もう一つの「野ばら」
シューベルトに有名な歌曲がある。「Sah ein Knabe ein Roslein stehn」と始まる。同じ詩にウエルナーも作曲していて、中学校の音楽に時間に両方聴かされて比較させられたものだ。
実はブラームスにも「野ばら」がある。WoO31の「子供のためのドイツ民謡」の中の6番だ。Andante con moto、ヘ長調、4分の2拍子、わずか16小節の有節歌曲だ。なんとこの作品の歌詞は、シューベルト/ウエルナーの「野ばら」と全く同じなのだ。正確には、作曲者はブラームスではない。彼は民謡の採譜をして伴奏を施しただけという立場だ。
さて中学校で「野ばら」の作詞者はゲーテと教わった記憶がある。ゲーテの詩にシューベルトやウエルナーとは別の旋律をつけて歌う民謡が存在していたということなのだろうか?マッコークルによれば、テキストの出典はクレッチマー-ツッカルマリオの「ドイツ民謡集」となっている。ゲーテ作ではなかったのだろうか?シューベルト好きのブラームスのことだから、シューベルトの「野ばら」の存在も作詞者の真相も当然知っていただろう。ご本家に比べてあまりにも語られることが少ないブラームスの「野ばら」である。
小さな疑問はあるが、作品のかわいらしさには影響がない。
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