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2006年4月 4日 (火)

ヘミオリスト

ブラームスのこと。個人的にはブラームスを史上最高の「ヘミオラの使い手」と思っている。思い込みが激しいとの批判は覚悟の上での話だ。「ブラームスの辞書」のようなオタクな本を出版してしまった私ではあるが、さすがにブラームスの使用したヘミオラの全てをリストアップはしていない。ましてや他の作曲家についてヘミオラの使用頻度を捉えている訳ででもない。それでいてなお「史上最高」と称したいというわけだ。

ヘミオラ。語源はどうやらギリシャ語あるいはラテン語だそうだ。「1.5」とか「3対2」とかいう意味のようだ。転じて「比例配分」の意味。ブラームスの使用実態から見るとこの「比例配分」という語感がピッタリとはまり込む。

ブラームスが仕掛けるヘミオラをいくつかに分類してみると以下の3つがよく用いられていると思われる。

  1. 「6/8拍子と3/4拍子」の間で起きる。両者に共通する「8分音符6個」という切り口を軸足にして自在にピポットして見せる。数字の裏付けはないが、このパターンが一番多いような気がする。作品76-5のカプリチオは全曲この感覚で貫かれている。作品119-3も気持ちがいい。
  2. 「3/4拍子と3/2拍子」の間で起きる。「4分音符6個」という切り口がピポットフットだ。たとえばヴァイオリン協奏曲第一楽章や弦楽四重奏曲第二番第四楽章で見られる。これも1型と同様使用頻度は高い。
  3. 「6/4拍子と3/2拍子」の間で起きる。2型と同様「4分音符6個」という切り口だ。とゆうよりブラームスが6/4拍子を採用するのはヘミオラがやりたいためだと断言したいくらいだ。第三交響曲第一楽章を筆頭とする6/4拍子が現れたら、まずヘミオラの存在を予想していい。

最近のお気に入りは、「永遠の愛」op43-1だ。この曲、三部に分かれている。「夜の描写」「男の弱音」「健気な女」とでも名付けうる構成だ。第二部の「男の弱音」までが3/4拍子だ。第三部で複縦線を境に6/8拍子と明記される。これだと単なる拍子の変更だけで面白くもなんともないのだが、第三部がまさにクライマックスを迎える113小節目のピアノパートが事実上3/4拍子にすり替わるのだ。この場所曲中で「f」が最初に記された場所でもあるのだが、声のパートは頑として6/8拍子で突っ張り続けているから、ピアノ側の3/4拍子との間でせめぎ合いが起きる。116小節目で一瞬ピアノが6/8拍子に戻るとき、声の側に軍配かと思わせておいて、次の117小節目で声が歌い切ると同時にピアノ側に再び力強い3/4が復帰する。エンディングまでの4小節間、ピアノは声の側が沈黙する中、3/4拍子を貫き続ける。記譜上の表示はあくまでも6/8拍子を押し通したままで、実質的には楽曲冒頭の3/4拍子が回帰するというわけだ。

このラスト9小節のせめぎあいが明瞭に聴こえてこない演奏だけは、願い下げである。

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コメント

<通りすがり様

おおお。またもやコメント嬉しい限りです。私の方はなんぼでもレスさせていただきます。

先に仕掛けに気付くというよりも、先に曲の美しさに魅せられて、隠し味のような仕掛けに後から気付くといった感じです。どんなに精巧な作曲技法も曲として美しくなければお断りでしょう。

いつもちらかっていますが、お待ちしています。

>「弾き手や聴き手を幻惑するフレージングはブラームスの得意技だと思います。それらが単なる「音楽的実験」や「アイデアの提示」にとどまっていないことが、これまた凄いところです。」

全くその通りですね。変拍子にしろモチーフの使い方にしろ、ブラームスの場合、曲想が自然に表出した結果としての作曲というよりは、やはり、熟考して作り上げた結果としてのものなのではないかと想像するのですが、それでも、それが、おっしゃられるように「単なるアイデアの提示」に終らず、曲の美しさという効果にきちんととつながっているからこそ価値があるのですね。
譜面と聞いた感じの落差が鑑賞対象というのも、これまた、全く同感です。
パパ様がこちらで挙げられた作品にはまだ知らないものもありますので、参考にさせていただいて鑑賞してみたいと思います。
レスをどうもありがとうございました。またしても長文になってしまいました。失礼いたしました。

<通りすがり様
いらっしゃいませ。
コメントありがとうございます。何度も読み返しましたが、全く同感です。

弾き手や聴き手を幻惑するフレージングはブラームスの得意技だと思います。それらが単なる「音楽的実験」や「アイデアの提示」にとどまっていないことが、これまた凄いところです。

聴いた感じと、楽譜のズレはしばしば起きますが、その落差までもが鑑賞の対象だと思っています。

通りすがりなどとおっしゃらずに、いつでもまたおいでください。

全くの通りすがりのブラームスファンです。こんばんは。
前々からブラームスの曲は、表面上はどこも拍子を変えていないのに、不思議なフレージングが多くて面白いと思っていたのですが、それを評論した書物などを目にしたことがなかったので(そもそも、あまり音楽評論を読まないので、当然なのですが)、偶然、このブログを目にして何となく嬉しさを感じています。
個人的には、あくまで変拍子であることを譜面上には書かない(拍子記号の書きかえ、書き戻しをしない)で、フレージングで処理するあたりに、何ともいえない「頑なさ」やちょっとした「ひねくれぶり」が現れているようで、そういうブラームスだから好きだなあと思っております。
ところで、ヘミオラというと、古典音楽で3拍子のニ小節を一つの大きな三拍子にするようなことを言うのは知っていましたが、ブラームスの独特なフレージングと「ヘミオラ」という語は自分の中では結びついていなかったので、こちらの記事を読んで、あ、そうかと思った次第です。
つらつらと埒のない長文、失礼しました。「辞書」読んでみたいと思います。最後になりましたがご活躍を祈っております。

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