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2006年1月17日 (火)

心配していただいたこと①

「ブラームスの辞書」の執筆を始める前、相談を持ちかけた知人の反応については、以前にも言及した。その中で一番心配していただいたのは、「楽譜の版」の問題だった。

まずブラームスには本人による最終決定稿が存在しない。遺品の中から初版発行の際に出版社に渡された草稿が発見されている場合でも、肝心な初版には本人の手によって訂正が施されているケースもあるからだ。権威あるという点では「ウイーン楽友協会」発行のブラームス全集が一応の頂点と思われるし、マッコークルの作品目録も信頼できる。

「全ての作品についてブラームス本人の意思が正しく反映した楽譜を手許に揃えてデータベースを作れない限り『ブラームスの辞書』に意味はない」というのが、心配の根幹であった。

私の立場は「おっしゃる通り」「返す言葉もありません」というものだった。ただ一点「意味は無い」という断言にのみ違和感を感じていた。我が家に取り揃えた楽譜にブラームスの意思が正しく反映しているかどうかについてはもちろん「ノー」だ。だからといって「意味が無い」というのはいささか短絡的だと思っていた。

よしんば、我が家の楽譜が校訂者の手垢にまみれた楽譜だったとしたら、どうなるのか?簡単である。「ブラームスではなくて校訂者の癖に辿りつくことが出来る」ということなのだ。「校訂者の癖」がわかるということはそれはそれで意味がある。ブラームスの楽譜から校訂者の手垢をそぎ落とすためのツールになる可能性があるからだ。

それから私を支えてくれたのは、ご心配いただいた人たちが一度もブラームスの楽譜を基にしたデータベースを作成した経験がないままおっしゃっていたという事実である。経験はないまま長年のブラームス体験から直感された心配だったということなのだ。マッコークルの浩瀚な著作も譜例の掲載は作品の冒頭部分に限られており、「全作品全小節」の総舐めにはなっていない点、付け入るスキがあると感じられた。もちろんヘルムート・ドイチュ先生の「伴奏の藝術-ドイツリートの魅力」も力強い後押しだった。

トロイの遺跡を発見したハインリッヒ・シュリーマンは定説がこぞって虚偽とみなしていたホメロスの叙事詩を信用しヒッサリクの丘を掘った。私もブラームスの楽譜になら喜んで騙されたいと願って執筆を決意した。

執筆を始めて間もなく、「木馬が出てきた」のである。不特定多数の校訂者の存在を前提としては明らかに不合理な用語使用の実態がいくつも発掘された。校訂者たちが、横の連絡を取っていたと考えるよりもブラームス本人の意思の反映と考えたほうが合理的な現象はけして少なくない。一方で、「ブラームスの意図の反映としては無理がある」という事例も数多く見つかった。

ご心配いただいた点は、ごもっともながら、致命的でもないというのが、今も変わらぬ私の考えである。

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