価格設定
「ブラームスの辞書」A5判、上製本、400ページ、カヴァー付き、およそ850g。総見出し数1167。・・・・・これで本体税ヌキ価格が4300円。
初めての自費出版本の刊行にあたり少々時間をかけたのが価格の設定である。一般に書籍の価格決定には、以下のような諸要素が関係する。
- 【コスト堆積】物としての本を作り上げるコスト。さらに目的に照らして適正なマージンがそこに上乗せされる。
- 【値ごろ感】A5判、上製本、400ページ、カヴァー付きの本ならば大体これくらいという相場感覚から大きく逸脱しない価格であること。
- 【内容との相関】書物に書いてある内容のお役立ち度。貴重度。著者の知名度。等に照らして大きくバランスをはずさない価格。
- 【購買力】買う側の立場に立った値ごろ感。主たる購買者層の小遣いで買える範囲を超えていないこと。
- 【自分なら買うか?】ふらりと訪れた書店で見かけた場合、自分ならいくらまで出すか?
上記5点を考慮し、出版社とも相談して決定した。1番は、小部数の自費出版の場合コストは割高なのであまり参考にはならない。コストを出版部数で割り返しただけでは、ベラボウな値がでてしまう。「ブラームスの辞書」の場合、122の作品の楽譜の調達費用や、パソコンなどの調達コストも加えたら大変なことになる。ましてや私の手間賃までいれたら、計算をする気にもならない。かかった費用を本を売って回収しようなどとは、考えてはいけないのが自費出版である。
2番は、とても大切。A5判、上製本、400ページ、カヴァー付きの本を一般の書店で手にとって確かめた。実際に4300円という価格は高めである。世間様の相場感覚より高めの設定にするんだという覚悟のための調査であった。
3番は、自負とうぬぼれの境界線付近のお話。「ブラームスの辞書」がどれほどの価値なのかは、今でも不安ですので、価格決定の際に過大には評価できない。興味の無い人から見れば100円でも買わないだろう。
4番はとっても重要。書店に置かずにネット販売を最初から考えていたので、振込み手数料を購入希望者に負担させて5000円以内で収まるということを気にした。4300円はそのことを色濃く反映している。この本を欲しいと思う人が出してくれるに違いないギリギリの高値を想定したつもりである。高くていいのだ。お高く止まった販売要項を見てもこの本ならと仕方ないと思ってくれる人たちに買われたいという思いがこもっている。
5番が実はポイント。「オレなら1万円でも買う」と今でも思っている。この感覚から見れば4300円というのは半値以下である。ブラームスを愛する人々になら必ずわかってもらえるハズという思い込みがある。でなければ1年もかけて本など書いたりはしないだろう。ブラームスへの想いが頭の中で飽和し、何かの形で残さねばならないというのは、筆者である私の都合だ。形に残っただけでもありがたいのに、その上運良く売れるなら半値以下もいたし方あるまい。
ということを順不同で考えながら決まったのが4300円なのである。「高い!」と評価されれば「売れない」という洗礼を受けるが、実はタチの悪いことに「売れない」がペナルティーになっていない。「売れない」はハナっから想定のうちの自費出版である。
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