最上級のお作法
形容詞、または副詞の語尾に「-issimo」を付けて最上級を表す。「piano」や「forte」について「pianissimo」「fortisissimo」になることがその代表例である。ブラームスの楽譜では、「p」や「f」以外の形容詞にも最上級が現れている。
- marcatissimo
- legatissimo
- intimissimo
- dolcissimo
- staccatissimo
1番「marcatissimoと2番「legatissimo」は国内版の楽譜にしか現れない。少なくともヘンレ版に跡形もない。初期のピアノ作品の国内版の楽譜に出現する。これは非常に怪しい。
3番と5番はヘンレ版にもちゃんと載っているが一箇所に現れるだけである。「intimissimo」は作品10のバラードの中、「staccatissimo」はピアノソナタ第一番の中である。どこにあるかは秘密です。それから後期のピアノ作品の中にはトップ系で「intimissimo」が配置されたケースもある。
問題は4番の「dolcissimo」だ。17箇所に存在する。作品24の「ヘンデルの主題による変奏曲」以前のピアノ曲に集中していると思いきや、作品78のヴァイオリンソナタ第一番以降にもまた出現する。初期ではピアノ作品に集中しているが、作品78以降ではピアノだけでもない。現れ方にも注意が必要だ。中には楽曲中に「dolce」が一回も現れないのにポツリと「dolcossimo」だけが出現する例もある。
一般に「最も~で」の表現である最上級は、使いどころが難しい。その後の曲の展開の制約になりかねないからだ。ブラームスは実質上「dolcissimo」だけを注意深く使用していると推定できる。どんなに権威ある出版社でも「marcatissimo」や「legatissimo」を安易に楽譜上に躍らせてはいけないと思う。ブラームスの用語使用実態に照らせば、それらにどれほどの重大性があるかすぐにわかるハズである。大した考えもなく感情に流されて最上級を乱発してはなるまい。
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