Capriccioの位置づけ
「Capriccio」は一般には「奇想曲」と訳されている。ブラームスのピアノ小品にこのタイトルを持ったものが見られる。「Intermezzo」(間奏曲)と対になる概念と捉えられているようだ。いわく「しっとり系のインテルメッツォ」に「お転婆系のカプリチオ」という塩梅である。「ブラームスの辞書」でもそうした位置づけを意識した記述をしている。「IntermezzoのMarcato不在」と「Capriccioのdolce不在」がその代表である。
しかしながら「Intermezzo」と「Capriccio」出現の頻度がバランスを欠いている。「Intermezzo」は作品5のピアノソナタ第三番第四楽章に初出現し、作品10-3にも現れている。作品25のピアノ四重奏曲第一番の第二楽章にも存在し初期においても独自の境地を見せている。初期には「Capriccio」は見当たらない。
中期になると作品76の8作は、「Capriccio」と「Intermezzo」が仲良く4作ずつに割れている。後期の一連の小品群のトップを飾るop116では7曲中3曲が「Capriccio」で、残る4曲が「Intermezzo」になっている。実はこの3曲をもって「Capriccio」は姿を消す。
作品番号でいうと117、118,119には「Capriccio」は出現しないのだ。全て「Intermezzo」のop117はともかく、118と119には「Capriccio」が存在しても良さそうである。op118-1の「Intermezzo」は曲想から見ると「Capriccio」でもおかしくはない。「Intermezzo」としては異例の「f」で曲が開始されるなど謎も多い。op119-3の「Intermezzo」やop119-4の「Rhapsodie」も長調であるというハンデはあるものの「Capriccio」で文句も出ないだろう。創作の最末期において「Capriccio」の出現にブレーキがかかる印象である。
結果として「Intermezzo」22曲に対して「Capriccio」は7曲を数えるばかりである。
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