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2006年1月 3日 (火)

ベルリンサーカスのギリシャ公演

年末年始用にDVDを買い入れた。予定通りそれらをダラダラと見ながら過ごす正月である。

その中に、ラトル指揮ベルリンフィルがアテネで行ったヨーロッパコンサートのライヴがあった。ブラームスのピアノ協奏曲第一番とピアノ四重奏曲第一番の管弦楽版だ。前者のピアノ独奏はバレンボイム。後者はシェーンベルグ編曲だ。

驚いたのは後者。シェーンベルグの編曲は、賛否好悪あるんだと思うから言及しない。今更の感じもするが書かずにはいられない。「オケがうまい」のだ。「何じゃ」というくらいうまい。フィーナーレのプレストなんかオリジナルの四重奏曲で弾いても大変なのに、オケが弾いて「一糸乱れぬ」感じが伝わるのだから尋常ではない。オリジナルではピアノに割り当てられた役割を大抵は木管、主にフルートとクラとオーボエが分担するのだが、これらが皆激ウマ。「管弦楽のための協奏曲」状態だ。弦だって上手なんだが木管の名人芸が凄い。これがライヴだというのだから恐れ入る。生で聴いている観客が羨ましい。

第二楽章のトリオ。主部より少しテンポが上がった中での、繊細な旋律の受け渡し。押し引きのメリハリなどなど、室内楽の醍醐味はそのままに響き厚みだけを管弦楽に載せ代えて見せてくれる。これなんかはシェーンベルグの意図通りなのだろうが、実際にやって見せてくれるところが凄いのだと思う。ブラームスの交響曲では、第二第三の中間楽章では、こうまで華麗な響きはお目にかかれないが、批判するのは的外れかもしれない。

第三楽章の始まりはオケを写さず風景を追いかけるカメラワークがツボを捕らえている。ブラームス屈指の名旋律だ。これもブラームスとしてはあり得ぬくらいの華麗さだが、木管大好きというブラームスの特質だけは見失っていない。オリジナルで大活躍のヴィオラが目立たぬくらいはガマンせねばなるまい。この楽章のトリオでは主役は打楽器と金管楽器だ。ブラームスの管弦楽では忍従を強いられる立場の楽器に光をあてている。それにしても再現部のオーボエにはオーラが充満していた。

オリジナルのピアノ四重奏曲がとても好きなので、編成を無闇に大きくし過ぎだと内心は思っているのだが、「木管楽器のための合奏協奏曲」か「サーカス」だと思えば腹も立たない。どのみちシェーンベルグはシェーンベルグであってブラームスでは有り得ないのだ。シェーンベルグに対して「ブラームスではない」といって批判するのは多分的外れなのだろう。

このDVDを聴いて解ったような気がしてきたことがもう一つ。ひょっとしてシェーンベルグってブラームスが大好きだったのではないかとうことだ。結果としての編曲の出来には賛否が割れてしまうが、「ブラームスが大好き」という点疑いはないのかもしれない。好きでなかったらとてもやれない仕事だと思う。

こうなると他の室内楽も2、3曲編曲して欲しかった。

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