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2006年4月30日 (日)

リーズルの思い出

「p molto espressivo e dolce」という用語が生涯で一回使われている。

一昨日の記事と比較していただきたい。「molto dolce ed espressivo」が生涯で二回使用されているという記事だった。もはや日本語訳を律儀に記述するのは野暮の領域だ。ましてや「molto dolce ed espressivo」との比較論を延々と論じるなぞもってのほかだ。「空気を読む」としか言えない。

「molto dolce ed espressivo」がピアノ協奏曲第一番の緩徐楽章とあまりメジャーでない歌曲の冒頭に配置されていたことは一昨日述べたとおりだ。実を言うと本日話題の「p molto espressivo e dolce」もまた歌曲のピアノ伴奏冒頭に一回だけ出現する。作品32-9だ。この歌曲の原題「Wie bist du meine konigin」となっているが、日本語訳が定着していない。「いかにおわすか我が女王」「わが妃よ、そなたは何と」など翻訳者の苦労ばかりが透けて見える。近いうちに意訳委員会を開催せねばなるまい。

ブラームスの伝記には必ず出現する女性のランキングを作ると第一位のロベルト・シューマン夫人のクララは順当として、第二位をアガーテ・フォン・ジーボルトと争いそうな候補にエリザベート・フォン・ヘルツォーゲンベルグがいる。ブラームスより16歳年下だ。ブラームスに弟子入りしたが、あまりの美貌と才能に恐れをなしたブラームスが他の先生に押し付けてしまったというエピソードで名高い。愛称はリーズルである。

実はこの作品32-9は、彼女リーズルことエリザベート・フォン・ヘルツォーゲンベルグを想って作曲されたものだという。それにしてもピッタリの詩をよく見つけてきたものだ。大切な小鳥を両掌でそっと受け取るかのような絶妙なニュアンスを冒頭の「p molto espressivo e dolce」にこめたものと推察できる。4節目で「そなたの腕の中で息絶えることを許し給え」と歌っているが、彼女はブラームスより早くこの世を去る。

訃報を聞いたブラームスが彼女の思い出のために作った歌もまた残されている。作品121「四つの厳粛な歌」の最後を飾る第四曲がそれだという。他の3曲より実は作曲時期が早いことがその根拠とされるが、土壇場92小節目からの7拍間の旋律が、作品32-9のこれまた土壇場77小節目からの7拍間の旋律とピタリと一致する。

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