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2006年1月25日 (水)

休符の表情

「休符」という言葉がよくないのかもしれない。特に「休」の文字がいけない。音楽の断絶の意味に受け取られかねない。「音楽の流れだけは断固切れてはいけない場面だが、音だけは出すな」の意味である場合がほとんどなのだが、この「休」の字面につられて「やれやれ、どっこいしょ」になってしまうことも少なくない。

4分音符にしろ、8分音符にしろ、音価に関係なく、休みではない側には、さまざまな用語や記号によって、あの手この手でニュアンスを付加しようと試みられるのに対して、休符の側は種類が少ないように思える。スラーとフェルマータが時折休符にまで関与する程度ではないだろうか?

ブラームスの作品を実際に演奏してみると、休符のイメージを豊かに持っていたほうが様になるケースが多い。

たとえば、第一交響曲の第四楽章257小節目の1拍目のヴィオラ以下の弦楽器に現れる四分休符は、腹に逸物据えておきたいところだ。四分休符にテヌートあたりが付与されていたもバチは当たらないと思われる。ブラームス独特の角ばった休みだ。続く7つの四分音符にはアクセントが付されているので、休符の側にも踏ん張りが要ると思われる。この休符が休み足りないと様にならない。ふんばりは必要だが、やれやれとばかりに寛いでしまう奴はイエローカード相当である。流れは切ってはならぬが、飛び込むのも厳禁である。

逆に休符にスタッカートを付けたい場面もある。第二交響曲第四楽章冒頭小節の2拍目頭の8分休符だ。休符を「休み」と思っては絶対にいけない箇所だと思う。あるいはヴァイオリンソナタ第一番の第三楽章冒頭のアウフタクトの中、四分音符と八分音符に挟まれた、八分休符もこれに似ている。「休」の字面は決定的に邪魔である。

ド下手のアマチュアにとってありがたいことに、休符には音程が無い。何のかんの理屈をこねても、実質的には、「音を出さぬ時間の長さ」と「タイミング」しか手段が無いという制約は、音符より数段表現が難しい。しかし同時に奥も深いと思われる。休符にテヌートやスタッカートはおろか、スフォルツァンドだってつけてやりたいこともある。場合によってはヴィブラートだってかけてやりたいのだ。

たまには休符の側から音楽を見るのも面白そうだ。

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