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2006年8月23日 (水)

オクターヴユニゾン

「ユニゾン」は、合唱または合奏において複数の声部が同じ旋律を担当することと解される。このうちオクターヴの違いがあるものを特にオクターヴユニゾンと呼んでいる。ブラームスの作品では、旋律がオクターブユニゾンで強調されるケースが少なくない。ピアノ三重奏曲第2番op87第1楽章冒頭は、ヴァイオリンとチェロが10小節間オクターヴユニゾンを聞かせてくれる。楽器の組み合わせは実に多様である。弦楽器に限定しても「第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン」「ヴァイオリンとチェロ」「チェロとコントラバス」「ヴァイオリンとヴィオラ」「ヴィオラとチェロ」など組み合わせは多彩である。

組み合わせは多彩と申し上げたが、オクターヴユニゾンにおいてどのパートが下になるかは大体決まっている。経験上最も少ないと思われるのは、第1ヴァイオリンが下を演奏するオクターヴユニゾンだ。特に第2ヴァイオリンが上で、そのオクターヴ下を第1ヴァイオリンが担当するケースは、ほぼ無いと思っていたら、例のシェーンベルグの編曲したピアノ四重奏曲第一番に「第1ヴァイオリンが第2ヴァイオリンの下」のオクターヴユニゾンが出てきた。

第3楽章「andante con moto」の冒頭である。変ホ長調の深々とした旋律が第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロのオクターブ三段重ねユニゾンで提示される。「B→Es」という4度跳躍のアウフタクトという典型的なブラームス節なのだが、第2ヴァイオリンがもっとも高い音で弾いている。第1ヴァイオリンはG線上第1ポジションの2の指のBから立ち上がっていて第2ヴァイオリンのオクターヴ下、チェロと同じ高さになっている。異例の出来事と言える。

これには実に説得力のあるカラクリがあった。最高音域を弾く第2ヴァイオリンには現われない表示が第1ヴァイオリン側にだけ置かれている。「sul G」だ。つまり「その旋律をずっとG線で弾き続けよ」という意味である。チェロと同じ音域の旋律をG線で弾かせて幅広さを表現しようとした意図は明白である。ヴァイオリンを弾く人はみな知っているが、ヴァイオリンの「sul G」には独特な底光りする光沢がある。第1ヴァイオリンに最高音域を担当させるより大事なことが、この旋律に含まれているということなのだ。最高音域を第2ヴァイオリンに譲ってでも「深み」を追い求めたと解したい。シェーンベルグなりのブラームス讃歌であるとさえ思えてくる。

シェーンベルグがこの第3楽章の冒頭旋律を愛していたことは確実と思われる。でなければこのような細工を施した意味の説明がつくまい。第3楽章のこの旋律は同四重奏曲中、いや全室内楽に広げても屈指の名所なのだ。絶対に腰砕けは困る場所なのだということを、全オーケストラに伝えるための「逆オクターヴユニゾン」なのである。

シェーンベルグ只者ではない。

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コメント

<麻由子様

恐れ入ります。

演奏する人はみんな知っていると思いますよ。ただ大騒ぎしないというだけかもしれません。

ブラームスのオクターヴユニゾン。
ピアノ演奏では、旋律を繋ぐのに苦労します@私 (;^_^A

「逆オクターヴユニゾン」を施したシェーンベルグも、
それを見逃さないアルトのパパさんも、恐るべしです☆

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