10度の響き
先週の土曜日のレッスンで、お姉ちゃんに新たな課題が出た。Cdurで3度、6度、オクターブの重音のスケールに取り組んできたのだが、いよいよ「10度の重音スケール」を見てくるように言われた。「本当は小学校のうちからやりたかったンだけど」「今から頑張ろうね」と励まされた。本人はクールだったが、実は私がすっかり舞い上がってしまった。
今日娘とはじめて10度の重音のスケールを練習をした。最初は音を一つ一つ鳴らしてから、確かめるように重音にする。G線上の3の指の「C」から開始する。実は最初の「C」は第3ポジションに上がって1の指で取る。そのまま4の指でD線をまさぐって、思い切ってE線開放弦の音をD線上で押えるのだ。言うが易しだ。放っておくと「C」になってしまうところだが、そこを長3度分伸ばすのだから、慣れぬうちは指が痛い。
案の定、痛い痛いとブーイングだ。「そもそも、こんな重音の曲なんか実際にある訳無いじゃん」とブツブツ言っている。良い質問だ。私の思うツボである。10度の重音が無いなどと言ってもらっては困るのだ。
ブラームスはヴァイオリン協奏曲の作曲にあたり親友にして当代最高のヴァイオリニストのヨアヒムに助言を求めた。演奏の難しい箇所についてヨアヒムが指摘した記録が残っている。その中で「私(ヨアヒム自身のこと)ほど手の大きくない奏者にとっては、演奏困難だと思う」という忠告があった。
- 第1楽章210小節目 A-Cis
- 第1楽章211小節目 A-Cis
- 第1楽章218小節目 Fis-A
- 第1楽章220小節目 H-D
- 第1楽章449小節目 Fis-Ais
- 第1楽章461小節目 H-D
- 第1楽章463小節目 E-G
ヨアヒムは上記7箇所を想定して発言したと思われる。全て第1楽章第2主題の途中に存在する。「3度6度10度大好き」のブラームス節炸裂の名所である。私がレッスンの時に一人で舞い上がってしまったのは、10度と聞いてこの7箇所を思い出したからだ。このうち1番と2番だけは、下のAの音に開放弦が使えるので、指の拡張は起きないが、4,6,7番は第1ポジションの可能性もあって、拡張はかなりの幅になる。
もちろん先生は「単なる指の拡張」「ハイポジションの指の間隔」あるいは「耳の訓練」くらいにしか思ってらっしゃらないかもしれないのだが、私にとってはブラームス街道の出発点にも思えるのだ。
« Traumerisch | トップページ | オクターヴユニゾン »
<空の風様
1歩ってゆーか、数ミリ近づいたって感覚です。
気持ちの持ちようです。
投稿: アルトのパパ | 2006年8月23日 (水) 06時14分
ブラームスのヴァイオリンは難しそうですね。(ピアノも手の大きさと拡張は勿論ですが)紅葉する森のような多彩な音色と彫刻のような彫りの深さがないとブラームスを表現できないですものね。ブラームスにまた一歩近づきましたね♪
投稿: 空の風 | 2006年8月22日 (火) 21時57分