カデンツァ・コレクション
昨日CDショップを覗いていて嬉しい買い物をした。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲第一楽章のための古今のカデンツァを集めたCDだ。全部で16種類が収録されている。もちろん輸入CDだ。英国製なので解説が英語なのも嬉しい。英語力には全く自信が無いが、ドイツ語やフランス語よりは数段望みがある。
このCD第一楽章が3トラックに分かれている。カデンツァ前とカデンツァと、カデンツァ後だ。だから、演奏順序をコントロールすることで16通りのカデンツァを持った第一楽章を楽しめるということになる。意欲的な企画だ。まさにipodのためにあるようなCDである。
16種類の作者は以下の通り。
- ヨーゼフ・ヨアヒム1831 ご存知初演者だ。
- エドムンド・ジンガー1831 ハンガリーの人らしい。
- フーゴー・ヘールマン1844
- レオポルド・アウアー1845
- ウジェーヌ・イザイ1858
- フランツ・オンドリチェック1859
- フランツ・クナイセル1865
- フルッチオ・ブゾーニ1866 ヴァイオリイニストではない。オケのアシスト付き。
- アンリ・マルトー1874
- フリッツ・クライスラー1875
- ドナルド・トーヴィ1875 ヴァイオリニストではない。
- ヤン・クーベリック1880
- アドルフ・ブッシュ1891
- ヤッシャ・ハイフェッツ1901
- ナタン・ミルシュタイン1903
- ルッジェーロ・リッチ1918 このCDの演奏者。もちろん唯一の生き残り。
13人目のブッシュまでがブラームス生存中の生まれだ。見ての通り最近のヴァイオリニストはちっとも書いていない。自作はパッタリと途絶えている。判で押したようにヨアヒムばかりで面白みに欠ける。クレーメルがレーガーを弾いているのが目立つ程度だ。「カデンツァはヴァイオリニストが書くものだ」という西洋音楽の伝統が失われてきているということなのだろうか?演奏と作曲の分業が進んだということなのだろうか?
ここに載っていないカデンツァではジョルジョ・エネスコをこれまたクレーメルが弾いていたように思う。
このメンバーは、はっきり申し上げて華麗である。当然サラサーテは書いていないが、このメンバーだけでもヴァイオリン演奏史を語ることさえ可能と思われる。古今の大ヴァイオリニストにこぞってカデンツァを書かせるだけの何かがあるということなのだろう。作者の国籍もほぼヨーロッパ各国に散らばっているし作者はヴァイオリニストにとどまらない。ヨアヒムによる初演後、急速にヨーロッパ中に広まったということを裏付けていよう。何のかんの言ってみんなブラームスが好きなんだと思う。
当然ipodの中の「私家版ブラームス全集」に取り込んだ。
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