「quasi」意訳委員会
意訳委員会第4弾である。昨年9月13日の記事でも言及した「quasi」について再論を試みたい。
まずブラームス作品における「quasi」の用例を以下に列挙する。まずはトップ系からだ。
- ピアノ協奏曲第一番第三楽章376小節目「quasi fantasia」
- 管弦楽のためのセレナーデ第二番第四楽章冒頭「quasi menuetto」
- チェロソナタ第一番第二楽章冒頭「Allegretto quasi menuetto」
- 弦楽四重奏曲第二番第三楽章冒頭「quasi menuetto,moderato」
- 交響曲第二番第三楽章冒頭「allegretto grazioso(quasi andantino)」
- ヴァイオリンソナタ第二番第三楽章冒頭「allegretto grazioso(quasi andante)」
- クラリネット五重奏曲第一楽章98小節目「quasi sostenuto」
次にパート系を列挙する。
- ピアノソナタ第二番第一楽章83小節目「quasi staccato」
- ピアノソナタ第三番第一楽章91小節目「quasi cello espressivo」
- ピアノソナタ第三番第五楽章78小節目「quasi pizzicato」
- ハンガリーの歌による変奏曲第七変奏57小節目「quasi pizzicato」
- パガニーニの主題による変奏曲第九変奏134小節目「quasi pizzicato」
- ホルン三重奏曲第三楽章43小節目「ppp quasi niente」
- 交響曲第二第一楽章118小節目「quasi ritenente」
- 交響曲第二第一楽章386小節目「quasi ritenente」
- ラプソディート短調op79-2 118小節目「quasi ritardando」
以上だ。全部で16回になる。一般の音楽用語辞典によれば「ほとんど~のように」という見解で問題がないように思われるが、日本語としての収まり面で今ひとつ納得できていない。上記16例のうち「ほとんど~で」の解釈でピッタリはまるのはパート系の6番「ppp quasi niente」の「ほとんど無音で」くらいではなかろうか?ヘンレに存在せず国内版にのみ存在するパート系の2番と3番の怪しさは別途論じるにしても、これらを「ほとんど~で」と解するのではあまりに能が無い。
そこで恒例の意訳提案だ。「quasi~」の訳語として「~っぽく」を提案したい。口語もいいとこの訳語だが、日本語としての座りは抜群である。ためしに上記16例を「~ぽく」と読み替えてみるといい。特に「メヌエットっぽく」「チェロっぽく」「ピチカートっぽく」などは絶品である。解釈に行き詰まった際の気分転換にどうぞ。
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