てんぷら
夏休みで5連休だと言っても、部活動に塾にと子供らが忙しくてどこにも出かけない。その代わり母を連れててんぷらを食べに行くことにした。半年くらい前から気に入っている店だ。カウンター前に腰掛けて目の前で揚げてくれるてんぷらは美味である。
おいしいてんぷらは、しばしば「カラリと揚がった」と形容されることがある。料理評論家、油メーカーや粉メーカーのキャッチコピーには欠かせない言葉である。言われたほうも「カラリと揚がったてんぷら」のフレーズには滅法弱い。何となくおいしそうな気がしてきてしまうというものだ。
ところが、ところがである。この殺し文句の「カラリと揚がった」には未だに科学的定義が定まっていないようだ。出来上がったてんぷらの衣に含まれる水分なのか、油分なのか、はたまた粉の品質なのか、衣のレシピーなのか、素材の鮮度なのか決まっていないらしい。目の前で揚げてくれたものを熱いうちに食べるというシチュエーションが微妙に関わっていることさえあり得る。
ことほどさように「カラリと揚がる」の定義が決まっていないのに、消費者向けのキャッチーコピーに頻繁に使われているというのは笑える。
音楽業界も笑っている場合ではない。たとえばブラームスを表現する際の決まり文句「憂鬱」「屈折」「諦観」「分厚い」等の言葉も、定義を明らかにされないまま使われている。「純真」「悪魔的」「軽やか」「透明」といえば何となく今年生誕250周年のあの方を思い浮かべるが、必ずしも定義は明らかではない。
それにしても実際のところおいしいてんぷらには「カラリと揚がった」などという言葉は不要である。ひとつまみのお塩で十分だ。
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<空の風様
あっつあつのを、ハフハフしながらですねぇ。
仕上げはミニ天丼です。
投稿: アルトのパパ | 2006年8月11日 (金) 22時05分
天ぷらさえもブラームスに結びつけていて感動的です。
天ぷら。。食べたい。。
投稿: 空の風 | 2006年8月11日 (金) 21時53分