我が恋はみどり
クララ&ロベルトのシューマン夫妻の末っ子フェリックス・シューマンの詩に付曲された作品63-5の歌曲のタイトル「我が恋はみどり」である。
シューマン夫妻の子供たちは7人。マリエ、エリゼ、ユーリエ、オイゲーニエが女の子。フェルデナンド、ルドヴィッヒ、フェリックスが男の子だ。ブラームスにアルトラプソディを書かせたユーリエが30歳で没してしまった以外の女の子はみな長生きしたのだが、男の子たちはあまり元気ではなかった。
フェリックスには詩の才能があった。名高いのは作品63-5「我が恋はみどり」だが、他に作品63-6「にわとこの木のあたりで」と作品86-5「沈潜」の合計三篇がブラームスによって付曲されている。詩の才能があるといっても、ドイツ歌曲のマエストロたちが曲を奉った巨匠たちの間に入ってしまうと、いささか分が悪い。もしフェリックスがシューマン夫妻の息子でなかったら、ブラームスの目に止まったかどうか。
本日話題の「我が恋は緑」は19歳のフェリックスにブラームスが贈ったものだ。この5年後に結核でこの世を去るフェリックスの名は、ブラームスが曲を奉ったことで永遠に記憶されることになる。若々しさの残る、ややぎこちない詩に付与されたブラームスの曲は、短いながらキリリとしたみずみずしさに溢れている。詩の未成熟さすら魅力にすりかえてみせる。クララの日記によれば、それは1873年のクリスマスだ。クララ自身の奏するピアノに合わせて歌のパートを弾いたのは当代最高のヴァイオリニスト・ヨアヒムだったという。
今日はみどりの日である。
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