長短比率
ブラームス作品中の楽曲冒頭の調性を調べてエクセルに入力したことは6月6日の記事で紹介した。本日は長調短調に関するブラームスのお好みの話である。
既に6月6日に説明したルールに基づいて集計したところ、総数599曲に対して長調324曲、短調は275曲である。約54%が長調という結果が出た。前にも述べたようにこれは楽曲冒頭だけの数値だ。曲中においていかに重要な転調が行われていようともそれは、無視されているし、調の決定が困難な場合は通説に従っている。細かな点で修正の余地はあるが、話の大筋としては動かし難い。
さて、ベートーヴェンでも同じ集計をした。結果は総数505曲に対して、長調が397曲、短調が108曲と出た。長調が約79%を占める。どなたか生誕250周年記念でモーツアルトを集計してはくれまいか。直感では恐らくもっと長調の比率が高いと思われる。
ブラームスがもっとも頻度高く起用した長調はヘ長調だ。長調全体の15.4%を占める。短調ではイ短調の18.5%が最高だ。昨日話題にした「FAF」をきっちりと裏付ける結果となった。
本日はベートーヴェンネタに脱線をすることが多い。ベートーヴェンの長調1位は変ホ長調だ。となると短調は当然ハ短調が予想されるが、結果もやはりハ短調だ。ベートーヴェン全短調の28%を占める。ベートーヴェンの短調3曲に1曲はハ短調といっても大袈裟ではない。ブラームスの短調1位が18.5%に過ぎないのだから、3割に迫るハ短調への集中は驚異的である。長短あわせて考察すると♭3つの調号への偏愛が見てとれる。これってベートーヴェン好きの実感とあっていると思う。全505曲のうち実に19.4%が♭3つを背負っている。5曲に1曲は♭3つだ。
ブラームスの好みの調号は何か。ズバリ♭1個だ。長調でヘ長調が1位であり、短調でもニ短調は、2位なので順当だ。調号ランキングは以下「♭3個」と「調号なし」が続く。4位にやっとシャープ系が出る。「♯2個」10.5%だ。ベートーヴェンと共通するのだが、どちらかというとフラット系優勢である。
簡単な統計でもブラームスとベートーヴェンの間の調性起用上の癖の違いは明らかである。ブラームスをベートーヴェンの後継者という論調ばかりでは面白くあるまい。
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