カッコのさじ加減
発想記号にカッコを伴うケースが希にある。
- Andante (non troppo lento)シューマンの主題による変奏曲op9 189小節目
- Allegro non troppo(doppio movimento) バラードop10-2 23小節目
- Allegro (doppio movimento)ハンガリーの歌による変奏曲op21-2 116小節目
- Leggiero e vivace(ma non troppo)ヘンデルの主題による変奏曲op24 174小節目
- Andante(alla breve)男声合唱のための5つの歌op41-1 冒頭
- Agitato(allegretto non troppo)弦楽四重奏曲第三番op67第三楽章 冒頭
- Allegretto grazioso (quasi andantino)交響曲第二番op73第三楽章 冒頭
- Tempo I(ma tranquillo)悲劇的序曲op81 264小節目
- Allegretto grazioso (quasi andante)ヴァイオリンソナタ第二番op100第三楽章 冒頭
ざっと用例を挙げた。これ以外にもひょっとするとあるかもしれない。4はお騒がせだ。国内版にしか存在しない。ヘンレ版ではカッコ以下が跡形もない。国内版側の大きなお世話の可能性なしとしない。
仮にX(Y)とおいて話を進める。大抵の場合YがXの度合いをより細かく規定している形になっている。具体的にテンポを指定しているのが、2,3,6,7,9である。一方ニュアンスの追加に近いのが、1,4,5,8だ。
カッコが思考の一段落を示していそうなのが6番。ヴィオラを大活躍を予告するかのような「Agitato」を名刺代わりに示しておいて、カッコ内にそっと実テンポを示した周到さまで鑑賞の対象と思われる。
悲劇的序曲は「戻すのテンポだけで、ニュアンスはtranquilloに差しかえろ」の意味と解されよう。
面白いのは7番と9番。前段の「Allegretto grazioso」は共通しているのに、肝心なカッコ内が微妙に割れている。カッコ内に「quasi」を配するあたり、この二つ姉妹のように近似している。
いかようにも屁理屈はこねられるが、何故カッコがなければならないのという必然性が、2番3番を除くと、必ずしもあきらかではない。そして何よりもこのカッコがブラームスの意図なのかも、ほとんど謎である。
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