のフーガの主題になっていることは有名である。
ブラームスはこの音形が好きである。作品76-1の嬰へ短調のカプリチオの14小節目に出現してこの作品を貫くモチーフになっていることは特に名高い。音程関係が少し崩れていて「真性ジュピター」とは言いにくいが、この音形を意図的に使用していることは間違いのないところである。ささっと見ただけでも下記の作品に見つけることが出来る。(相当なこじつけも含んでいる)
- チェロソナタ第一番
- 第三交響曲第一楽章
- 第三交響曲第四楽章
- 弦楽四重奏曲第二番第四楽章
- ピアノ五重奏曲第四楽章
- ピアノ五重奏曲第一楽章
- ピアノ三重奏曲第一番第一楽章
- 弦楽六重奏曲第一番第四楽章
- ヴァイオリンソナタ第三番第二楽章
- ピアノ協奏曲第二番第四楽章
- ピアノ協奏曲第二番第二楽章
- 弦楽四重奏第二番第一楽章
- 歌曲op69-3
ブラームスがこの音形を好んでいたのかどうかは、定かではないどころか、単なる「よくある音形」なのかもしれない。
話は変わるが、シューマンの交響曲も「BCEsD」になっていて、ジュピター主題を変ロ長調で読んだ形になっている。正確な作曲順はこの通りでないのだが、誰かがこの順番にした疑いもある。シューマンの死後ブラームスが、「シューマン全集」の出版に尽力し、その過程でシューマン未亡人のクララと行き違いがあったと伝えられているが、ひょっとするとブラームスがこの順番に並べることを主張したために、クララと食い違ったのではあるまいな?
変ロ長調とハ長調の関係といえば、ブラームスの第一ピアノソナタ(ハ長調)冒頭がベートーヴェンのハンマークラヴィーアソナタ(変ロ長調)と似ていた。師と仰ぐシューマンやベートーヴェンより1音高く接しているのである。密かな自信の現われか、単なる偶然か、興味は尽きない。
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