聴こえて欲しい度
複数の声部が同時に進行する楽曲において、好ましいバランスを実現するために存在する声部優先順位のことを「ブラームスの辞書」では「聴こえて欲しい度」と表現していることがある。一般に「旋律>伴奏」「独奏楽器>伴奏楽器」であるほか、ブラームスにおいてはベースラインが優先される傾向がある。
楽譜上にあるダイナミクス表示が「聴こえて欲しい度」を指し示していることが多い。伴奏声部のダイナミクスを旋律声部よりも抑えたものにしている例は大変多い他、「ブラームスの辞書」でいうところの「主旋律マーカー」「伴奏マーカー」「ベースラインマーカー」の諸機能を持った用語を、意図的に散りばめるのがブラームス風である。
ワルツop39は四手用である。これをブラームス本人が独奏用に編曲している。使える腕の数が2本減るのだから、全ての声部を保存するわけには行かない。このときどの声部が残り、どの声部が削られるのかの選択もまた興味深い。「聴こえて欲しい度」の裏返しである確率が高いからだ。
特に管弦楽曲のように多種多様な楽器が、これまた3つ以上の声部を形成するような場合、おのおのの奏者が、自らの担当する楽器の優先順位を認識しておくことは、有意義と思われる。
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