イントロ
「前奏」の意味。狭い意味では歌曲の場合を指すと思われる。主旋律の登場をより円滑かつ効果的にするための音楽的な準備。多くの場合伴奏と呼ばれる声部が受け持つ。イントロが後から続く主部を聴き手に想起させる効果は低くない。これが昂じて、「イントロ当て」というお遊びがジャンルとして存在するに至った。
しかしながら、さりながらだ。ブラームスに限らず世の中の音楽作品には、このイントロを介在させずにいきなり旋律で始まるものも多数存在する。ブラームスの独唱歌曲204曲についてイントロの有無を調査した。イントロありは155曲76%を数えた。この場合のカウントのルールはピアノパートが、声のパートよりも先行して立ち上がるものを全部だ。
実際には、ビートルズの「She loves you」のように一瞬だけ伴奏が先行するものの、ヴォーカルがすぐにかぶさってくるケースもある。作品105-1「調べのように」が代表格である。これでは歌の導入をじっくり準備しているとはいえず、冒頭に挙げたイントロの定義を十分に満たしているとは言い難い。こうした極端に短いイントロつまり「She loves you」型を「1小節未満のピアノ先行」と定義してイントロに含めずに集計するとイントロありは133曲65.2%になる。
おそらく、作品の冒頭にイントロを置くかどうかは、高度に芸術的な判断に属するものと思われる。導入準備無くいきなり歌を始めることもまた、ある種の効果を狙ったものと解し得る。
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