クララのテーマ
ロベルト・シューマンあるいはクララ・シューマンに詳しい人に確認しなければないらない。ブラームス関連の書物を読んでいておやっと思った。「A-Gis-Fis-E」という下降4音の繋がりで構成されたモチーフが、どうやらロベルト・シューマンによって「愛する妻クララのモチーフ」と位置付けられているらしい。実際、ロベルトとクララは夫婦なので自然なことなのだが、このテーマがブラームスの作品に偶然とは解し難い濃密さで現れるとなると、俄然興味が深まる。
晩年のピアノ小品集、とりわけ作品116の中にしばしば現れる。無論ブラームス本人は、自作に「クララの主題を盛り込んでおいたからね」等の仄めかしを公式には一切していない。この手の4音下降は始まりをAに限定しなければもっと実例を増す。
また作品118の6曲の調性を順に並べると下記のとおりになる。
Amoll→Adur→Gmoll→Fmoll→Fdur→Esmoll
「ラ→ソ→ファ→ミ」となっているという訳だ。
「A-Gis-Fis-E」を臨時記号無しで実現するには、ソとファにシャープが付きながら、ラにはシャープが付かないことが、条件だ。となるとシャープ3つのイ長調か同じく4つのホ長調の作品との相性がいいと思われる。音形が下降であるという難点に目をつぶれば、イ短調の旋律的短音階も候補のひとつとなるだろう。
このモチーフの存在がブラームスの「イ調好み」の傾向を裏付けているとも思われる。
本日はクララ・シューマンの命日だ。1896年5月20日没だから没後110年ということになる。今年250年の人に比べれば、出版業界やCD業界からは相対的に無視されているので、せめて私が今日から少しシューマンネタを発信したいと思う。
コメント